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第二話『としょかん、いわかん、きっさてん』

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 翌日、僕はいつもより10分早く起きて登校した。たったそれだけのことでも随分街の風景は変わるもので、学校に向かう生徒の数は数えるほどしかいない。自分が毎日遅刻ギリギリであることがよく分かるというものである。ピークタイムを避ければこんなに道は空いているのだ。
「一応、そこそこ偏差値は高い学校なんだけどな……」
 頭の良さと遅刻者の人数に、どうやら因果関係はなかったらしい。
 そんな下らないことを考えながら僕は校門をくぐり、真っ直ぐ図書室に向かった。現在は朝の図書室開放時刻である。始業前に図書室を開放することに需要があるのか甚だ疑問だったが、まさか自分が利用することになるとは驚きだ。
 図書室の扉を開けると、すぐ目の前に貸し出しカウンターがある。開放時は常に図書委員が常駐しているスペースで、書籍の貸出や返却など図書室業務は全てここで統括されている。今朝の常駐者は見知った顔の少女だった。つい先日図書室を利用した際、お世話になった子と同一人物である。律義に『図書委員』と書かれた腕章を付け、姿勢よく読者に勤しむ姿は、今時の子にはない奥ゆかしさがあった。どうやら相手もこちらに気付いたようで、本から視線を上げお辞儀してくる。
「おはようございます。竹中さん」
 蚊の鳴くような声で呟く彼女。口をほとんど動かさずに話す姿は、一度見たら忘れられないものがあった。
「おはよう。一度しか顔を合わせていないのに、よく僕の名前覚えてたね」
 殊勝な子だ。感心する。
 彼女は照れたようにはにかむと、恥ずかしそうに俯いてしまった。栗色の髪の毛がさらりと揺れる。男に褒められただけで照れるなんて、日本はまだまだ捨てたもんじゃないと思わせてくれる貴重な人材だ。古きよき日本を継承している。
 このまま彼女を見ているのも悪くないかもと考えたところで、僕はここに訪れた当初の目的を思い出した。鞄に手を突っ込んで一冊の本を出し、彼女の座っている貸し出しカウンターの上に置く。
「これ、返却お願いしたいんだけど」
 彼女は落とした視線を再び上げると、僕の置いた本を見つめた。
「これ、一昨日の……」
「そう。一昨日に君から借りたやつ」
「お役に立てませんでした……」
 小さい声に少し掠れたものが混じる。顔色を窺うことはできないが、なんとなく嫌な予感を感じた。
「いや、君のせいじゃないよ! 本が僕に合わなかっただけって言うか」
「でも、この本をお勧めしたのは私です……」
 そう言って顔を上げた彼女の目は、カーテンの切れ間から薄く伸びる光を虹色に反射していた。どんなに鈍感な人間にもわかるほど、はっきり潤んでいる。
「いや、すごい役に立ったよ! 引きこもりの問題が昔の日本に伝説として残っているとは、驚きだったよ」
 女の子の涙に慣れるような人生を送ってこなかった僕は、焦って一気にまくし立てた。
 彼女は少し鼻を啜ると、袖から半分だけ出た指で目尻を拭う。とりあえずなんとかなったようだ。なんだかすごい悪いことをしてしまった気分になった。
「本の返却は、返却ボックスに……」
 消え入りそうな声で呟き、横を向く図書委員さん。視線を追うと、そこには達筆な字で「返却ボックス」と書かれた大きめの木箱があった。年代ものらしく、木目が黒ずんでいる。
「あぁ、ここに入れればいいのね?」
 僕が言うと、彼女はこくん、と頷いた。
「返却期間内のものは、返却ボックスに入れてもらえば大丈夫です」
 なんだかレンタルビデオショップのようなシステムだな。図書委員さんがそうだと言うのだから間違いないのだろうけど、何となく違和感を感じる。
