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第一章『のらりくらり』

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『祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり…』
繁栄もそう長くは続かない、あとはお落ちてゆくだけという
意味の言葉だが今の俺からすれば『諸行無常』どころか『諸行白状』に思えてくる
このみなれた風景ともあと少しでお別れだ
俺はあと、数秒で死ぬだろう、それが死神との約束だから…

あと3秒、2秒、1秒

ガラガラ ピシャン
勢いよくドアが開けられ、死神が俺の部屋に入ってきた
「あらご機嫌麗しゅう、今日何の日かわかるかな?」
めんどくさいので俺は黙っていた
「わかるかな?」
しつこさに耐えかねて俺は答えた
「どうせ俺の誕生日だろ、まったく白々しい野郎だぜ」

「あらぁ~よくわかってるじゃない、えらいえらい
 お母さんね、前からそれとなく言ってたと思うんだけど
 あなたにはこれから一人立ちしてもらいたいの」

「ふざけんじゃねーぞ、ババア!
 親には子供を養い育てる義務があるんだっ!」
「あーら、あなたもわかってますよね?
 もうあなたは法律上成人、立派な お と な なんですよ」
わかっていた、こうなることはわかっていた…
だが俺には自宅警備をまっとうするという大切な友(スレ友)たちとの約束がある!
それを破るわけにはいかなかった、

勝てないかもしれない、それでも俺はあきらめない!

俺は最後の手段に出た
「わかった、今から俺オンラインで株をはじめるよ!
 今うちにあるお金を何百倍でも何千倍にでもしてあげるよ!
 実際にやったことはないけどゲームだとすごいんだよ!すごいんだよ!
 それに母さんも、テレビで見ただろネオニート特集!あいつにできるなら俺にもできる!
 きっときっと億万長者になってきっときっと六本木ヒルズに住める日が来るっ!!!」

死神に俺たちの思いは届かなかった…

「おかあさんね、なにも意地悪で言ってるんじゃないの
 あなたには広い世界を見てもらいたいのよ、ねっ(ハート)」
そういうと死神は俺の襟首をうしろからつかんだ
「あsdfghjkl ;;」

「さあ、飛び立つ時よっ!」

そういうと死神はおれを勢いよく窓の外にほうり投げた
…飛んだ、俺は今空を飛んでいるん、なんてすがすがし…

     ドグシャッ

我にかえった俺は、事の重大さにようやく気づいた
俺の今まで築いてきた城が一瞬にして消えてしまったのだ
棚いっぱいの俺の悲しみや勇気のかけらたち(ゲーム)
小さいながらも従順で無口な俺の嫁(フィギア)たち
そのすべてを失ってしまったのだ
そらを飛んだ代償がこれではあまりにも大きすぎる…
でも、すこしすがすがしい気分でもあった
逆に考えれば今までのしがらみから開放されたのだと
生まれ変わった自分、また新しい自分
新しい一歩を踏み出せるのだと、そう思うとなんだか
胸が軽くなったような気分になった
そしておれは思った
「あーあ、世界なんて終わればいいのに、みんなしんじゃえ!」








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異臭で目を覚ました…
「こんにちは、だいじょうぶ?」
目を開けると、そこにはポニーテールで制服姿のかわいい女の子の姿が…
ありえない!ますますありえない!ここは天国なのか?
我に返った俺は悟った
彼女は道路で大の字に寝そべってる俺を
ただ心配して声をかけて来たのだ、当然といえば当然か…
「だいじょうぶ?」
「いや、こうやって空を見てると嫌なこと全部忘れられるんだよ」
もちろん嘘だ、自宅警備を解雇された途方にくれてるなんて口がさけてもいえなかった
「私も空を見る」
そう言うと彼女も大の字になって寝そべった
それから、どれぐらいこうしてだろうか、
2人で道路の真ん中に寝そべった、涼しい風が心地よく吹き抜けた
夕焼けの空が真っ暗になるまで空を見ていた…

俺は夜が来るのを始めてみた

「なあ、いまさらなんだけど…」
「いまさら?」
「お前なんでこんなことしてるんだ? 名前は? 年いくつだ?
 この辺じゃ見掛けない制服だけどいったいお前どこから来た?
 俺に何か用があるのか? それになんでそんなに臭いんだ?」
彼女は固まった…まるで色を失った白黒写真のように、しばらくするとなにかぶつぶつと言い始めた
「わからない…わからなくない…こたえられない…わからない…わからなくない…
 私は悪い子…わからない…私は悪い子…ぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽん
 ぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽん
 ぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽんぽん」
彼女はものすごい勢いで自分の頭を叩き始めた
「なにやってるんだ?やめろ!」
俺は彼女の手をつかんだ
「はなして、はなして、私は悪い子!」
俺は悟った、彼女はキ…頭のネジが外れているのだと
「悪い子じゃない、悪い子じゃないから頭を叩くな」
「うんわかった」
…どうやら物分りだけはいいらしい
まず名前だけでも聞いてみることにした
「君、お名前は?」
「お父さんが言ってたよ『名前を聞く前にまずは自分から名乗れ』って」
…コイツおちょくってるのか?
「それもそうだな、俺はぁ……太郎だよ!」
「太郎ちゃん?へんなの~ぽんぽん」
今度は俺の頭をなでるように叩いた
ちっ、チャンづけかよ…しかも俺をガキ扱しやがって…
「で?お前の名前は?」
「お前じゃないよ、私はなんばだよ、あと033ね、お父さんは私のことを『アイ』って呼ぶんだよ」
「………………………………………………………………難波 アイ?」
とりあえずわかるとこだけ抜き出して聞きかえしてみた
「なんばあい?アイはアイだよ、太郎ちゃんは「お姉ちゃん」ってよんでね」
…俺は悟った、こいつはわざとキ…頭のネジがぶっ飛んだふりして俺をからかっているんじゃないか?
だがまて、考えてみろ、なぜわざわざそんなことをするんだ?
まさかこいつ俺に気があるんじゃ?いや俺を好きになる奴なんて特殊な趣…
「太郎ちゃんの誕生日はいつ?」
「……へ?」
あまりの唐突な質問に俺は少し戸惑った
「太郎ちゃんの誕生日はいつ?」
「今日だけど」
「今日は7月4日です今日は金曜日です
 50年後の7月4日は木曜日です
 232年前の7月4日にはアメリカ独立宣言公布されました
 675年前の7月4日には鎌倉幕府が滅亡しました」
………本物なのか?
とりあえず俺はこいつを交番につれていこうと思った
3, 2

――――――― 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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