第4話
蝕んでおくれ
僕の全てを捧げよう
虚無と化したそのときに
あなたと一つになれるから
-第4話-
たった一枚のDVDによって、僕が人生に転機を迎えることなど、想像できるはずもなかった。
それでも僕は、この先待ち受ける自分の運命を知っていたとしても、このDVDを再生しただろう。
無二の友を救う為、最愛の女性(ひと)への想いを確かめる為。
迷いも躊躇いもなかった。僕はPC/AT互換機を起動し、DVDを再生した。
緊張感に近いこの感覚、鼓動が止まらない、全身の震えが止まらない。その時には気付いていた、もう後には引けないところまで来てしまったんだと。
そして数秒にして、時の流れが消えた。僕はゼロ時間へ辿り着いた。
…こ…これは………
一言で言い表すならば、兵器だ。
「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
見る者全てを魅了するのは、その容姿だけではなかった。彼女の発する声の美しさに、心まで溶けてゆく。
この世界に、いや、この宇宙に、これほどまでに美しい音が存在したのか。
ああ、何も考えられない。自分の名すら思い出せない。
僕はただ、ヴァリエール嬢のフルネームを延々と呟いた。
そして、ヴァリエール嬢の破壊力は、それだけには留まらなかった。神経を司る全ての物質を、コロナの灼熱で熱処理されるような…核同等の破壊力を持つエンディングソングが流れ出した。
もう…だめだ…。
薄れゆく意識の中、僕はその名を目にした。
知ってしまった、最愛の友が理性を失うに至ったその訳を。
「く…釘宮……理恵…」
僕はそのまま意識を無くした。