部屋の外に出された。
よく見ると同じ鉄扉が通路に無数に存在し
ぞろぞろと生気の無い人間が出てきていた
(おいらのほかにもガチニートがいっぱいいるお。でもこんな状況じゃ全く笑えないお)
やる夫は先ほどの男に囁いた
「ここにいる奴らはみんな各地から集められたニートなのかお?」
「恐らくそうだな。だが今からいったい何が始まるのか…」
やる夫はその時ふと思いだしたように呟いた
「ところでお兄さんの名前はなんていうんだお?」
「俺か。俺の名は…」
その時怒号がそれを遮った
「そこッ!私語をするな!!」
「す、すいませんだお…」
(ほんとおっかないお…結局名前聞けなかったお…)
そうこうしているうちにどうやら向こう側の準備が整ったようだ
兵士のひとりが指示を出した。移動するらしい
立方体の中からぞろぞろと放出される人の列。いや、何の役も為さない木偶の束か
未だ誰も話す気配はない。勿論先ほどのやり取りを見ていたからだろう
やる夫は不安になった。
もしかしたら他の奴らは今から何が行われるのかを知っているんじゃないかと
しかしあのお兄さんは本当に何も知らなそうだった
それに周りは無表情すぎて何を考えているのかわからない
(まあしょうがないお。ここまで来たら全力で釣られてやるお!)
ここまで来ても、未だやる夫は能天気だった。無理も無い。
一般的な人間がこのような、殺伐とした、非日常が突然日常に降り注がれ
正常でいられる方が難しい。
いや寧ろ、自らを正当化し、正常であると誤認或いは暗示する方が簡単だ。
やる夫の周りにいる木偶たちも非現実的な、例えばゲームやアニメの中の
世界といったものを体感していると錯覚させているのだ。
つまり彼らにとって今は現実であって、現実ではない。
そう、夢を見ているのだと誰もが思っていた