「封印された「電車男」」安藤健二
まず、本書で槍玉に上がっている例の本を読んだときまでさかのぼる。
私は以前に「電車男」を読んでいた。
当時自分自身がいわゆる「甘ちゃん」(HNにあらず)で、ネット上の物事に過剰な期待がしていた時であったので、恥ずかしながら電車男を読んで感動してしまった。
ただ少したち、著者の言葉を借りると
「ネット上のコミュニケーションって、そんなハートウォーミングなものじゃないだろう?」(引用)と、わずかに思い始めていた。
2chの歴史は長いのにこれまでこんな事がなかったのも疑問だし、
もっと殺伐としたものだと思っていた。Mixiならともかく、2chでこんな一人に
アドバイスを常駐総動員でしてくれるものだろうか?
その上火がついたようにマルチメディア展開。漫画も出るわ出るわ。ドラマやら映画やら。
三つとも絵柄が全く違うし。(渡辺航さんだけは個人的に応援。絵柄と、オリジナル部分が良かった)
余談ですが痴漢男は電車男のいわゆる二番目なだけあって書籍と映画だけで
済みましたが、その分yoko氏の漫画が見れてよかった。
さて、出会いはこの辺で、今回の本書に出会ったのは池袋ジュンク堂にて。
なんたって乙女ロード+ジュンク堂は自分ご用達コースですからね。なんでも揃う。
性欲から知識欲まで。ホント、いろんな本が手に入る街ですよ。
「封印された電車男」
帯には「ニセ電車男、毒舌ムーミン、不治の病の男、そして・・・セックス。
ベストセラー「電車男」には実際の掲示板での膨大なやり取りのたった6.4%しか
収録されていなかった!「残り93%の物語」の叫び」
最後のアレについてはすでにネットで見てて、やっぱりねって納得した部分もあるのですが他の三つは知らなかった。もう光の勢いで興味を引かれて購入。
「ニセ電車男」「偽者です!今帰りました!」死語ばかり使い
エルメスとの食事後の報告をする。スレ住人には好評だった模様。
「毒舌ムーミン」「あ・・電話が鳴ってる うぜーな」等がムーミンのAAともに
書き込まれている。他にも「いくらの壷にしようかな」「話す事ねーな また助けられたことの礼を言っとくか」など。なんだか怖い。ムーミンのAAって無表情なのがさらにまた。
「不治の病の男」
∧∥∧ ずっとイイ事なかった漏れに止めがきたようだ
( ⌒ ヽ 20になったばかりだというのに不治の病だと。もうだめぽみたいだ
U ノ 電車たんのような奇蹟でも起きない限り持たないだろう
UU 魔術使いとしてこの世をさりても皆の事を見守っているよ
↑の書き込みママ。AAも。ずれてるのは私が不治の病(キチガイ)だからです。
この後自分の年を忘れた旨の書き込みとエイズを連想させる書き込みを残して失踪。
皆をかく乱させる為だったのか、本当だったのか。
以上三つはもちろん元の「電車男」には未収録。
でも、意外とアッサリと取り上げられてただけ。不治の病の男は本気で気になった。
あと「tanasinn」は微妙に怖い。怖い。無機質で。長門は大好きなのに。
「消された「手紙派」」
手紙を一部推奨していた住人がいたが、電車男はスルー。元の本もスルー。
「手紙は有効じゃないんですかね・・?」等の電車の発言が寒く見えます。
「トリップ漏れ」
電車男は別の板に誤爆してしまうのだが、それを自演でフォロー。(IDでバレてる)
本スレには何事もないようにトリップ変えて書き込み。
・ ・・結果、もしかしたら今までも電車男はスレの流れを自演していたのでは。
独身男性板ではID非表示なのを利用してか。
この本は元ログへのリンクを張ったりいろいろ丁寧。
章ごとに「電車男」の「episode~」を意識してか
「another episode」となっている。細かい。
ぜひ買って読んでみて欲しい。
読みやすいし納得できる解説。生ログはもっと面白いと思う。
なによりこの筆者の観点が素晴らしい。封印されているものを知りたがるのは
ある意味人間の性であり、もっとも興味が湧くものである。
それにつけこんだだけの本かどうかには触れない。しかし、
膨大なログの見所を抽出して、本にまとめて、分りやすくしている。
人に教えたくなる本だと思う。そもそも、ネットがそんな上手くいくわけないよな。
「膨大なログの見所を抽出して、本にまとめて、分りやすくしている。」って、
よく考えればそれ新潮社がやったことも同じなんだよね。
本は作られたものであり、人の手が加わっている。元は同じでも人の手の加えかた次第で、こうも違うのか・・。