幼いころの記憶編
~エピローグ~
僕が小学生のまだ低学年のこと、友達に中出君という気さくな奴がいました。僕は20歳になり成人式にいき、みんな懐かしい小学校時代の話で盛り上がりました。しかし、そこに中出君はいません。中出君は小学3年で転向して行ったので、みんなの話にも出てこなく、そのときは僕も思い出せなかった。そう、その夜夢に出でてくるまでは・・・
第1話 夢の世界
そこは広い空間であるのにあたりは何もなく、ひと一人としていない所であった。しばらく歩いていると人がいた。僕は走っていき話しかけた。最初は誰か分からなかったがすぐに分かった。中出君だ。彼の顔はどこか悲しげだった。そして彼はおもむろにかばんから何かを取り出した。そして僕に突きつけてきた。包丁だ。彼は僕を殺そうとしている。
うわーーー。
そこで目が覚めた。翌日テレビを見てると家の近くで昨夜殺人事件があったらしい。
犯人の名前は中出する蔵。僕は頭から血の気が引いた。
第2話 冬の殺人現場
僕は急いで現場に行った。そこには刑事が多く取り締まっていた。そして僕はその中に入って行き、一人の刑事に話しかけた。
「今回の事件はどのようなものなんだ。」
まだ、あどけなさが残るその刑事は僕に言った。
「はい、明らかに他殺で犯人は中出に間違いないでしょう。殺された被害者近藤ムチコは女性で、犯人の中出と恋人関係にあったと情報が入っています。ただ・・・」
「なんだ、なにかおかしい点でもあるのか?」
「はい、中出が包丁持ってるとこを捕まえられた時間と死亡推定時刻がどうも一致しないのです。どうやら一日ほどのずれがあるらしいのです。あと中出は容疑を否認しています。」
突如、後ろから別の刑事が現場に走ってきた。
「今新しい情報が入ってきました。どうやら殺された近藤は妊娠していたらしいです。しかしおかしなことに中出はつねに避妊していたらしいです。」
「そうか、ありがとう・・・」
僕はその現場から去って家に帰ることにした。
僕は泣いていた。あのもてなさそうな中出に彼女がいたことに・・・。
第3話 白か黒か
今日は中出のもとに行ってみた。明日がこの事件の裁判だ。
僕はその事件の裁判官をすることになっている。小学校時代の友達だからといって有利にことを進めることはない。しかし、わずかな可能性がある限りすくってやりたい。
警察にいき、中出にあった。
「ひさしぶりだな。」
「織田か・・・懐かしいものだな。久しぶりの再開なのにこんなみっともない姿見られちまって。」
「ほんとにお前がやったのか。おまえは蚊も殺さない、むしろ蚊に血をわけるほどの優男ではなかったじゃないか。」
「おれはやってねえ。むしろ彼女をころしたを犯人を見つけてこの手とこの手で・・・」
「そうか。そのことば信じたぞ。有罪というかむしろ無罪なんだな。」
「ああ、信じてくれ。おれはやってない。黒ではなくむしろ白だ。」
「そっか、それを聞いて安心した。それより聞きたいことがある。3年になって北海道に転向して行ったお前がいつからこの町に戻ってきてたんだ。」
「去年だ。彼女とは北海道で出会ってもう2年つきあってた。」
「で、なんでもどってきたんだ。」
「お前覚えてるかおれらが小学2年のとき、白血病で死んだ・・・」
「クリリンのことかー」
第4話 中出のターン
「クリリンこと栗田凛。
彼女の家は俺の家と隣で親の仲もよく、小さいころからよく遊んでいた。俺が小学一年のとき凛に大人になったら結婚しようねとプロポーズさえもした。そして小学2年の春、親が留守の間二人は結ばれた。
それから半年後彼女は俺に別れも言わず死んでいった。
そのときは病名も俺にははっきり聞かされておらず、そんな彼女を助けてやれなかった自分がいやになったんだ。
そこからしばらく俺には女はいらないとおもっていたよ。
そしてしばらくして俺は親の転勤で北海道に行くことになったんだ。
それを気に新しい人生をスタートさせたのさ。
俺は彼女を胸に思いとどめて新たな人生をまっとうし、そしてまた恋をし、その彼女を愛し精一杯生きた。
しかし転機は突然去年訪れた。
俺の仕事の関係でこの町に戻ってきたのさ。そして彼女といっしょにこの町へ来てこの町でくらそうとしたのさ。
しかしある日現れたんだ、凛が!正確に言うと凛の妹、蘭だった。
俺は昔の感情があふれ出てきて、ついには蘭と恋に落ちるようになった。
しかし俺は近藤と婚約していた。しかも彼女は妊娠していたんだ。
そして俺は蘭と結ばれるべく二人で話し合って、こうなったら近藤を殺すしかないと・・・・・・・」
「あっ!!」
「あっ!!!!!」
第5話 ドゥドゥドゥ~ドゥ~
中出は手錠をし、ジャンパーに顔を隠されパトカーにのせられた。
俺は中出の近くまで行き最後の会話をした。
「お前に最後にひとつだけ聞いときたいことがあるんだがいいか?なぜ殺さなくてはならなかったんだ。殺さなくてもよかったじゃないか。」
「それは近藤が俺の子を身ごもってたからさ。近藤に別れ話を切り出したときそう打ち明けられた。俺が蘭と何事もなく幸せに暮らすにはそうするしかなかったんだ。」
中出の声はだんだんと強みを増してきていた。
「そのことなんだが・・・」俺はある真相を中出にきりだした。
「実は近藤が身ごもってたのはお前の子じゃなかったんだよ。」
「えっ!!」えっ、とした顔で中出は俺を見た。
俺は続けた。
「そうだ。近藤はよく出会い系サイトで男に金をもらいながら遊んでいたのさ。それである日できてしまった、誰が父親か分からない子が。彼女の友達A子さんが言うには、別れを切り出されたときは突然だったから、中出との子と偽って言ってしまったけど、自分ひとりでこの子を育てていくといっていたそうだ。中出には迷惑かけられないから、と・・・」
話し終えると中出は足から崩れ落ちた。雪の降るそんな寒い日の出来事だった。