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第九話『バッドエンドは突然に』

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 キーン、コーン、キーン、コーン。間の抜けたチャイムが鳴ると同時に、教室の空気が一瞬にして緩まる。
「……お、もう終わりか。それじゃ明日は32ページから始める。最初の説明文は出席番号順に読んでもらうから、一番初めの奴は覚悟しておくように。では、昼食だ」
 教師のその一言により、授業が本当の終わりを告げる。教壇を離れ廊下に出てゆく教師を他所に、教室の中は既に昼一色に染まっていた。
 もちろん俺もその中の一人であり、早々に席を立って昼飯を買いに行かなければならない。この学校に購買なんていう気の利いたものは無いんだからな。
「武田君はいつも通りコンビニかお?」
「その通り。内藤はいつも通り弁当か。……そういや自分で作ってるんだっけか」
「おっおっ、今日のは自信作なんだお!」
 弁当の中身を見てみると、なるほど、自信作と言うだけはあった。鳥の唐揚げに玉子焼き、ミニトマト。キュウリの塩揉みに、ごま塩が振りかけてある白米。小さいタッパーにスイカを一切れ。……自信作だろうな。
 少しおすそ分けして欲しくなった自分を抑え、考える。晩飯ならどうとでもなるが、朝に作る弁当となると一気に面倒になるのは気のせいだろうか。一人暮らしな分、晩飯を余らせない所にも原因があると思うのだが、いやはや。
「んじゃ、俺は一人で寂しくコンビニだな」
 本堂は休み、佐藤は他の奴とどこかへ行ってしまい、三島は例の如く動きが掴めず、残ったのは俺一人。久しぶりの一人きり、良く言えば平穏。最近は昼休みと言えば酷いことの連続だったから、この静けさは貴重とも言える。
 内藤に一瞥し、騒がしい教室を後にした。
 さてさて今日は何にしようか。最近はおにぎりが多かったから、今日はパンな気分。しかし、コンビニに売っているパンは体に悪いと小さい頃親に言われてたしな。それこそコンビニ弁当は犬ですら食わないとも言ってたし。じゃあおにぎりもダメなんじゃね? コンビニだめじゃね?
 自分で自分の朝食を否定しまくっていると、不意に話し声が聞こえてきた。職員室の前、あれは体育の横山と……うーん、知らん教師か。その二人がなにやら話している。
「……すね。今日で一週間、そろそろ古雅原さん、出てこないとなるとやばいんじゃないんですか?」
「横山さんの言うことも分かりますが、私は生徒のカウンセリングをしにここへ来ているわけでして……その、教師もすることはするのですが、さすがに自宅まで行くというのはちょっと」
「そうですかあ。……古雅原さん、ホントどうしちゃったんでしょ」
「うーん……」
 どうやら古雅原という教師の話題らしい。
 一週間、出てこない。これは三島が言っていた引きこもり教師のことなのか? ……ううむ、一週間も休んで、話を聞く限り連絡もしてないっぽいな。クビになるんじゃないのか、それは。
「うーむ……む、こら武田、立ち聞きは良くないぞ」
 古雅原という教師について色々と考えていると、急に名前を呼ばれて驚いてしまう。見れば横山が恐い顔をして俺を見ていた。
「げ、すみません。もう行きます」
「まったく、これだから最近の子供は――」
 横山だってまだ二十代じゃねえか。そう言いたいのをぐっと堪え、俺はそそくさとコンビニに向かうのであった。


