その闘いは。
いつから始まったのか。いつになれば終わるのか。何故争うのか。何故闘いの選択しかなかったのか。
誰にも、答えることなど出来ないのだ。彼らが「彼ら」である以上、その闘いは、宿命であるとも言える。
その種族は、誇り高い。
身に纏った漆色の類は、決して何物の侵入も許すことなどない。神から与えられた御身は、まるで闘うためだけに用意された傀儡のよう。
大岩を、強大な敵を、削るべき大地を、運び、なぎ払い、屠る。
その絶対的な力は、ただ生きるためだけに。生きるためだけに、時には守り、時には奪う。
寡黙に、ただ寡黙に。
泣き叫ぶこともせず、猛ることもせず、ただ静かに、剥き出しの矛をその身に、闘いの時を待つ。
その種族は、誇り高い。
武具は、必要としない。強靭な牙こそが、唯一であり、最強の武器なのだから。牙が武器である以上、獰猛なのだ。食むためではなく、闘うための牙を用意された生命は、すべからず獰猛である。
略奪し、略奪された歴史は、他でもない、闘いだけの歴史。略奪は、闘いから始まる。闘いは、略奪から始まる。
牙が求むは、食ではなく、敵。
そうして、生きてきた。そして今宵もまた、その牙は、敵を好む。
その闘いは。
いつから始まったのか。いつになれば終わるのか。何故争うのか。何故闘いの選択しかなかったのか。
誰にも、答えることなど出来ないのだ。彼らが「彼ら」である以上、その闘いは、宿命であるとも言える。
そうして今日もまた、彼らは相対する。まるで運命が、彼らを引き合わすように。
何を語る? 何を思う?
……何も。
何も、語りはしないのだ。何も、思いはしないのだ。
語るよりも、思うよりも、内なる鼓動が、それを互いに響き合わせる。
その言葉は、彼らのものなのか。それとも、彼らとは違う、運命の導き手なのか。
──どっちが強靭(つえ)ェんだよ?
神よ……嗚呼、神よ。
貴方は何故、彼らのような存在を創造りたもうたのか。何故彼らに、そのような残酷な性を与えてしまったのか。
生命として、前提を覆しているではないか。生命とは、生きねばならないのに。奪うことは、生きることへの理由でしかないはずなのに。
彼らは、奪う。
ただ互いを奪い、その先に、一体何が待つというのか?
……そして、我々は。
その歴史の片鱗を、確かに目の当たりにしている。
血を血で洗うような、悲しい争いの歴史を、確かに目の当たりにしているはずなのだ。チェスを楽しむように、残虐なエゴイズムを以って。
雄叫びもなく。
彼らは、取っ組み合った。これまでそうしてきたように、己が武器に、己のすべてを託して。
砂塵が俟った。草がざわめく。魂が響く。
運命が嘲笑った。死ぬまでやればいいと。何も得ることのない闘いに、すべてを賭けるがいいと。
活目せよ──!
背けることなど許されない。運命とは、貴方たちなのだ。
今宵は、どちらなのか。今宵は、どちらが勝利の美酒に酔うのか。
かぶとむし 対 くわがた ──!!