 そんなことを気にしても仕方ないし、本人に聞いてまた情緒不安定になられても困るので、僕はとりあえず従うことにした。
 本を投函すると、中で滑り落ちている音が聞こえる。郵便ポストのような構造らしい。下まで到着したような音が聞こえると、カウンターで座っていた図書委員さんが静かに立ち上がる。彼女は返却ボックスの背面にある扉を開けると、先ほど僕が投函した本を取り出し、またカウンターに戻った。
「……返却ボックスに入れる必要なくない?」
 貸し出しカードに『済』の印鑑を押し付けている彼女は、そんな僕のぼやきなどお構いなしにどんどん返却作業を進めていく。
「これで返却完了です」
 満足げに呟く彼女を見て、僕は先ほどの疑問を内に秘めておくことにした。返却ボックスに入れることは、彼女にとって某かの意味があるのだろう。不必要なプロセスが大切なことだってある。たとえその意味を僕が一生知ることがなかったとしても、この程度の手間で済むことなら相手に合わせてあげるべきだろう。
 僕はなぜか由美のことを思い出した。確かな意志を持って自らの城に留まろうとする由美。その意味を僕たちが見出だせなくても、自らを貫き通す彼女の姿に、この子は似ているのだ。
 僕は図書委員の子に興味が沸いてきた。何か惹かれるものが、この子にはある。
「ねえ、君」
 返却した本を元の位置に戻そうとして立ち上がった彼女を呼び止めた。
「……?」
 立ち止まり、顔だけこちらに向けて首を傾げる女の子。大粒の真珠のような目が妙に印象的だった。
「名前なんていうの?」
「……私、ですか?」
「そう、君の名前」
 彼女は怪訝そうな顔でこちらを見つめた。突然名前を聞かれて警戒しているようだ。
「ほら、僕の名前も知られてることだし」
 警戒を解くため、フォローを入れておく。
「それは、貸し出しカードに書いていたから……」
「こっちも図書委員さんじゃ呼びづらいしね」
「でも……」
 彼女は言葉を詰まらせると、息を飲み込んで続けた。
「竹中さん、なにかと有名人じゃないですか」
 その一言を聞いて、やっと気がつく。彼女のネクタイの色が赤色であることに。
「そっか。君、一年生か」
 僕は生徒会の仕事を手伝うことがたまにある。別に生徒会に所属しているわけではなく、完全なボランティアだ。その関係で、高校2年に上がった際、新入生のオリエンテーションを担当した経緯があった。僕が有名というのも、恐らくその時のものだろう。
「要するに、有名人と繋がりを持ち目立ってしまうのが嫌だ、と」
 こくん、と彼女は頷く。
「そんなこと気にする必要ないよ。僕は大層な人間じゃない」
 世の中にはこんな人間もいるのかと、半ば呆れながら僕は言った。奥ゆかしいという度合いを越えている。
「それに、僕は自分が興味を持った対象には積極的に関わりたいと思っているんだ。君が関わりを拒んでも、僕は君との接点を作ろうとするよ」
 相手の緊張を解すため、意識して自然に笑う。彼女は口元に指をあて、少し逡巡してから静かに口を開いた。
「……柚葉(ゆずは)、です」
 掠れた声を掻き消すようにチャイムが鳴る。始業を告げるチャイムだ。彼女は僕を残してそそくさと本棚の陰に隠れてしまった。僕が借りた本を戻しに行ったのか、それとも恥ずかしさを紛らわすためか。恐らく両方なのだろう。自分の名前を言うだけで恥じらう人間がいるのかは疑問だが、彼女――柚葉ちゃんなら有り得ないこともない。世の中には自分の理解の範疇を越えている人間なんて星の数ほどいるのだ。柚葉ちゃんしかり、由美しかり。
 だからこそ、人生は飛び抜けるほど面白い。
「柚葉ちゃん」
 チャイムが鳴り終わると同時に、僕は本棚に向かって声を掛ける。彼女からの返事はなかったが、確かにそこにいるのを感じた。
「また今度、お勧めの本教えてよ」
 そう言い残して、僕は図書室を後にする。