『バッドエンドは突然に』


「あー、飽きた」
 食いかけのシーチキンマヨネーズ味のおにぎりを地面に置いて、空を見上げる。
 珍しく人気のない屋上。……確かに今日は暑い。人が避けるのもわかる気がするが、俺みたいに日陰に居れば結構快適な場所になるんだけどなあ。
 再度おにぎりを口に運びながら、三島に頼まれたことを考える。……うーむ、その、自宅に向かうのはわかるのだが、具体的にどうすりゃいいんだろうか。あまり深く考えないで了承しちゃったけど、こりゃあ面倒だぞ。
 そもそも俺は古雅原という教師と面識が無いし、引きこもっている人間を引きずり出す方法も知らない。それに何かの事情があるかもしれないし。
「考えれば考えるほど面倒なこったなあ」
 指についた海苔を剥がしながら、やる気が無いと言わんばかりに横になり目を瞑る。
 風が気持ちいい。なんというか、こういう暖かい日差しが降り注ぐなかでずっとうとうとしていたい気分になってしまう。
 ……ああ、眠い。



「――あら、武田智和さん?」
 うとうとどころか、本気で寝そうになっていた頃、急に傍から自分の名前が呼ばれる。
「ん……あ、杉林さん」
 目を開けると、ピンクの可愛らしい弁当箱を持った杉林さんが俺の横に立っていた。
 みっともないところを見られたと、俺は慌てて起き上がり、なんてことはないと言った風に爽やかな笑顔で振り返る。
「やあ、杉林さん。こんな日には春眠を貪りたくなるよね」
「もう夏ですよ?」
「そうですね」
 変なやり取り。
 杉林さんは何故か俺の隣――少し距離はあるけど――に座ると、弁当の包みをほどき始める。俺はその様子を見ながら、ふと疑問に思う。
「気になったんだけど、杉林さん、転校してきた日を見た限りじゃ人気あるのに、なんでこんな寂れた場所で孤独なお昼を?」
「……人が多いところは苦手なので」
「そうなんだ」
 人が苦手なら俺の傍に来なくても、と、そう言いかけたところで止めておく。静か過ぎるのも不健康な感じがするし、飯時くらい人と話したいなんて思ってしまったからだ。
 まあ、見知ってる人じゃなかったこうは思わないのだろう。
「そういう武田智和さんこそ、いつも一緒に居られる方とは一緒じゃないんですか?」
「今日はたまたま。とは言っても、俺としては杉林さんに同意。騒がしすぎるのはあんまり好きじゃない」
「そうだったんですか」
「うん。……で、これも気になってたんだけど、何故俺をフルネームで呼ぶんだ」
 うーん、と。少し悩む動作を見せる杉林さん。そこは悩むところじゃないだろう。
「いや、別にそれが嫌だってわけじゃないんだけど」
「……なんででしょうね。やっぱり、武田さんと呼んだほうがいいんでしょうか」
 変な子だ。
 俺の杉林さんへの印象は、“お嬢様”から“変な子”になった。
