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そして一日目

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学生の本分は学問である。
たとえ何かのベテランだろうが、それはそれ、これはこれ。
いたってノーマル…いや、それ以下の生活でもなんら不思議はない。
特に大学生は教材等への出費が多い。よって金銭的にはつらい。住居も狭い。暖具もコタツしかない。
しかしなんら不思議はない。不思議はない。不思議はないぞ!

「…お邪魔します。」
玄関脇で意味不明な言動をする俺を横目に、先述の少女、チサトは我が家への第一歩をすんなりと終えていた。
よほど理解力があるのか、無関心なだけなのか。
多少片付けてあるものの、生活感あふれる雑多な1R9畳の賃貸物件はこういう来客に耐えうる代物ではない。
そもそもメールで2、3回やりとりしただけで押しかけてくるなんて想定外だ。
都合のいい展開なんてものは妄想だからこそ楽しいのである。

スルスル…

ためらいもなく脱ぎ捨てられるコート、シャツ、そしてスカート。
セミロングの黒髪に見え隠れする白い素肌。
うむ。幼女の脱衣妄想は確かに楽しい
…って

「いやいやいや、ちょ、ちょっと待て!」
偉人は言った。結果より過程が大事だと。物事には順序と言うものがある。
俺は白いシースルーのアンダーシャツ、いわゆるベビードールに手をかけていたチサトを思わず静止した。

「だって、風邪ひいちゃうし」
あれ?正論だ。

「お風呂貸してもらえますよね」
うむ。これも正論。勿論OK。

「じゃぁ一緒に入って説明してください。色々と」
説明は必要、確かに正…

「いろ…いろ?」
「はい、色々。」
真顔で。下着姿の少女が色々教えてくれと言う。
風呂の中で。一緒に。俺と?
誰が?この子が?いいの?俺が?
頭が多少パニックだがつまりこれは。
これはまさに、い、いただきまーすなシチュエーションじゃないか!
理解した瞬間、高鳴る鼓動、荒ぶる鼻息。
脱衣所に導くために伸ばした手でさえ、触れた一瞬、チサトの肌の感触にびくつくくらい。
俺は興奮していた。高ぶっていた。神に感謝していた。
さらば、俺の長かった日々よ!
さらば、俺の中の少年!
「シャンプーはそこだから。え?うん、狭いしさ。俺は後にするよ」
――現実は厳しい。
この世の男は二種類に分けられる。即ち、据え膳を前に飛び込めるか、足踏みをしてしまうか。
俺は前者だとばかり思っていたが、それはエロゲの中だけの話だったらしい。
厳密に言えば、極度の緊張のためか、俺のアレがアレしてくれなかったのだ。
さすがにそんな情けない姿を自分より年下の女の子、しかも神調教だのベテランだのと吹聴してしまったチサトに見せるわけにはいかない。
男の股間、じゃない、沽券にかかわる問題だ。
そんなこんなで、おれは泣く泣くせっかくのチャンスを投げ捨てたのだった。

「この展開は考えてなかった」
コタツの中。ゴロン、と体を伸ばしてつぶやいた俺の一言は、すぐにシャワーの音でかき消された。
あせることはないんだ。携帯の時計は、まだ19時になったばかり。
チサトの持っていた、あの大きなスーツケース。さっき持ってやったら結構重かったじゃないか。
きっとあれには着替えとかが入っている。エロ雑誌の家出少女によくあるパターンだ。
体目的の男と、宿を求める少女との利害関係の一致。
つまり一晩は猶予がある。猶予どころか、今強引に押し入ったってチサトは断らないかもしれない。
3月といってもまだ夜は寒い。今からほっぽりだされて行くあてなんて、あいつにはないはずだ。
きっとチサトだってその点は重々承知の上で、自分から誘ったのだろう。
なのに男が二の足を踏んで後退してしまった。内心で笑われたのが容易に想像できる。

「…くそっ」
自分のふがいなさ、さっきから牛耳られていた様。全てに憤って、俺はどうすることもできず寝返りをうった。
だんだん、チサトにも腹が立ってくる。そういえば景気よくシャワーの水が垂れ流されているようだ。
あの程度の男だ。遠慮なんて要らない。なんでも使えるだけ使ってしまえ。
そんな風に考えてるんじゃないだろうか。
そろそろ飯の時間だ。あの様子だとチサトもまだすませてはいないだろう。
それも俺が用意すればしたで、感謝もなく食い散らかされるのがオチ、か。

「…プレイプ」
「レイプレイプレイプレイプレイプレイプレプレイプレイウレーイプ!!!」
覚醒した!多少舌は噛んだが覚醒した!
俺は某デスメタル神の呪文を10レイプ/秒のペースでとなえつつ全裸になって立ちあがり、4足歩行の構えを取った。
野獣と化したのである。この姿勢からの突進は空気摩擦で火花が散るほど凄まじい。この前格闘漫画で読んだから間違いない。
体中がギンギンになっていくのが分かる。
覚悟しろよチサト。無防備な状況に自分を置いたお前が悪いんだ。大人の怖さってやつをたっぷり教え込んでやる。
そもそもM奴隷に墜としてやる約束だ。詫びさせる、跪かせる、命乞いをしろ、小僧から石を(ry

――デムッ!
決意を秘めた俺の後ろ足が、豪快に、かつ下の住人から文句が出ないくらいの微妙な力加減で床を蹴った。
何もかもを貫く勢いで浴室のドアを開け、

「なんだよ…その跡…」
立ち上る湯気に隠れることもなく。
「麻縄、ですけど。」
はじめてみたチサトの裸。
それはその年の少女が負えそうにないほどの、深い、ふかい傷。
日常的に行われてきただろう虐待の印が、そこにはあった。
3, 2

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