 背中の方で、小さく「……はい」と呟く声が聞こえた気がした。






 昼休み明けの5時間目。本来なら体育であるはずのこの時間は、学園祭が近いということでホームルームに変更された。担当教員の花形(はながた)先生が担任であることが、その大きな理由だ。
「よーしじゃあ始めるぞー。と、言いたいところだが」
 花形先生は教室に入るなり、いつもグラウンドで聞く大きな声を出して教壇に上がった。教室で小豆色のジャージを見るのは、なんだか不思議な感じだ。
「学園祭の話をする前に、みんなに聞きたいことがある。真面目な話だから真剣に聞けよー」
 とても真面目な話をするとは思えない口調だが、教室はその一言で静まり返った。いつもへらへらしている花形先生の顔が、鋭いものに変わったからだ。先生はクラス中を見回して頷くと、静かに口を開く。
「知っている人もいると思うが、昨日の放課後、何者かによって1階の女子トイレが荒らされる事件が起こった。先生も詳しいことはよくわからんのだが、発見した生徒によると「とにかくめちゃくちゃ」だったそうだ。教員会議で話し合った結果、犯行は外部の人間によるものではないかという結論になった。そこでみんなに聞きたいのだが、昨日の放課後に誰か不審人物を見たという人はいないか?」
 教室は静まり返ったままだった。無理もない。1階の女子トイレで事件があったということすら知らなかった生徒が大半だろう。僕だってそうだ。昨日の放課後は由美に会いに行くためすぐ下校したので、事件に関しては知る由もない。
 しかし、僕には今の話の中で僅かに引っ掛かることがあった。
 先生が女子トイレという単語を出した時、ほんの少し――それは注視して見なければわからないほど僅かに、目の前に座る人物が動いたのだ。
 ほんの小さな挙動不審。しかしこの動揺は、僕に違和感を抱かせるには十分なものでもあった。
「まぁ、みんなが知っているわけないよな。話は以上だ。もし不審人物を見つけたら近くにいる教員にすぐ知らせてくれ。じゃあ学園祭の話を始めるぞー」
 先生の言葉で教室はまた活気を取り戻した。みんなの中には既に今の話なんて頭の片隅にすらない人も多いだろう。
 そんなムードの中、僕の心は学園祭ではなく、目の前の人物に向けられていた。
 ノーリスクノーリターン男、清田昭の背中に。
「真人ー、帰るぞー」
 学園祭の議題決めは予想以上に難航し、ホームルームは放課後に食い込むほど長引いた。結局話がまとまった頃には帰宅時間を30分も過ぎており、大成は待ちくたびれた様子で教室に入ってきた。
「今帰る準備するからちょっと待って」
「3分間待ってやる」
「あれー、竹っちじゃん。久しぶり~」
 聞き覚えのある声と共に、清水さんが大成の後ろからひょっこりと顔を出した。無防備に緩んだ笑顔でひらひらと手を振っている。
「竹っちって……」
 昨日までは竹中くんだったのに、いくらなんでも馴れ馴れし過ぎるだろう常識的に考えて……。
「うち今日は先約あるんだ。ごめんね~」
 清水さんは手を合わせて謝ると、前の方の席に座っている女子のところへ行ってしまった。
 ごめんも何も、一緒に帰る約束をした覚えは一度もない。相変わらず無茶苦茶な人だ。
「お前も変なのに好かれたな」
 ケラケラ笑う大成を小突いて僕は教室を後にした。






 僕ら二人には行きつけの喫茶店がある。駅前の商店街を一本逸れた場所に位置する小さなお店だ。こじんまりとした中にもマスターのこだわりが存分に詰め込まれた、まさに隠れた名店である。
 僕らがここを利用するのは、何か長くなる話がある時だけだった。とはいってもくだらない会話で必要以上に盛り上がった場合がほとんどで、真面目な話をすることは滅多にない。要するに僕らの中では、学校帰りに寄り道をして駄弁る激安ファーストフード店のような位置付けの場所だった。
「いらっしゃい。おや、君達か。よく来てくれたね」
