「一緒に歩こう?」
少年は少女に語りかけた。
「私は、何も出来ないから、一人で歩く」
少年は少女に語りかける。
「でも、一緒に歩こう?」
「一人でいるのが一番落ち着くのに」
少年は少女に話し始める。
「一つのノートで書ききれないなら、二つのノートに書けばいい。一つの紙に描ききれないなら、二つの紙に描けば良い」
「偽善者」
少女は少年に棘のある言葉を放った。
「そうだね、偽善者だね。僕は君が笑うと嬉しいから、一緒にいると嬉しいから、一緒に歩こうって言ってるんだもんね」
「じゃぁ、消えて」
少年は笑みを浮かべる。
「でもさ、偽善でも、僕は君が笑うと嬉しいんだもん。何時までも言い続けるよ。自分のために」
「自己中心的ね」
少年は笑みを崩さない。
「だれでも自分が一番大事さ。君は一人じゃなくなって、僕は君と一緒にいられる。何処が悪いのさ?」
「そういう考え方」
少年は笑みを崩さない。
「……ありがとう」
「なにが」
少年は笑みを崩さず、体の端を崩していく。
「君と一緒に居たかったんだ、だけど君が一緒に居てくれないというのなら、僕は一生付いて回る」
「好きにすれば?」
少年は笑みを浮かべたまま、体が崩れて消えていった。
「――で、貴方はそれで何が見えるの?」