あたまがまっしろに
なって
kる』
……
ぼくはため息とともにブラウザを閉じました。
そして回想します。
昨日の夕刻、ぼくは彼女に頼まれました。
『その……知識というやつを……』
教えて欲しいのだと。
ぼくは答えに詰まりました。
だって!
そんなこと、いままで想いつづけていた人の前で!
できるわけありません!
できるやつは相当ぶっ飛んでます。MONOHONのHEN☆TAIです。
なので。
ヘタレなぼくはヘタレなりに脳髄をギュルりと回転させて、ある提案をしました。
「い、いいけど、ひとことでは、話しきれない」
「……ま、それはそうかもね」
「だから」
「?」
「三日、待ってて欲しい」
彼女は小さな首を傾げます。
ぼくはいいます。
「三日後に、そういう内容の小説を書いて、もってくるから」
そして急いでカバンをつかみ、教室を出て、あとはもうめちゃめちゃに走って家にたどりつき、パソコンを立ち上げてVIPに行って、スレを立てたのでした。
【非リア充が】自慰小説の書き方教えてくれ【訊く】
うん。
これでよし、と。
小説、というか文章すらまともに書いたことのないぼくは、VIPのみんなを頼ることにしました。
VIPPERならなんとかしてくれる。
仮子さん(仮名)に小説を書く! と宣言したのは、たぶん彼女がまっしろけの本を読んでいたから。
なぜか知らないけど、その本があまりにインパクト強すぎて、とっさに言ってしまったんだと思います。
だけど前述の通り、ぼくは小説なんて読みもしないし、ましてや書きもしません。
助けて! VIP王国の勇猛果敢かる戦士たちよ!!!
んで、そこまで思いついてスレ立てたのが午前二時。
内容……今日あったあの出来事を思い出せる分だけ思い出して、書き込む。
それから八時まで寝て、学校行って授業受けて、居残りしないで家に帰ってくると、スレが奇跡的に残っていた。
小説!
ファオ!!
期待して読んでみると、その全貌は……ッ!
リレーしてました。
カオスでした。
笑えるくらいカオスでした。
要約するとこうでした。
あのあと仮子さん(仮名)が手錠を出して、ぼくを束縛してSMプレイに興じるかと思いきや、何故か完結。はやっ。
だけどなんか知らんけど、平行世界のぼくがいて、仮子さん(仮名)を押し倒そうとする。そのとき現れた第二の仮子さん(仮名)! いやそれは第一の仮子さん(仮名)らしいけど。
んで、ぼくは頭を殴られたらしく、徐々に意識がフェードアウト。
……
こんなもん見せられますか!
やばい、気持ちは凄い嬉しい。
涙でディスプレイが見えないほど。
書いてくれたやつ本気でサンキュー!
だけど。
その内容を全然活かす余地がないってところに、人は無常であるという越境者の声がひびいたんだぜ……
やっぱVIPPERに頼まないで、自分でやろう。
そう決めた、十五の秋。
けれどもやはりお手本がないといけません。
素人が素人なりに頑張っても、たいした結果は出せません。
「あ!」
都合よく姉が、同人活動をしているということを思い出しました。
「ふうん。小説、ねえ」
姉はその綺麗なブロンドの髪を書き上げ、ぼくのひとみを見据えました。
「確かに夏コミは終わったけど、今は部誌の編集で忙しいのよ」
彼女は大学で漫研に所属しています。
昔は小説も書いていたそうなので、お願いしてみたのですが、否定的な答えにがっかりします。
「そこを、なんとか」
「無理だってば。……ちなみに、どういうジャンルの小説を書くの?」
「自慰」
「は? G?」
「いや、つまりさ、自慰。あの、オナニー」
「は???」
「教えてくれっていわれてさ、口に出すのはつらいから、小説で伝えてみようかと思って」
そのとき姉は、
(え? 何それ? オナニーを教える? 誰に? いや女子じゃないよね。この非リア充にそれなんてエロゲ?みたいなイベントがあるわけないし……だとすると……………同性か)
という顔をしましたが、ぼくはまだ何も知らない子供だったので、その表情が何を物語っているのか知りませんでした。
一拍の沈黙の後。
「お姉ちゃんに全面的に任せなさい」
心強い言葉が吐かれました。