 古ぼけた木枠の扉を開けると、マスターが笑顔で迎え入れてくれた。もうすっかり常連で、顔だけでなく名前まで覚えられている。
「いいのかい? 学校帰りにホイホイ来ちまって」
「お久しぶりです。マスターのコーヒーが飲みたくて来ちゃいました」
「嬉しいこと言ってくれるじゃないの」
 お決まりの文句に笑顔で返すと、マスターは窓際の席を勧めてくれた。僕たちは言われるまま席に着く。
「ご注文はお決まりかな?」
「俺はブレンド。真人は?」
 大成に尋ねられ、僕は少し逡巡した後にアメリカンと答えた。マスターは軽く頷くとカウンターの中に姿を消す。
「久しぶりだな。ここ来んの」
 大成は襟足を弄りながら店内を見回した。僕もそれに続く。机から置物まで、ありとあらゆる家具が独特の存在感を持ってそこにあった。そして、その中で異彩を放つガラスで作られたショーケース。中には古今東西様々な車の小型模型がびっしりと並んでいた。マスターのコレクションである。いつか来た時に自慢げに解説していたのを思い出した。
 ふと気がつくと、大成の視線がある一点で止まっていた。僕もその視線を追う。
 そこには、白い壁を切り抜くように一枚の写真が掛けてあった。黒塗りの額縁に飾られたその写真は、セピア色に染められている。中にはF1カーにもたれ掛かっている二人の男性が映っていた。
「いいだろ? あの写真」
 後ろから声がして振り向く。そこにはコーヒーを持ったマスターが立っていた。
「あれは俺の生きた証さ」
 マスターは遠い目をして写真を見つめる。僕もまた視線を戻すと、映る人物に見覚えがあることに気がついた。
「右に映っているのはマスターですか?」
 ちょうど同じタイミングで、僕が思ったことを大成が代弁する。
「あぁそうだ」
「すっげー! 一緒に映ってるのデイモン・ヒルですよね?」
「お、松本くん知っているのかい?」
「もちろんですよ! 伝説のレーサーじゃないですか!」
 熱を帯びた口調で大成が語り始めた。F1に全く興味がない僕にはさっぱりだ。
「マスター、ピットクルーやってたんですか?」
「そんな大層なもんじゃないよ。ただのしがない自動車整備工さ。遠い昔の話だよ」
 トーンの落ちたマスターの声に大成は押し黙る。再びマスターを見上げると、目尻にうっすら涙が浮かんるのがわかった。
「いや、済まないね」
 見つめる僕らの視線を感じ取ったのか、マスターは涙を浮かべたまま笑顔を作ると、机にコーヒーを並べる。
「しんみりさせちまって悪かったね。年を取ると涙脆くていけないな。胸の中がすぐパンパンになっちまう」
 それだけ言い残すと、マスターはまた後ろに引っ込んでしまった。僕らは少しだけ冷めてしまったコーヒーに口を付けた。



「で、話って何?」
 先に沈黙を破ったのは僕の方だった。
 今日この店に来た理由は他でもない、大成が僕に「重大な話がある」と言ってきたためである。大成は苦虫を噛み潰したような顔でカップを口に運ぶと、残りを一気に流し込んでこちらを見た。
「聞いても驚かないって約束できるか?」
「わからない。内容次第」
「だよな。お前ならそう言うと思った」
 大成は短く息を吐くと、眉にぐっと力を入れた。自然と僕も身構えてしまう。
「あのな、実は俺、デートに誘われたんだよ」
「なんだ、そんなことか」
 思わず呆れた声が口から出てしまった。どっと肩の力が抜ける。僕は身構えるのもアホらしくなって頬杖をついた。
「なんだよ。俺的には世界を震撼させるくらいの大ニュースだぞ」
「そうか。存分に震撼させてくれ」
「もうちょっとくらい驚けよ」
 大成は口を尖らせて、ふて腐れてしまった。
「そんなこと言われても……」
 大成は贔屓目を抜きにして見てもモテそうな部類に入る方だ。身なりにだって気を使っているし、スポーツも得意だし、何より女の子と自然に話す。別に本人がアクションを起こさなくても相手が寄ってくるような、そういうタイプの人間なのだ。女の子に声を掛けられることくらいあるだろう。
