プロローグ
「おじいちゃん……」
幼い頃の僕の声が聞こえる。
「大丈夫なの?」
「心配するな、ウィス。おじいちゃんは大丈夫だから……」
大きなしわだらけの手で、僕の頭をなでてくる。
あったかくて大きな手。
何度この手になでられたことだろう。
「うぅ……」
急におじいちゃんの体が九の字に曲がる。
と、同時に僕の目の前は赤く染まった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
がばっ!
新しいシーツのにおいがするベッドから飛び起きる。
「はひゃ、夢か……」
寝ぼけながら、ふと壁にかけてある時計を見る。
「やばいっ!!」
時刻はすでに8:00を回っていた。
今日は「サッドランド学園」の入学式だった。
僕は、支度もそこそこに部屋を転がるように飛び出た。
マナが満ち足りた世界「フィネルス」。
マナに語りかけ、使役するものをウィザードと呼んだ。
僕が今日入学するのは、フィネルスでも最大の「サッドランド学園」
伝説のウィザード「ガルフィス・サッドランド」が設立した由緒ある学園だ。
ちなみに、僕の祖父でもある。
古今東西の選りすぐりのウィザードの卵達が集まるサッドランド学園に僕は
あまり入学したくなかった。
なぜなら、僕自身の干渉力がからっきしだからだ。
ウィザードの力の強さは、この世界に対する干渉力により決まる。
伝説のウィザードを祖父に持つ僕もその期待は大きかった。
その分、落胆もひどかったのだ。
そういった理由で、入りたくなかったのだが、祖父の強い勧めでやむなく入学の
運びとなったわけだ。
「そこの!」
「ん?」
校門を通ってすぐに、どこからか声をかけられた。
がしかし、どこにも人は見当たらなかった。
「どこみてんのよ!下よ!し~た!」
ふと下を見る。
そこには、12~13歳ぐらいのかわいらしい女の子が白衣を着て立っていた。
「ご、ごめん!気がつかなかった」
「むむ、失礼なやつね。まあ、いいわ。
職員室ってどこよ?」
失礼なやつって自分も年上に向かって失礼だと思うんだけど……
「なに、ぶつぶつ言ってんの!はやくしなさいよ!」
「え~と、僕も今日が入学式だから、よくわかんないんだよ」
「ちっ、つかえないわねぇ。いいわ、自分で探すから!」
たったった
そういいながら、少女は走り去っていってしまった。
舌打ち?したよね……
年下からなめられる自分っていったい……
っと、落ち込んでる場合じゃない僕も、急がなきゃ!
「ウィス!こっちこっち!」
「二ム!」
僕が入学受付所の近くまで来ると、幼馴染の二ムが手を振りながら、声をかけてきた。
「遅いじゃない!もしかして、寮のベッドが合わなくて寝れなかったの?」
「いや、そんなわけじゃないんだけど、変な夢見ちゃって……」
「どんな夢?」
興味津々に二ムが聞いてくる。
「あれ?どんなんだったけ?覚えてないや」
「なによそれ~」
二ムの明るい笑い声が響く。
ふと周りを見渡すと、結構な人数が居た。
「ふぇ~、コレ全部、新入生なのか」
ここから見える限り、1000人はくだらないようだった。
「そうね。すごい数よね」
ニムも感心したようにいう。
『新入生は速やかに、東の魔術競技場まで集まりなさい』
魔術で声を大きくした壮年の男性の声が受付所付近に響き渡る。
そろそろ入学式が始まるようだ。
『それでは、ただいまより第15回サッドランド学園入学式を執り行います』
魔術競技場に声が響き渡る。
僕たちはあの後、すぐにクラスごとに分けられた。
ニムとは、どうやら同じクラスになったようだ。
この国の偉い大臣などいろいろな祝辞のあと、
担任紹介へとプログラムは流れていった。
「ん?」
なんか、見たことある子が演台の上に立っていた。
あれは、さっきの!
「はじめまして~、今日から学園にお世話になります
ファネス・サーネルと申します。
担当は1-Dなんでよろしくお願いいたします!」
さきほどとは、えらい違いだ……
ん?1-D?
僕は凍りついた。
僕のクラスだ……
本性を知っている僕は「かわいい~」とか言っている
クラスメイトの言葉は一切入ってこなかった。