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暗号文

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俺は妹が好きだ。
妹は姉が好きで。
姉は弟が好きで。
弟は俺が好き。
従兄は従妹が好きで。
従妹は、誰が好きなんだ?
こういってはなんだが従妹だって多分変態なはず。
もしかして、いや。ないな。
ない…………よなぁ?
「おはようございます理さん」
「えっと……おはよう聖」
俺が居間に行くといつもなら父と父しか見ていない母だけが居るはずだったのだが。
何故か聖が居た。
「兄さん……その女は何でここに居るのさ」
「お前はもう少し丁寧に喋れないのか」
弟が何時の間にか立っていた。俺の後ろにだ。
正直ちびりそうになった。まぁ、そんなことはどうでもいい。
何故ここに聖がいるかだ。
「理さん。いいんです。実はですね父と母がたまには息抜きもどうだといって夏休みなのでここに来させたんです」
「ほー。しかし家には今父さんも母さんも居ないぞ」
「ええ。驚きました。けど私こう見えて家事得意なんですよ」
にっこり笑って腕を叩く聖。普通上腕をたたきながら家事が得意って言わないと思うんだけど。
「ところで京輔兄さんはどうしたのさ」
従兄の事を聞こうと思ったら弟が先に聞いたので黙っておこうと思ったが丁寧な口調にはならんのかね。
「さぁ……? 私が起きたときはまだ居たと思うんですけど」
「ふーん」
弟はどうやら従妹の事が嫌いなようだ。
しかしほんとにあの人はどこに言ったんだろう。
俺は従兄の考えていることがよく分からない。あの人は手に入れたいものは何してでも手に入れる人だ。
それでいて引き際を知っていて狡猾で大胆不敵。
なんか物凄い性格だと思うぜ俺は。
「そういえば、なんで伯父さんたちは居ないんですか?」
「ああ。それね。実はさー」

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遡る事一週間前。
「実は今日から父さん夏休みなんだ」
それは父さんがいきなり切り出した。母が居ないときにだ。
「ふーん。で?」
今思うと弟は皆嫌いかもしれない。
というか口が悪いのか? 
「でだ、皆で旅行に行こうと思っているんだ。どうだ?」
な、なんと! 父さんまさか母さん抜きでやろうとでも思っているのかい?! 
無謀だよ! いや、被害を受けるのは俺たちかも知れん。
「そうだね兄さんが一緒に行くならいいよ」
「私と一緒に行くのよ!」
「じゃぁわたしも行くー」
皆乗り気(?)だね。まぁおれはどうでも良いけどさ。
というか行かないけどさ。
一回だけ父さんと一緒に遊園地に行った事が在る。
帰った後は地獄でしたね。
父さんが居る間は母さんニコニコしてるんだ。けど父さんが会社に行った途端……ま、まぁいい。
この話題はなしにしよう。
「よし、じゃあ皆で行こう」
「「「おー!」」」
次の日父さんと母さんが消えた。
「てっわけだ」
「はぁ。なんか壮絶ですね」
これだけでそこまで分かるとは流石だね!
「兄さんそれより今日一緒にデートしない?」
「で、デート!? 理さん!?」
「違う。誤解だ。よく考えろ」
聖は深呼吸を何度かした後よろよろと椅子に座った。
深呼吸した意味があんまりなさげだったな。ていうかさっきから弟がまとわりついてうざい。
「やめなさい。はなれなさい。もどりなさい」
「やだよー兄さんと僕は一緒にいたいんだもん」
ときどき考える。これが妹だったらよかったなぁと、ね。
ていうかこのまだと聖に誤解されつづける。
仕方ない。脱出を試みる。
「ああっ!!」
隙を見て弟から離れた後全力で自室へ入る。
素早く鍵を閉め予備の靴を履いてベランダから屋根に移動!
ふはははは。対弟用に用意したこれが役に立ってよかったぜ。
「あばよ! とっつあん」
ドガァァァン!!!!
物凄い音がして振り向くとドアが木っ端微塵になっている!?
ていうかなんか部屋の壁にヒビが入っていて天井からなんかくず的なモノが落ちてるんですけど。
一体何を使った弟よ。ええい化けものめ。
ん? あれはか、隠しカメ……いや。何も見ていないぞ俺は。それより問題は弟だ。
「待って兄さん! 愛の前には如何なるものも邪魔できないんだよ!」
「そんなに一方通行の愛で壊されてたまるか!」
格好よくジャンプ! なんかしません。置いてあるはしごを使い下に降りた後はしごを倒しておく。
「今度こそさよならだ」
「はっ! 甘いよ兄さん。愛のために戦う戦士何だよ僕は。愛の戦士なんだ!」
弟はそう言って屋根からジャンプした。
受身だがなんだか知らんがノーダメージだ。
「ば、化け物め!」
「ちっちっちっ。僕は今愛の戦士ラブアンドラブ!」
んなもん知るか。馬鹿だ。今更だが改めて思い知らされた。あいつは真性の馬鹿だ。それでいて変態だ。
俺は全速力で走る。これでも一応陸上部だったんだ! 過去形だけどな。

無事逃げ切った俺は公園で一休み中だ。
プルルルルルル
電話だ。いや、メールだけど。
聖からだ。
件名:暗号文
あーえっと。逃げ切れましたか?
いままでちょと私変でしたね。理さんは普通ですよね。
しかしそれにしても用意周到ですね。
ていうか部屋が壊れてましたけど何か在ったんですか?
色々大変そうですね。私が掃除しときましょうか?
まぁその、なんていうか頑張ってください。応援します。
スキー今度一緒に行きましょう! 今夏ですけど。
解けましたか? ちょと恥ずかしいです。
「なんじゃこりゃ」
意味わからん。暗号文?
なんつーか普通っぽい気がするけど。ちょと変な感じの文章ってだけで。
まさかこの中に弟の向っているところが記されているとか?
うーむ………・…………わからん。
「一応返信するか? まぁいいや」
はぁ。今日は暑いなぁ。
「兄さんみーつけたー!」
「げげっ! 見つかった」
全く。なんかいつもの俺らしくない一日だ。
まぁ、逃げ切らないと何されるかわからんしな。
拘束されて体要求されるかもしれないし。
す、末恐ろしい弟だ……。
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