お姉ちゃんの声が好きだったから、お姉ちゃんを縛り上げた。
凛とした表情が苦痛に歪むのが愉快で、つい背中にムチを打ってしまう。
「っ!」
お姉ちゃんは声を上げない。強く食いしばった唇は裂けていて、涙を浮かべた瞳は、凛々しくて美しい。
だからつい、塩水を浴びせてしまった。
「いっ!あああぁぁああぁあ!」
低い声で、叫ぶお姉ちゃん。僕はつい興奮してしまって、お姉ちゃんにスタンガンを押し当ててしまう。
バチン
極限まで背中を反らした姿は、実に美しい。
だからもう、我慢出来なかった。
僕は……
油を床一面に敷いた。
その間も、お姉ちゃんの態度は変わらない。
「言い遺すことはある?」
『……ひとついいかしら』
手を振って促してやる。持っているオイルライターの火が音を立てて揺れた。
『妹は無事なの?』
想定内の言葉に、笑みを隠す事が出来なかった。
「勿論」
『……そ』
話は終わりだとでも言うように、お姉ちゃんは顔を伏せた。妹の為に自分を売った女に、相応しい末期の言葉だ。
僕はそれに満足して、手の中の小さな火を、お姉ちゃんに向かって投げ捨てた。