どうもこんにちは! 星和の名参謀こと鵜飼さゆりです! お久しぶりです!
わー名参謀なんて言っちゃった、言っちゃったwwww。
ハイ、今回はサブタイ通りダイジェストと称しまして、我が星和高校ソフトテニス部の勝ち上がりの様子をジャッジペーパーからお伝えさせていただきたいと思います! それからですね、後半に渡瀬くんと恵センパイのお話を添えてます!!
今回は主人公の渡瀬くんのターンはぜーんぜん回ってきませんので、引き続き本編を読み進めたい方は次のページに進んでくださいねー。
それではそれでは、どうぞ!!!
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雨の降りそうで降らない不安定な天候状態の中、インターハイ行きを懸けた団体戦がついに始まりました。
その緒戦。相手は前回の市長杯大会でも当たった春日高校です。
星和とは何か特別な縁でもあるのかなぁ。
えーっと、それはさておきまして、星和の1番手は押しも押されもしない不動のエース、岩崎・永野ペアです! 開始からいつも以上に気合の入ったプレーで先輩たちは試合のペースを掴むと、その後もほぼ危なげのない試合運びを見せてくれました! 相手の1番手は前回市長杯で渡瀬くんたちが戦ったあのデコボコ2人組でしたが、キャプテンペアに押されながらも1ゲームを奪取。1番手の意地を見せつけられました。あれからコッテリしぼられたのか、前回観た時よりもずっと前衛は動きが切れていました。が、やはり終盤は自力の差が出て後衛のチビ君の必死の粘りも実らず、試合はそのまま4-1で決着。
続く2番手の試合も鬼木・江副ペアが終始ゲームを自分たちのリズムで進めて、ゲームカウント4-2で勝利。無事に星和の2回戦進出が決定しました。まずはひと安心です。
でも、ちょっと不安なコトもあって……。
その後渡瀬くんたち3番手のゲームが行われたのですが、どうも渡瀬くんの調子がおかしかったんです。ボールを度々ネットに引っ掛けたり、大きくアウトになってしまったりと、試合を通して渡瀬くんは打球の距離感に手こずっている様子でした。
試合の方も一進一退の攻防を見せましたが、ファイナルゲームに入って相手に連続ポイントを許してしまい、そこで気持ちが切れてしまったのかそのまま押し切られてしまいました。
結果的に試合には勝ちましたが内容にいささか不安が残ってしまって、表面上はみんな勝利を喜んでいたけれど表情にはあまり元気がないように私には感じられました。
はぁーっ、なんか先行き心配だよぉ……。
1回戦結果(対春日) ○2-1
岩崎・永野 4-1 車谷・茂吉
鬼木・江副 4-2 夏目・安原
渡瀬・宮奥 3-4 花園(百)・花園(千)
続く2回戦の相手は市長杯ベスト8入りの実力校、黒流高校でした。
正直言って2回戦で当たるには早過ぎる相手です。と言うのも向こうの1番手には市長杯で個人戦準優勝した三國・菊多ペアがいて、彼らが何番手で出てくるかが星和にとって勝負の鍵でした。
みんなでじっくり話し合いをして、オーダー決めにはかなりの時間を費やしました。
そして試合開始。私たちは1番手に渡瀬くんペアを立てました。対して向こうのベンチからコートに入ってきた1番手は――――三國・菊多ペア!
よかった、とりあえず私たちの予測は見事的中です。
相手の実力とみんなの1回戦の状態から、向こうの1番手には捨て駒を当てようと言う方向に決まり、黒流高が実力順でくると読んだ上で1回戦であまり本来のプレーが出来なかった渡瀬くんたちに”オトリ”になってもらおうと言う事になったのでした。
その狙いは成功したんです、けれど……。
一方的な試合展開になって、渡瀬くんが精神的に参ってしまわないだろうか――――。
オーダー決めの時から、私はずっとそのことが心配でした。けれど、試合が始まると渡瀬くんはそんな私の不安をよそに前の試合の不調が嘘のような好プレーを連発。私はもちろん、ベンチの皆を驚かせてくれたんです!!