 なんというか捉え所の無い、雲を掴もうとしているみたいだ。……すげえ間抜けだよな、それって。そんな杉林さんは黙っている俺に何を言うのでもなく、弁当に箸を伸ばし始めた。
 そうか、わかったぞ。これはマイペースなんだな。よく言えばマイペースなんだ。
「武田さんはもう食べ終わったんですか?」
「ああ、俺はもう食べ終わって、うとうとしようとしていたところだ」
 杉林さんにくるりと背を向け、そのまま横になる俺。
 今日という日はまるで昼寝するため調整されたように気持ちがいい。このまま一分と経たずに、俺は寝てしまうだろう。その瀬戸際が素晴らしく気持ちいい。
「さきほど見た限りではとても気持ちよさそうに眠っていたようですが……」
 む、と。俺は思う節があって再度体を起こす。
「今は何時だろうか」
「私がここに来る前に見た時は、二時を回っていました」
「……そうか」
 なるほどなあ。瀬戸際を楽しんでいたと思ったら、どうやら本気で俺は寝てしまっていたらしい。……じゃあなんで杉林さんは弁当を食べてるんだよ。
「あ、私はお昼休憩の時に行った病院が思った以上に長引いてしまって、それで食べているというわけです」
「さいですか」
 ううむ、性質の悪い叙述トリックにしてやられた気分だ。まさか自分のことを“普通”だと自負しているこの俺が授業をサボってしまうとは。
 バカバカ俺のバカと自分で自分をなじりながら、今から授業に出ることを考える。
「どうしよう。途中から行くの面倒だな」
「私は行きます」
「そ、そうかあ」
 ちくしょう。これじゃまるで俺が悪い子みたいじゃないか。
 男に二言は無いだなんて今の時代で言えばナンセンスなことを考えている俺を他所に、杉林さんはそそくさと弁当を包みにしまっている。
 どうしようか。ここでずっと昼寝していようと思えば出来るけど、三島に頼まれたこともあるし、万に一つ夜まで寝てしまうことになってしまったら、それこそ色んな人に見せる顔が無いというもの。
「では武田さん、失礼しますね。お昼寝の邪魔をしてすみませんでした」
「あ、そりゃご丁寧にどうも」
 ……行っちゃった。
 めんどくせえ。今日はもう“現代の恐怖、非行に走る子供たち”よろしく、早退してしまおう。口うるさい本堂も居ないことだし、今から引きこもり教師のとこに行けばいい。うむ、我ながらナイスな考えだ。……正直なところ、イレギュラーとして教室に顔を出す恥ずかしさから逃げているのだが、それはまあ、よしとしよう。
 佐藤達と話すようになったと言っても、人見知りなのは変わらないし、依然としてクラスの奴に嫌われている節があるのも変わらない。目を逸らしているだけ。
 よからぬことをすると陰鬱な気分になるぜ……くそ、さっさと早退してしまおう。
 俺は周りに散らばったおにぎりのゴミを乱暴に袋に詰め込むと、これまた乱暴に屋上の扉を開いた。



