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私は冬が大嫌いだ。雪は私の肌と髪のいろで、冬は兄さんが死んだから。


ある夏のうだるような日、蝉の鳴き声で暑さが増しているように思える。私は当然のごとく外には出ない、何故なら私を見るだけで驚く人が多いし日差しにも弱い。紅い目に白い髪と肌…、小学校でいじめられ続けた私は学校へはとうの昔に行かなくなっていた。

もしかしたらいじめではないかも知れない、中2の冬に双子の兄幸人が私を見放して手が届かない遠いどこかへいってしまったから。 心をとざしてしまったのかもしれない。 時は過ぎた私は17になる。


「雪乃~~お母さんお買い物いってくるからねえ、ご飯炊いといてね」 遠くで母の声がする。 「夕飯の仕度か… もうそんな時間になったんだ」


「今日の夕飯はかぼちゃを煮たからたくさん食べてね」 「…うん」 母はいつも明るく私は暗い。
「あのね、雪乃お母さん前から気になってたんだけど。この手首の傷どうしたの?」 (長袖で隠していたけどどうやらばれてしまったらしい)「………」 「答えなさい、お母さんだって心配してるのよ。」
「もういいでしょ!! 自分できったのよ!!」 私のどこかで何かがふっきれた、口の中に苦い味が広がった。  目を見開いて涙ぐむ母に私は一言も言葉をかけずに玄関へ走っていった。


私の腕や手首は自分を傷つけた跡があった、なんで自分を傷つけるのかわからない、わかりたくない!
暗い過去の記憶がさかのぼって来ると精神が耐えられなくなってしまう、兄さんなんで死んでしまったんだ…。私もあのとき一緒に飛べばよかったんだ、私は暗い闇の世界にとり残されてしまった。
私は家からすぐ出たところにある河川敷をひたすら走った。涙があふれてくるとまらない。涙なんて人間らしいものすべて失ったと思ったのに…。 


その瞬間、雪乃は溝に足を引っ掛けて転んでしまった。足が溝にはまって抜けない…前には大型トラックが迫っていた。 運転手は夜で視界が悪い上に小さい雪乃に気づくはずもなかった。
「ひっ…!」雪乃は小さな悲鳴をあげた。そのままトラックは捕らえられた白兎に気づかず直進していった。 直後雪野の視界が白くなり何も見えなくなった。 


「私は死んだの?」
「さあ、わからないな…。でも雪乃は生きたいの?」「死にたいかもしれない、」「貴方は誰?」「ボク?さあ、わからないな…」 
とりとめのない会話、最後の会話かもしれないと思いふと顔を上にあげた。さっきまで白かった視界がなくなり闇一色だった、「さあ、こっちだよ」少年の声に導かれながら少女は闇の中を歩いていった。


 … …ここはどこ。 頭がいたい、少年の声に導かれながら歩いていった気がする。いつのまにか知らない場所にきてしまったようだ。日本ではあまり見ない黒色の土に比較的低い木々、奇妙な動物の声に心が震えていた。もしかしたら轢かれずにすんで、気を失ったわたしにドライバーが驚いて私を森に捨てたのかもしれないと、そう思った。 波の音がする、海が近いのだろうか…とりあえずいってみようかな。雪乃は重い足どりで音のするほうへ歩いていった。 小一時間後やっとついたと思い海を見た瞬間、雪乃は腰が抜けそうに驚いた。 「何なのこれ… 海が白い。」異様な光景にただただ呆然とするのみであった。

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