MARSH
少女は胸をときめかせていた
新たな職場 新たな生活 初めての一人暮らしに
初出勤で社員に紹介されると、彼女は少しはにかんで軽くお辞儀をした
まだ少女らしい気恥ずかしそうなはにかみ方だった
社員の拍手を一身に受ける彼女の目には幾人かの若手の男性社員の顔も映る
一人の男が自分を見つめているのに気付き、彼女はそちらを見る
だがすぐに恥ずかしそうに目を逸らす
がっちりと太った若い男の目つきは彼女を値踏みするようだった
その横には、無気力そうに拍手をするいかにもおとなしそうな男性の姿も見えた
目の焦点も合ってないように見える。失恋でもしたのだろうか
彼女は彼がこれから先、自分の人生には関わる事はないと判断したのか
その男性の事はすぐに忘れてしまった
彼女はそこから 沼に 沈んでいく
6年後
社内で目の下に隈を作っても、日課であるニュー速スレを閲覧している彼女の背中を見つめながら
口の端を軽く吊り上げ、ニュー速VIPにスレを立てる男が居た
彼女がそのスレの存在に気付くのは1時間と数十分後
そして彼女の運命も動き始める