 とてとてとて。
 七月も半ばになり、そろそろ本格的に暑くなってきたと身を以って実感する。とにかく暑い。屋上の人気の無さが少しわかった気がする。
 普段ならば空が紫に染まる頃に歩いている、この商店街。今は昼が少し過ぎた頃。……なんだろう、時間を少しずらしただけで自分が凄い場違いな感じがする。晩飯の準備をしに買い物に来ている気の早いオバサン達が、こぞって俺を非行少年などと噂している、そう思ってしまうくらいに俺のハートはキュンキュンしている。早退なんて慣れないことするんじゃなかったよ、くそ。
 俺はついさっき、小休憩の時に三島からもらった地図を頼りに右へ左へと道を曲がる。三島は俺が教師のところに行くと言ったら、別に早退を咎めるわけでもなく地図を描いてくれた。
 佐藤の奴は捨てられた子犬のような目を俺に向けてきたが、俺の中にある理想としての佐藤はそんなことをするはずがないので、華麗にスルーしてきた。……理想の佐藤って、響きが嫌だな。別にホモっ気とかじゃなくてだな、俺は純粋に主人公然としている佐藤に憧れていただけなんだ。ホモキャラは本堂だけで十分だぜ。
「それにしてもここはどこなんだ」
 認めたくは無いが、見知らぬ道に入って心細くなってしまった俺は独り言を漏らす。地図を見る限りでは間違った道に入っている事はない。帰る時には来た道を戻ればいいだけ。……しかし心細い。
 見れば今居る道は住宅地と住宅地、それに大通りの狭間にある細い道と言うべきか。古い家には壁なんていう大それたものは無く、トタンが申し訳程度に立っているだけ。そんな、ゆとりなのに昭和を思い出してしまうような寂れた道だ。
 この様子だと、相当ボロい家かアパートに住んでるんだろうな……。
 この町は別段都会というわけでもなければ、ひどい田舎というわけでもない。地価は低い方であり、それなりの物件でも家賃はそこまで高くならない。その代わり所得も都会に比べると低いから、あまり得した気にならないのは気のせいではないのだが。だけど、さすがにクラスを受け持っている教師が、非常勤でもあるまいしそこまでの財政難とは思えない。
 ううむ。世の中には謎が多い。
 とても頭が痛くなることを考えている内に、俺は地図にネコともイヌともつかない変な動物が描かれた場所、つまり目的地の前についていた。この際三島の美術センスは放っておこう。
 まさに俺の予想通り。目の前には伸びきった雑草、赤茶けたトタン屋根、赤錆びた階段、入居者募集と擦れた文字で書かれた看板――しかも電話番号が六桁――、“しげ美荘”なんて旧世代のネーミングセンス、それらで構築された、正にボロ・オブ・ボロアパートが建っていた。住んでる人、ボロボロ言いまくってごめんなさい。
「いや、そもそも、人が住んでいるように見えないな……」
 車は狭い駐車スペースに一台停まってはいるが、トッポR……平成一桁時代の遺物が転がっている、と表現した方がいいだろう。
 一通りどれだけボロいか表現し終えたところで、俺は意を決して地図に書かれている通り、202号室を目指す。……この階段、大丈夫だろうな。俺嫌だよ、こんなところで骨折とかしちゃうの。下手こいて死んじゃうの。
 トントントン。
「すみませーん」
 まさかドアホンも付いていないとは……ある意味予想通りとも言える。
 俺は軽く何回かに分けてノックし、恥ずかしさを感じながらも大声を出して呼ぶのだが、全く返事がない。そこで俺は、最悪の可能性を想像してしまう。
 そう、この扉の向こうでは、今まさに蛆が肉を食らい腐敗が進行している教師の死体が転がっていたりするのでは――。
 ガチャ。
「ふあーい、どちら様でしょうかあ」
「ぎゃあ」
 えげつない想像をしている最中、急に扉が開いた所為で、俺は思わず素直な言葉を発してしまう。そんな俺の反応を見て、目の前の女性はポリポリと不機嫌そうに頭を掻きながら、俺を睨みつけ口を開く。
「開口一番に“ぎゃあ”とは、喧嘩でも売りに来たのかこのハナタレ」
「すみません俺が悪かったです」