どうやら大会に合わせて新しく巻いたグリップが上手く手に馴染まなかったみたいで、渡瀬くんは1試合目に着けていた真っ白なグリップを外して、黒流高戦では元グリで挑んでいました。試合は”予想外”の接戦となり、ベンチも周りの観客も大きく盛り上がりました。
この試合を私なりに総括すると、ゲームカウント2-2で迎えた第5ゲームが勝負を分けるゲームになったと思います。ポイント3-1としてゲームポイントを先に掴んだのはサーブを打つ渡瀬くんたちの方でしたが、その後渡瀬くんのダブルフォルトを皮切りにイージーなミスが重なってしまい、デュースの末このゲームを奪われてしまいました。ピンチを凌いだ相手ペアはこれがキッカケで勢いづいてしまって、それまでの緊迫した展開が一転、続く第6ゲームを簡単に奪って試合が終了しました。
どんなに良いプレイヤーでも、ミスはあります。でもいかにイージーなミスをしないかが勝敗を大きく左右するんだ、とこの試合で改めて思い知らされました。
でもでもですね、星和は無事に勝ちましたよ!!
その後先輩たち2、3番手がガッチリ試合をモノにしてくれたんです。中でも圧巻だったのは、ストレート勝ちを収めた3番手の鬼木・江副ペアの気合の籠もったプレーでした。特に鬼木さんが見せた、文字通り”鬼気”迫る表情から、絶対に勝つんだという強い想いがひしひし伝わってきて、思わずジャッジペーパーを持つ私の手にも力が入っちゃいましたー!
2回戦結果(対黒流戦) ○2-1
渡瀬・宮奥 2-4 三國・菊多
岩崎・永野 4-1 山田・八角
鬼木・江副 4-0 比坐・出武
で、さっき試合が終了して今はみんな女子の応援に行こうとしてるトコなんですよー。女子は男子よりも順調に勝ちあがっていて、次勝てば明日のリーグ戦に進出するという大事な試合を控えているので、男子は全員応援に回ることが既に義務づけられてるんですww。私も早くコートに行かなきゃなので、今回はこの辺で失礼させていただきますね!
以上、星和高校ソフトテニス部男女兼任マネージャーの鵜飼さゆりでしたっ♪
☆☆
「ね、言った通りでしょう? いつも通りにすれば良いだけのハナシじゃない!」
「……。いや、だって折角買ったのに着けないワケにいかんだろー常考よぉー。」
黒流戦が終わった後、観客席の一角に陣取った星和高校男子部のブルーシート・ゾーンにどかっと腰を下ろした功に向かって、私はぶつくさと文句を垂れていた。
と言うのも、1試合目の功の体たらくぶりに起因するワケで。
功は今日の試合に合わせて白いグリップを重ねて巻いていた。別にそれ自体は悪いことでもないんだけれど、それが原因で明らかにリズムや感覚が狂ってるもんだから仕方がない。私は1試合目が終わった後、次の試合には外してプレーするように言っておいたのだ。
頑なに私の提案を拒んでいた功だったけれど、自分でも握りの違和感に気づいていたみたいで、結局しぶしぶといった感じで外していた。結果的に2試合目も敗れこそしたが本人も1試合目に比べれば相手が相手だけに内容にはまあ満足といった表情だった。
「ってかアンタなんで急にグリップ重ねたワケ?」
「だって、白グリップ着けてるともうそれだけで強そうじゃんか! 実際強豪の連中を見てればわかんだろ? 奴らの大半が白グリだぜ! ほらあそこ、ね? あ、こっちも……。」
功は言うなりコートを隈なく探しては、私に『ほらね?』みたいな顔を浮かべてくる。
はぁー、あきれた。
「コラ!! まーたすぐそうやって格好ばっか気にして……アンタの悪いくせよ、それ。誰が巻こうが所詮グリップはグリップ! ちっちゃいコトばっか考えてんじゃないっつーの!!」
「でも――。」
「でも自重!!!」
「ぐ……お、鬼メグめ!」
「ハァ!? 今なんて言った!!?? コラ功! ちょっと待ちなさい! 待てェ!!」
「やーなこったー♪ もうすぐ試合だろー! 早くアップでもしに行けってのーっ。」
私にぶたれる前にあのバカはどっかに走って行っちゃいました。まったく、バカを弟に持つこの姉の気持ちを誰か、誰かわかってくれんもんかねぇー。
「あーあ、っと。よし、アタシもアップしに行かなきゃだな。オーイいっづみぃー!」
「なーにさ?? アップかえ?」
「そ♪」
次の試合に勝てれば、インターハイを懸けての2日目のリーグ戦に進める。
3年生のレギュラーは2人だけだけど、ベンチで応援してくれる他の先輩たちの分までしっかり頑張って、今私にできる事は全部出し切らなきゃいけない。
みっともない試合だけはしちゃダメだ。
広場に向かっていづみと歩きながら、私は先輩たちを差し置いてレギュラーの座についている今の自分の置かれた立場をもう一度見つめなおしていた。