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【第】うはw急に新しい家族できたww【1話】

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 夕食前。夕日もとっくに落ちた頃のことだった。パソコンで毎日覗いている気に入りのVIPスレをチェックしていると、いつも夜遅くまで帰ってこない兄がいつの間にか俺の後ろにいた。
「おい麦」
「うはっ?!」
 本気でびっくりして肩が浮ついてしまった。そのせいでずれた俺の眼鏡を治しながら、振り向く。
 やはり兄だった。いつも通りのムカツクイケメン面で仁王立ちしている。
 そして、なんとはなしに言った。
「ここを出るぞ」


 【第】うはw急に新しい家族できたww【1話】


 5年前両親が別れて母さんが出て行ってからというもの、正直兄には苦労をかけたと思う。
 俺を引き取った親父は金のいい地方の工場へ職場を変えて一人離れた為、俺は兄と二人きりで暮らし始めた。
 俺とは11離れた兄は当時21であったが、大学をやめドラッグストアの店長をしながら今の今まで俺を育てた。
 今や俺も得意科目が家庭科(成績は常時5)になるほど家事は出来るようになったが、暇があればVIPに顔を出す今どきの中学三年の眼鏡男子である。塩川麦(しおかわむぎ)という。これでも受験生だ。
 兄はというと今年26になって、いい大人で忙しい身なわけだが、こうして稀に早く帰ってくる。名を稲生(いなお)といって、麦・稲と俺たちは穀物的な兄弟なわけで、大変仲がいい…と言いたい所だが。どうだろう。兄には苦労をかけたと思うし尊敬できる部分も確かにある。俺より遥かにイケメンだし。けれど正直…。

「無理やりタクシーなんか乗せやがってなんなんだよ!」
「うるせえな、黙ってろよ。行きゃあわかんだよクズ」
 口が悪い・横暴。
 養ってもらっている身としては思い切り反抗は出来ないが、これは酷い。
 無理やりタクシーに乗せられてどこかへ連れてかれている。
「何処行くんだよ」
「もう着く」
 兄がそういうやいなやキイとタクシーが止まったのは、住宅街の一角。
 一風変哲もない一戸建ての住宅の前だった。
「はあ…誰の家?」
 眉をしかめながらもとりあえず車を降りる。兄も金を払い終わったらしく降りながら俺の言葉に返答した。

「お前の家。借家だけど」

 (゚д゚)

 なに?
 もう訳が分からない。俺に家でもプレゼントしてくれる訳?
 いつからお前はそんな金持ちになった。そして優しくなった?
 俺が無言で妙な汗をかきながら奴の顔を横目で見ると「何だその顔は、気持ち悪い」とのたもうた。おめえの方がきもいわ。何を企んでいる?

「説明するのは中でいいだろ、来い」
 俺の疑念はサラリとスルーされ、兄はとっとと家の中に入ってしまった。

「なんなんだよ…」

 汗をかいたこぶしを強く握る。俺は、今までにないほど嫌な予感がしていた。

 妙に胸が騒ぐのを抑え、えいと玄関のドアを開ける。
 するとそこには。女性が立っていた。
 とても可愛らしい笑顔で、真っ黒な髪が印象的な。若いけれど幾つだろう?
 正直、美女だ。綺麗より可愛いが似合うけれど、やはり美女だ。
「あなたが麦くん?」
「あ…はあ。そうですが…」
「いらっしゃい!」
 そう叫んで彼女が腕を広げたのを見て俺は「来る」と思った。が、既にそのときにはもう抱きつかれていた。ドンと衝撃を受け、体がよろける。
「な、なんですか!」
「わあ可愛い!私、男の子も欲しかったのよねえ…」
「は?」
 何を言っているんだろうこの人は?
 俺は訳が分からなくて頭が混乱した。しかしそんな俺のことなど置いて、彼女はさらに俺を強く抱きしめる。かなりの力だ。あばらがギシリと音をたてたのが聴こえて、俺は青ざめた。何だこの人。物凄い力なんだが…!
「稲くん稲くん、なによ弟くん可愛いじゃない!嘘つきッ。ひどいじゃない、サルとか言って」
「何処がだ、そんな豆ザル」
 兄が既にスリッパを履いて、彼女の背後に立っていた。着ていたスーツの上着をいつの間にやら脱いでネクタイまで緩ませている。何と素早い。
 しかし…この女性、そんな兄のことを「稲くん」などと呼んだ。兄の知り合いだろうか…?もしかして恋人とか。ああ、その線が濃い気がする。ということは…。俺はあれこれ考えたが、結局兄に単刀直入に尋ねようと決めた。
「兄貴、一体これは…」
「ああ…まあ二人ともとっととリビングに入れよ。もう秋だぜ、廊下は寒い。おい、茶を入れろ」
 ああといいつつ俺の質問に答えていない。相変わらずこの横暴野郎は…!
 中々どういう状況か分からないで俺がイライラしていると、ふと彼女が俺に回した腕を緩め、とても優しい笑顔を俺に向けた。そして、


