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清美さん

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清美さんは本当にすぐやってきた。片付けだそうと思い、腰を上げたときにはもう部屋の中に入っていたくらいすぐだった。
「やぁやぁ、修治くん。」
「あ、どうも。すいません……」
普通のあいさつを交わした。そして話は何かに逸れることもなくいきなり本題へ。
「なるほどぉ。これが修治くんのホームページね。」
顎を手で擦りながら考え込む姿は、どこか中年のおっさんを想像させた。まだ女子大生だというのに。
「からっきしね。」
ものの1分も経たないうちに結論を出した。どうやらからっきし駄目らしい。
「そ……そうですか。」
批判をあびることは目に見えていたのだが、まさかここまで直球ド真ん中でくるとは思っていなかった。
「そう、からっきし。じゃあどうすればマシになるか説明するね。」
「あ、はい。お願いします……」
パソコンの画面を二人で顔を近づけて一緒に見た。少し興奮した。
「まず掲示板を作ったところで何を書き込めば良いのかが分からないわよね。」
「え……?それは、好きなように……。」
少し戸惑ってそう答えると、清美さんは人差し指をたてて
「じゃあ一つ質問をします。」
と言ってきた。うなづくと、その質問とやらを提示してきた。
「もしも修治くんが今、紙を渡されて“何でも好きなこと書いていいよ”って言われたらどうする?」
この質問は、実に的を得ていた。――僕は、何も書けないだろう。
「そう。だから、書くべき“お題”みたいなものをつけなきゃ駄目ね。」
困惑の顔があからさまに露呈したようだ。何も答えていないのに、僕の考えを察してくれた。
「それと、このホームページ自体にももう少し個性をつけなきゃ。ここもまた、“何のホームページなのか”がよく分からないわよ?」
清美さんのアドバイスは、とても役にたった。この講座はその後も40分ほど続いた。相互リンクや画像を張ること、壁紙、フォントの工夫、ランキングに登録、BLOGを書く、更新頻度は多めに……。など、アクセスを増やす方法を伝授してくれたところで、清美さんはとっとと帰宅してしまった。
「小説のようにはいかないか。」
もしかしたら、清美さんフラグがたつかもしれないと思っていた。でも、そんなことなかった。
「まぁ、とりあえず言われたことをホームページに施すか。」
午後十時、清美さんが帰宅してから作業をはじめた。少し、僕のホームページはまともになった。
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