ジーク、シグルス、二人の勇者達は最後の戦いに向かおうとしていた
「その太刀と槍は・・!!」
禍々しく輝く、その武器は伝説の邪龍、ミラボレアスのほかにない
伝説と言われているが、それは存在する
現在でも忘れられた王国の城や、活火山、塔の最上階など複数確認されている
「フフッ・・・この武器は私達の歴史であり、工房の誇りだ」
ただの輝きではない、邪念、悪意に満ちた、呪いのような、太刀と槍
「さて・・そろそろ私達は行く、息子に言っといてくれ、父は神を殺して逝った、とな」
「お前らしくないな、いつもなら必ず希望が有る様な事を言うのに」
「希望は私達の子ども達さ」
「・・・そうか」
目の前には、白く輝く邪龍が及ぼした災厄が広がっている
塔の最上部では今でも雷が鳴り響いている
塔にはあまりモンスターは居ない
異常な雷、悪意に満ちた叫び、一般人ならそのうめき声を聞いただけで死んでしまう
モンスターにもそれは例外ではない、一部の蛇竜などが居るだけだが
それは二人の勇者にとっては一般的なランポスやギアノスと同じ程度なのである
「着いたな」
塔の最上部、白き邪龍が目の前に居る
長き年を経て生えたであろう立派な髭を持っている
悲鳴の様な声、指先が痺れる感覚に似ている
ただの飛龍ではないことはすでに承知している
奴は神だ
「では決着を着けようか、ミラルーツと謳われた白き邪龍よ」
赤き血に染まった鎧に身を包んだ二人が白き邪龍に戦いを挑んだ
二日後
傷だらけのシグルスが帰ってきた、ジークは帰ってこなかった
シグルスは何も話さない、一つの剣、鱗、翼、眼を持ち帰ってきた
恐怖に満ちたその顔には、以前の勇気など微塵もなかった
シグルスはその二日後、息を引き取った
最後まで何も話さず、何かに呪われたように
それから約三ヶ月後
「なあ父さん、俺そろそろハンターになろうと思うんだ」
「やめておけ」
「なんでだよ!もう13歳だぞ!俺にだってイャンクックの一匹くらい倒せるさ!」
「お前クックを舐めているな・・・?」
「あぁそうさ、あんなアホみたいな顔した鳥みたいな奴」
バシッ
「何するんだよ父さん・・!」
「お前は強いだろうなぁ・・・しかしモンスターと向き合う精神が駄目だな」
「なら実力で証明してみるさ!今からクックを倒してくるから待ってろよ!
証拠として鱗とくちばしでも持ってきてやるよ!」
「調子に乗りやがって・・いいだろう、後悔して帰ってくるなよ」
少年は走り出した、一本の宿命の太刀を背負い、森丘に向かって
練習用にと少年に貸していたら、いつのまにか少年の物になってしまった
とある勇者の意志、工房の誇り
抜群の切れ味と威力を持つ太刀、『天上天下無双刀』
紅き邪龍の体から作られる、その禍々しい輝きを放つ刀身は
少年に自信と勇気、そして強すぎる確かな力を与えた