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夜明けの色

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Tokyo dawn on Flickr - Photo Sharing!
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2, 1

  

一人、まだ暗い夜に空を見上げた。風も音も無く、ただ冷たい空気が頬にひしひしと感じられる。星のまたたくのを確かめたあと、寒さに耐えかね懐のマフラーに顎を沈める。また歩き始める。

桜の連なった歩道は静かに海へ続く。木々は蕾を枝中に抱え、春の陽気を待ち続けている。腕時計の月は沈みかけている。西の空は街の灯に照らされて明るい。夜明けには海岸に間に合うだろうか。少し足を速める。

こういう暗くて静かな時間はしっかり自分を意識していないと、夜に飲み込まれてしまう。気を抜くと夜に魅せられてしまい、しばらく何も考えられなくなってしまうのだ。それはまるで水に浸っているような感じだ。泳いでいるような錯覚さえ感じる時もある。

早起きとも取れない午前4時の体は少々眠たさと気だるさで満たされている。コーヒーをブラックの一杯でも飲めばよかった。さすがにそこまで時間がなかった。そのせいで意識がはっきりせず夜に魅せられかけている。

交互に繰り出される靴と後方に流れて行くタイルを眺める。幼い頃には近かった地面が今ではその倍ほどの距離を感じる。規則正しい模様を順に踏んでいった。右、左。左、右。右、左。

かすかに潮騒が聞こえる。向こうにある丘を越えれば海が開けている。空が明るみを帯び始めている。夜明けが近い。焦燥感に駆られる。スキップなんかしてる暇じゃない。走れ。深緑の地面を走る。白い息が視界を遮る。頂上の向こうの空が赤い。駆け上る。

間に合ったようだ。まだ水平線に太陽はない。波打ち際まで距離があるけれど、ここからの方が眺めがいいだろう。目を閉じて大きく深呼吸する。冷たく気持ちの良い空気が体内に入り込む。目を開けた瞬間、眩しい光があった。朝日だ。

この上ない優雅な時。ダークブルーの空の色の移り変わりと共に、水平線の歪んだところから現れる太陽。この瞬間が好きだ。

空の高いところに赤く映えたカモメが飛んでいた。
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