「話はわかった。それにしても、へえ、もう一週間経ってたんだ」
「はい。校長は知りませんが、教師の間ではもう変な噂が立ち始めていますよ」
 謝ったあと、立ち話もなんだしと、部屋に招かれた俺。女教師は面倒くさそうに台所に行くと、ガチャガチャとなにやら騒々しい音をたてている。……なんとも、女教師というのは聞こえがいいだけ、と現実を見せられた気分になる。いや、現に見せられているわけなのだが。
 とにかく部屋が汚い。無性に掃除したくなる。とりあえずカップ麺のゴミが壁際で山になっている所にボーリングの球をぶん投げたくなる衝動に駆られる。
「別にアタシは登校拒否していたわけじゃないんだけどねえ」
 ガチャガチャ。依然台所で何かをしている女教師が、急に返事をしてくる。
「じゃあなんで?」
「いや、その、まあとりあえず麦茶でも飲んでて」
 バツの悪そうな顔をしながら、氷の入ったコップを俺に渡す女教師。とても夏らしい、冷えた麦茶だ。
 ……ううむ。若い女教師の家に招かれ、お茶をすする。男子生徒からすればとても魅力的な状況に聞こえるけど、なんだろうな、これが現実なんだろうなあ。とても残念に思う。
 とても残念な目の前の女教師……古雅原、先生だったか。古雅原先生は俺の目の前でスウェットと思われる灰色の服を脱ぎ始めると、あられもない下着姿を俺に披露する。そのままジーパンを履き、ボタンの緩いブラウスを着て。
「……なあ男子生徒A。そこまで普通に着替えを見られると、アタシとしても反応に困るんだけど」
「いえ、現実とはこうも残酷なんだなあと一人納得していただけですから。それと、俺の名前は武田智和です」
「変な生徒を部屋に入れてしまった」
「こっちとしては入ってしまった、という感じです」
 意味も無く挑発しあう両者。何故かはわからんが、宇宙から降り注ぐ電波が、この女教師はダメな大人だと教えてくれている。電波が来なくても見ればわかるんだけど。
 その内反応の薄い俺に飽きたのか、女教師は部屋の隅に行くと、型の古そうなパソコンの電源を入れる。
 ……友達の家に来てみたら、その友達が一人でRPGをやりだした。そんな状況に危機を感じ、俺は慌てて話しを振る。
「そういえば、なんで先生は学校に来ないんですか? さっき説明したとおり、裁縫部の顧問になってもらわないと俺が困るんですが」
「はあ」
「聞いてるんですか先生」
「うん」
 ……どうしよう、なんか泣きたくなってきた。なんで俺、こんな昼間っからダメな大人に生返事されなくちゃいけないんだろう。
 どうせ話しかけても生返事が帰ってくるだけだろう、そう思ってふとパソコンの画面を見てみると。
「……ネットゲームですか」
「ま、まあね」
「それが引きこもり女教師の実態ですか」
 古雅原先生の体がビクンと痙攣する。……図星か、図星なのか。俺に散々なダメっぷりを見せつけて、尚、これ以上のダメさを主張するというのかこの大人は。
「なんでわかったの」
「……」
 どうしてこんな人が教師になれるんだろう。いや、反面教師としては十分に現在進行形で教えを請わしてもらっているわけなのだが、それはそれだろう。
 俺が何もかもを否定するような目で見ていると、いたたまれなくなったのか、古雅原先生は“はぁ”と溜め息をつき、こちらに向き直る。
「で、武田君はアタシにどうして欲しいの」
「この実態を見せ付けられた後で非常に不安ですが、今度作ろうと思っている裁縫部の顧問になって頂きたいんです」
「嫌だと言ったら?」
 俺は初めて芽生える黒い感情を抑えながら、爽やかな笑顔を浮かべて、言った。
「今日見たことをありのまま校長に伝えさせて頂きます」
「ほぼ強制じゃん。あーもう、アタシの理想郷がまさか、こんなハナタレ男子生徒Aに崩されるとは……」
「事実じゃないですか。……了承してもらえたんなら、俺はもう行きます。今日見たことは全部忘れますんで」
 黙って頷く古雅原先生を見て安心すると、俺は立ち上がり、玄関へ。靴を履いて、さあ、やっとのことで役目が終わったと晴れ晴れした気持ちで扉を開けようとしていた時。
「アタシの下着姿は忘れないんだよね?」
「……お邪魔しました」
 俺はこんな大人にはならないと、強く誓った瞬間だった。



 やっとのことで帰り道。夕焼けに染まった空を目で感じながら、商店街に設けられた大きな時計が指している時間を見て、急に疲れが沸く。
 今日は疲れた。三島のすることには、今後深く考えてから返答することにしよう。今日が特別だったと願いたい。
 とてとてとて。
 終わった事は忘れて、今考える事は今日の晩飯。そういえば内藤の奴が妙に気合の入った弁当を持ってきていた。……外食は楽なんだけど、やっぱり金がかかるんだよな。晩飯を余らせて、そこにちょっとした物を追加すれば俺も弁当組をやっていけるかもしれない。そうだそうだ、今日は少しメインディッシュを多めに作って、明日は弁当を作ろう。
 そうとなれば。俺はくるりと反転して、ついさっき通り過ぎた商店街へ向かう。……と、急に後ろの方で複数の車が鳴らしたのだろう、物凄い音量のクラクションが耳を襲った。なんだなんだと振り返り。
「――おい! 危ねえ!」
 すぐ左に居る魚屋のおっちゃんが叫んだ時、俺は既に宙を舞っていた。……何故? 危ない? トラック?
 考えが結論に到る前に、俺の思考はそこで止まった。





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22

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