●8週目
9月も終わりが近づいた。
“暑さ寒さも彼岸まで”
そういう割にはまだまだ暑い日が続いていた。
月頭の肌寒さが嘘のようだ。
温暖化との声がさかんに聞こえる。
僕の心も温かくなればいいのだが、財布同様寒いまま。
なんて、ネガティブになるのは僕の悪い所だ。
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くみが出張から帰ってきた。
さんたマンションのいつものメンバーで迎え入れる。
久々のチャットはいつもより楽しかった。
そして僕は或る決意を胸に秘め、くみをメッセに誘った。
ぼく「ちょっと良い?」
くみ「いいよー」
ぼく「とりあえず無事に帰って来てくれて安心した」
くみ「ありがとう。やっぱり優しいね、ぼくは」
ぼく「そんなんじゃないよ、心配性だから」
くみ「ぼくの方も大変だったみたいだけど」
ぼく「ううん、ぼくの方はもういいんだ。
それよりちょっと変な話になるけどいいかな」
くみ「うん? どんな話?」
ぼく「ぼくが君を好きになったって話」
くみ「あははは、本当に?冗談が本気になっちゃった?(笑)」
ぼく「僕は本気だよ。
出張に行くって聞いた時、すごく寂しくなって……
なんか二度と会えなくなるんじゃないかって心配だった。
それで、この想いを伝えずに別れるのは嫌だって思ったから
今日話したんだ」
くみ「そうなんだ……
ありがとう、そんなに思ってくれているなんて」
ぼく「やっぱり変だよね? 会った事もないのに……」
くみ「ううん、嬉しいよ」
ぼく「そう? 良かった……。告白なんて緊張するよ(笑)」
くみ「あははは、無理してるんじゃない?(笑)」
ぼく「そんなことないって。笑わないでよ(笑)」
くみ「ごめんね、でもぼくも笑ってるよ(笑)」
ぼく「あはは、そうだね(笑)」
返事は貰わなかったけど、僕の気持ちが通じた事が無性に嬉しかった。
メッセを閉じた後、心の中でガッツポーズをとる。
どうやら今年の冬は、暖冬になるようだ。
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週末、さんたの部屋には僕とどらみが居た。
どらみは「一度オフ会でもしてみたいね」と言っていた。
ぼくは「そうだね。皆仲良くなったから、皆で遊べば楽しいだろうね」と返しておいた。
くみと会う日を想像する……。
それはいつになるだろうか。
彼女はどんな容姿をしているんだろうか。
優しい性格を投影した、美しい姿を思い浮かべる。
そして、告白した日の事を思い出し、一人浮かれていた。
僕はもう、迷わない。
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