広大な北アメリカ大陸。
一台のアメリカンバイクが、ルート69を爆走していた。
ドルゥゥゥンン
バイクはとあるルート69沿いの、農家の前で、ライダー特有の急ブレーキで止まった。
ヘルメットを脱ぐと、そこから、長いブロンドがふわりと流れ落ちてきた。
バイクから降り立ったのは、革ジャンを身に纏った中年女性だった。
「アイム、ホーム!!」
観音開きの農家独特の扉を勢いよく開けると、中年女性は勢いよく言った。
「オォ!ディゾン、お帰り。久しぶりの町はどうだったかい?」
キッチンで料理をしていた老婆が、玄関まで来た。
相好の崩れたその顔は、まるで優しすぎる魔女のようだ。
「マミィ!ハイスクールの時の友人、ローズとマリーに会ったわ!そんで、ちょっとおしゃべりしすぎて遅くなっちゃった!」
「まぁまぁ、二年ぶりにこっちに帰ってきたんだから、積もる話もあるわよね」
老婆の目尻の皺がより一層深くなる。
「でも、家族との時間も大切にしなきゃだめだよ。あれでもパピィは寂しがってたのさ」
「うん…。わかってる。だって『もう、病気でだめかもしれない!』って嘘までついて、私を日本から帰ってこさせたんだもの」
中年女性の顔が悪戯っぽく、笑顔になる。
「それは許しておやり……。パピィは本当に寂しがっていたんだから」
「うん。わかってるよ。だから、今日はパピィに……特別なことをしてあげようと思って……」
キッチンの奥の部屋では、丸々と太った老人が、ベットに横になって本を読んでいた。
コンコン
扉が乾いた木の音を立てた。
「入るよ、パピィ」
扉の向こう側からそう聞こえたと思ったら、ゆっくりとドアノブが回り扉が開いた。
そこには中年女性と老婆が立っていた。
「オォ、どうしたんだい、ディゾン……」
老人は鼻の穴をヒクヒクとさせて、その中年女性を見上げた。
「実は今日……、小さいとき……いつもヤッテたコトを、マミィと一緒に、パピィにしてあげようと思って……」
それを聞いた、老人は、頬を紅潮させた。
「そ、それは……。だがしかし、ワシは病気でベットから動けんよ」
「うん。そう言うと思ったから、今日はパピィ、そこから動かなくていいよ。寝たままヤろう」
「だが、母さんが寝たままってのも許さんだろ……」
老婆が中年女性をゆっくりと押しのけて、部屋へと入ってきた。
「いいのよ、あなた。今日はここで、あなたは寝たままでいいから、楽しみましょう」
それを聞いた、老人は唇を吊り上げた。
「あ、ありがとう。本当にお前達を心から愛しているよ」
「じゃぁ、始めるよ……パピィ」
そう言うと中年女性と老婆は、老人の寝ているベットへと近づいていった。
「あぁ、すごいなぁ。ディゾン……。ディゾンの密は甘くて美味しいよ……」
老人は舌をピチャピチャと鳴らして、嬉しそうに頬を上気させている。
「あっ……、パピィったら……」
「あ、あたしのも……」
老婆がそう言って、中年女性のそれを押しのけて、自分のそれを、老人の顔の前へと突き出す。
「んぅーん。母さんのも甘くて美味しいよ。……ピチャ……ピチャ」
老人は老婆のそれを愛おしそうに、しゃぶる。
部屋中には、まるでむせ返りそうになるくらい、甘ったるい匂いがたちこめている。
そんな部屋の中で、老婆と中年女性は交互に、老人へとお互いのそれを差し出す。
ピチャ、ピチャという淫靡な音が部屋中へと響きわたる。
「あぁ……あぁ。本当に…本当に美味しいよ」
唇をネッチョリとした液体で、テカらせながら老人は言った。
「あぁ、本当に美味しいよ……二人の作ったハニーパイ」