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5-地下

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5 同日 午前9時58分
「着きましたよ。起きて下さい。あの! 」
「はいっ!? ん? ああお前、スピード出し過ぎだ。死ぬかと思ったぞ」
「そうですか? ああ、この地下です。」
(地下で隕石をやり過ごしたのか…あのチキン野郎がやりそうな事だ。)
「じゃ、行くか。」
 地下へと続く階段を降りて行く。螺旋階段を百段ほど下ったところで、ようやく扉が見えた。
 埃っぽい扉を開けた。
「これは……驚いたな。高速生育期に冷凍睡眠装置。凄い…」
(これらでこの世界を『創造』したのか……。)
「こんな世界、間違ってる……」
「どうかしましたか? 」
「いや、なんでもない……ん?これは? 」
 一冊のノート。
(これは俺の時代の……)
 開く。ページをパラパラと繰る。その中ほどに記されていた一行。

『2107年 8月15日 隕石の軌道改変終了。全ての準備が整った。今こそ新しい世界が始まる。』

「やはり、隕石は作為的に軌道を変えられたものだったか……ここで止める方法を探れば……」
「どうするんですか? 」
「簡単な話だ。元の時代に戻って止めればいい。」
「止めたら、今のこの世界は? 」
「時間の理論はまだ解明されていない。起こりうる最悪の結果は、この世界の消滅…しまった!」
「え? ……そんなのって、おかしいじゃないですか! 私達は何も…!」
「落ち着け。まだ決まったわけじゃない。……あ!」
「どうしたんですか!」
「有り得ない…無理なんだ! 過去は絶対に変わらない!
つまり、この時代から見れば、過去はあくまで俺たちが辿った一本の線に過ぎない。
それは墨で描いた線のようなもので、消えない。」
女の頭の上に疑問符が見えるようだが気にしない。
「ならば分岐だってあってもおかしくない。よし! 決めた! 」
「何をですか!?」
「俺は、できる限りのことをして自分の世界を取り戻す! 」
「あっ! 何処へ?」
「ちょっとそこまで! ありがとな! 」
5

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