「じゃあ、お茶、お願いね。麦くん」


 と言った。


*


「どうぞ」
 そう言って俺は二人の前にカップを出す。
 何故人の家で俺が茶を入れ、勧めなければならない?
 俺は違和感を感じつつも、兄にいつも入れてやるようにしっかりと手順を踏んで茶を入れてやった。茶っ葉はうちにある物と同じメーカーの、兄お気に入りの紅茶だ。その辺には売ってない。
 そんなものがここにあると言う事は、やはり彼女は兄の恋人に違いなかった。
「ありがとう、麦くん」
「いえ」
 これが漫画だったら、この人のバックには花が咲いているに違いなかった。何でこの人こんな可愛いんだ。幾つなんだろう…。俺は頬が熱くなるのを感じながら、なるべくそっけなく返事をした。ヘタこいて兄貴に馬鹿にされたくないからな。
「まあ、座れ。麦」
「……」
 俺の思惑など知るかとばかりにいつも通り偉そうである。まあ、若干むかつくが、反抗しても何の足しにもならない。俺は素直に、リビングに陳列した白いソファに腰をおろした。
 とりあえず兄が話し始めるのを、二人が紅茶を啜る音を聴きながら俺は黙って待った。彼女は「おいしい」とか何とか言っていたが、俺は気が気じゃなくてどうも落ち着かなかった。そして、やっと一息入れ終わったのか兄がカチャリとカップを置く。

「早くしろって顔だな」
「当たり前だろ…何も言われず急に知らないとこに連れてこられたら誰だってさ…。で、この人はどちらさまで…」
「婚約者の村上鳴子(むらかみなるこ)さん。来年の春には結婚する。暖かい方がいいからな」
「私、春が好きなのよ。よろしくね、麦くん!」
「あ、なんだ、こん………」
 いやいや、ちょっとまて。
 ビデオを一時停止したように俺はピタリと静止した。
 あんまり二人がサラサラと世間話のリズムで言うので、危うく普通に流してしまう所だった。

「こんやくしゃあ?!」
「なんというつまらないリアクション。無理やり突然家に連れてきた意味がねえな」
 兄が溜息をついて心底カスだな、みたいな目で俺を一瞥した。

 (; ・`д・´)<な、なんだってー!?

 俺の頭の中であのAAが舞う。でも顔文字で我慢しておく。
 ていうか兄貴って馬鹿?俺がどんなリアクションしたら満足なんだ?

「あー…ええと…びっくりしたけど…ま、あ、いいんじゃない?うん」
「別にお前に了解なんか得たって得なくたって関係ねえんだけど」
 馬鹿?とまた微生物を見る目で一瞥される。
 まあそれはもっともなわけだが、何て言ったらいいかわかんねんだよ!
「あーじゃあ、お幸せに…?兄貴も26だし、そろそろだろ。鳴子さん…でしたっけ。綺麗だし…、凄くいいと思う」
 もう訳わかめ。
 いい悪いとかより兎に角びっくりだよ。恋人の一人二人いるとは思ってはいたが、そんな素振り微塵も見せなかったもんよ。それとなく言ってくれればいいものを。
 そこで一旦、俺は落ち着くために自分の紅茶を啜る。
「………ん?」
 あれ、ちょっとまて。
 結婚ってことは…俺はどうなるんだ?
 どこに住むん…
 と、途中まで考えたのだが、そこで兄がまた口を開いて。

 そしてとんでもない事を言った。


「だからお前も今日からここへ住め。あともう一人、鳴子さんの娘さんがいる。お前の一つ上の歳で高校生の。まあ、4人でココに住むってことだ。仲良くしろよ。あ、そうだ、ちょっとお前呼んでこいよ。二階の階段前の部屋だ。ついでに挨拶してこい」

 な、

      _人人人人人人人人人人人人人人_
        >    な なんだってー!!  <
        ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
        _,,.-‐-..,,_       _,,..--v--..,_
    /     `''.v'ν Σ´        `、_,.-'""`´""ヽ
    i'   / ̄""''--i 7   | ,.イi,i,i,、 、,、 Σ          ヽ
.     !ヘ /‐- 、u.   |'     |ノ-、 ' ` `,_` | /i'i^iヘ、 ,、、   |
    |'' !゙ i.oニ'ー'〈ュニ!     iiヽ~oj.`'<_o.7 !'.__ ' ' ``_,,....、 .|
.   ,`| u       ..ゝ!     ∥  .j     (} 'o〉 `''o'ヽ |',`i
_,,..-<:::::\   (二> /      !  _`-っ  / |  7   ̄ u |i'/
. |、 \:::::\ '' /        \ '' /〃.ヽ `''⊃  , 'v>、
 !、\  \. , ̄        γ/| ̄ 〃   \二-‐' //`


 我慢なんかできる訳がなかった。
 俺の頭にAAが炸裂。(反省はしていない。けどずれたのは反省している)

 そして兄の横で鳴子さんが「まあ、あのこったら…麦くん来るから7時前には下りてまってなさいって言ってあったのに…。ごめんね麦くん」とぼやいていたが俺の耳には完全スルー。

 …俺は確実に固まっていた。

 しかし唖然として真っ白なはずの頭のどこかで、
 うは、スレ立てするしかねえ…などと考えている自分がいたのだった。

2, 1

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