「じゃあお前は女の子に誘われたことあるのかよ?」
「いや、ないけど」
「だろ? 男から誘うことはあっても、向こうからって中々ないじゃん。これってモテる男の始まりじゃないかな」
 確かに。もう少し年齢が上がればまだしも、多感な高校生時代に、付き合ってもいない女の子からお誘いを受けるというのは珍しい。
「ちなみに相手は誰?」
「清水由香里」
「うわぁ……」
 何と言うか、普通過ぎる。驚きも目新しさもない。
「なんだよ」
 興味がないのを露骨に顔に出してしまったらしく、大成は不機嫌そうに呟いた。
「清水さんなら仲も良いし、いいんじゃない? 僕としてはあれだけ仲良くて今更って感じだけど、当事者が楽しむことが第一だしね」
 一応フォローを入れておく。僕の言葉に大成は面食らったような顔をした。
「真人、お前少し勘違いしてるんじゃないか?」
「……え?」
 大成は深く溜息ををつくと、僕を顎で指して答えた。
「お前も行くんだよ、真人」






 大成の言ったことをまとめると、それは実に単純明快な話だった。清水さんが明後日の土曜日に2対2で遊ばないかと大成を誘い、人数の埋め合わせに僕が狩り出されたと言うわけだ。
「それって、デートって言うの?」
 話を聞いて最初に頭に浮かんだのは、そんな疑問だった。
「どう考えてもダブルデートのお誘いじゃねーか!」
 大成はすっかり盛り上がってしまっているようだった。デートという響きに憧れるあまり、自分を無理矢理納得させようと信じ込んでいるようでもある。どちらにせよ、今の大成には何を言ったところで通じない気がした。
 そもそも、どこからがデートなのかという定義がわからない。
「まぁ、ダブルデートをすることになったのはいいとしよう。で、その相手がどうして僕なの?」
 大成は2杯目になるブレンドを意味もなく掻き混ぜながら僕の顔を覗き込んだ。。
「清水に指定された」
「……なんで?」
 意外だった。
「俺が知るわけないだろ。清水も知ってるからじゃないか? それとも、案外清水の狙いが真人だったりしてな」
 大成はいやらしくニヤつくと、掻き混ぜる手を止め、ブレンドに口をつけた。
「それはないだろう」
 昨日一緒に下校しただけでそこまで気に入られてしまうわけがない。大方、大成狙いの清水さんが埋め合わせに適当な僕を指定しただけだろう。つまり、僕ともう一人の女の子は脇役なのだ。恋のアシストと言うと聞こえはいいが、要するに不要分子なのである。
 なるほど。そう考えてみれば、デートという表現もあながち間違いではないように感じとられた。
「やっぱりダメか? 真人の休日の予定を奪うことになっちまうしな。嫌なら正直に言ってくれ」
 大成は急にしおらしくなった。暴走機関車のように見えて、友達思いなやつなのだ。
「もちろん良いに決まってるだろ」
 僕は満面の笑みで快諾した。自分の休日が無駄に終わることになるが、無駄なことは嫌いじゃない。それに、世の中には『意味のある無駄なこと』だってあるのだ。
「急に手の平を返すとは、怪しいな。お前、もしかして清水から告られるとか考えてるんじゃないだろうな?」
 大成は水を得た魚のように、また勢いよく話し始めた。感情の起伏が激しいやつだ。
「そんなわけないだろう……」
「よし、じゃあどっちが告られても恨みっこなしな! うぉー、デート燃えるぜぇ!」
 勝手にしてくれ。
 僕は心の中で呟き、冷めきったアメリカンを流し込んだ。
4, 3

先週駄医学 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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