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『夢のような星』

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「どうやらこの星でもなかったようだな」

かなり高性能な宇宙船の中で、船長は助手にこう言った。

「ええ」

助手はため息をつきながら、うんざりしたように応じた。

「位置的にこの星で間違いなかったはずなんだが」

「船長、もうやめましょう。 自然に満ち、空気は新鮮で、生物活動も活発な、
そんな夢のような星が存在するわけがありません。
いくら船長が偶然見つけたその本にそんな星の記録が書かれていようとも、
それはデタラメに決まっている」

「・・・」

「それにこの星、地球と住民は呼んでいましたが――とにかく空気が汚い。
これならまだ我々の母星の方が空気はきれいです。
それに、この星は妙な格好をした生物が支配していて、大地も川も汚れている。
その本に書かれている記録とは、空気も、川も海も、生物の数も、何一つ一致しないじゃないですか。
位置的に同じなら、やはりその本はデタラメだったんです」

「むぅ・・」

「僕はその本を信じて、長い年月あなたと旅をしてきました。 ですがもう限界です。
僕には妻も子供もいます。これ以上旅を続けることはできません」


「・・分かった」
「君の言うとおりだ。この本に書かれた夢のような星なんて、たしかに信じられない。
実は私も疲れてきていたところなんだよ。 もう我々の星へ帰ろう」

「そうしましょう。それが一番いい」

「この本によると位置はこの辺りだったからな。
実際に在ったのは醜い星だった。
やはり、この本はデタラメだったんだ」

「そうでしょう。
  ところで、その本はいつ書かれたものなんですか?」


「まだ最近だよ。 6000年前だ」
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