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第十一話「世界創造の時が来たのだ」

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 炎と氷と触手という、なんともファンタジーな光景に背を向けた俺は、割と近い位置にある隕石に向かって走る。
 私ちゃんが言うに、隕石と繋がれば何とかなるかもわからんという話だけど、この混沌極まる状況を変えられるのか不安になる。母さんが死んだと思えば、山田も死んだ。何とかする、それはイコール生き返らせるとか色々現実に歯向かっちゃうようなことをするしかないということになる。生半可な“解決法”じゃあ、どうにもならないのが現状だ。
 考え事をしながら、右にステップ。左後ろから炎。もはや火炎放射器とか目じゃないよコレ。ビームだもん。左にステップ。右後ろから氷の槍が何本か。見れば見るほど命を刈り取る形をしている。実績があるからなコレ。今も頭の中では何人もの俺が貫かれたり焼かれたり食われたりしている。尊い犠牲である。
 とかなんとか流れ弾を避けている内に、あと数歩で隕石に触ることが出来る位置までやってきた。防御力一くらいの装備でよくぞここまで、と自分を褒めたくなる。足に絡まりそうなケーブル類を跨ぎながら、いざ、今こそ隕石パワーを見せてみろ、ということで隕石に触った。
 ひんやりとした固い感触はまるで……例える必要がないなコレ、石だ。石。そんな石に触った瞬間、とんでもない光が俺を包むとか、いろんな場所が震えてくるとか、そんなことは一切起こらない。
 ん? 触ればいいんじゃないのか? なんか言ったほうがいいのか?
「頼む! カレーを出してくれ!」
 が、何も変わらない。後ろのほうで不穏な音が止まらないから、早いところ状況が変わってほしいところなんだけど。もう一押し必要なのか。
「ハア!」
 気合い入れてもダメだったらどうしようもねえぞ。
「……何をやっているんだね、君は」
 声が聞こえた方を見ると、鬱陶しい前髪で目が隠れている白衣の男が立っていた。見たことがあるような、ないような。
「それはこっちのセリフだ。お前こそ、まるで楠のマッドなサイエンティストやってますみたいな恰好しやがって。何の用だ」
「なんで君はそんなに偉そうなんだ。確かに僕は、マッドかどうかはともかく、楠のお抱え科学者だが。それよりも、君から戻って来てくれたのならば好都合、もう一度メテオに繋がってもらうよ」
 言って、男は俺に何やら銃っぽい物を向ける。なんでホント俺の人生こんなことばっかだよマジで。
 見ればその銃っぽい物の先端には、銃口がない。代わりにと言っていいものか、何やら針が二本ほど生えている。俺にはわかる。これは刺さる。しかも痛い奴だ。
 思った通り、遠くのほうで何人かのアホな俺がこの針の餌食となっている。さらに、どうやらこれが刺さると痺れるらしい。ドラマとかで見たことあるやつだコレ。
 撃たれたら負ける。ほら、何人かの俺ってば漏らしてるし。母親の白衣を全裸で着ながら漏らすとか人間辞めてますわ。自分のことながら泣けてくる。
 ひとまず、予想以上に距離が近い所為で、かなりの確率で当たる。なので、会話戦術に持ち込む。いわゆるなんとかなる作戦である。
「おい科学者、この隕石は動かないのか」
 そして、あわよくば俺が知りたい情報も引き出す。そんなに上手くはいかないだろうけど、時間を稼ぐのも一つの目的だ。
「それはそうだ。いくらメテオが半永久的に粒子を出すとわかっていても、それを放出し続けていたらどんな影響があるか分かったものではないからね。こちらが必要な時以外は、これはただの石だよ」
「そ、そんな……マジかよ……」
 教えてくれた。見かけによらず優しいな。というか名前思い出した。足立って名前だったわ。思い出したらムカついてきたぞ。こいつにガス攻めされたわ俺。しかもなんか水の妖精さんとか色々実験体を作っていたとか言ってた気がする。やっぱマッドじゃねえか!
「相羽主任が今までは観測室で操作していたんだけどね、その主任が死んでしまった今、僕がやらなくてはならない立場になってしまった。そうだ、相羽主任……君が起きなければ、僕はずっと彼女と働き続けることができたというのに。普段からの厳しい表情もいいけど、ふと見せる寂しげな眼差し。思いきやまるで聖母のような目をメテオに向ける。時に童女のような笑い方をする、そんな、酸いも甘いも知り尽くしたような、そんな彼女と、ずっと、働いて、いつか、結婚しようと思っていたんだ!」
 ……クレイジー。
「今の僕の心境がわかるかい? 愛する妻を殺された夫のそれさ! 君には今後、生涯を通して、僕の望む世界を作る礎となってもらうよ」
 ちょっと会話するどころか、色々話され過ぎて頭が追い付いてないぞ。けど、一つわかることがある。コイツ、こともあろうに、俺のパパになるつもりだったのか? オイオイ、そりゃあ、マジ?
 勝手に前髪を振り乱しながら勝手に喋り続けた足立は、勝手に銃っぽい物の狙いを俺に向ける。
 あまりにもショックだ。涼子さんは確かに息子の俺から見てもいい女だ。下着を見て鼻血を出す程度にはいい女だと思う。なので、狙う男の一人や二人はいるだろうと思っていた。その内の一人がコレ? 冗談キツイぜ……。
「申し訳ないですけど、ちょっと、クレイジーなサイエンティストをパパと呼ぶのは、ちょっと……」
「誰がお前のパパだッ!」
 撃った! アイツ将来息子になるかもしれんかった俺に向かって容赦なく! イかれてる!
 なんて、余裕ぶってみたが、どうしたことか。俺は気付いてしまった。
 普段なら俺とか俺が死んだりなんかえらいことになったりする映像が頭に浮かぶんだけど、おかしい、何も浮かばない。まるで俺の能力が消えてしまったような。……私ちゃん? え、なに、寝た? 寝ちゃったの? こんな時に?
 初動が遅れ過ぎた。混乱しながら適当な方向に転がろうとしたけど、容赦ないクレイジーニードルは俺の胴体を確実にとらえていた。
 俺はその憎き先端を目で追おうとして、なんか邪魔された。そう、具体的に言うと、物凄い衝撃が横からきた。車に轢かれたことないけど、たぶんそれくらい。
 体が浮いたような感覚と、横っ腹に激痛。遅れて何か弾いたような金属音。隕石に叩きつけられる俺。聞いたことのある駆動音。お前か。
「呆れたわ。メテオに触ったと思ったらノロノロノロノロ。何が“俺一人のほうが速い”よ、挙句の果てにこんな童貞男に捕まりそうになって、一瞬でもドキッとしたりしたアタシの色々なものを返しなさいよ!」
「く、車椅子、来て、くれたのか……」
 何やらピーチクパーチク喋っているが、俺は目の前に現れた圧倒的な安心感、車椅子を見て安堵した。コイツがあればどんな攻撃が来ても怖くない。
 めり込むかと思った。かろうじて二本の足で立っている俺は隕石から離れて、ゆらりと車椅子に近づく。
「ねえ、いま、アタシのこと、車椅子って言ったわよね?」
 と、これまたゆらりと車椅子が回転すると、背に隠れてた銀髪女が現れた。凄く怒った表情だ。しかし、さすがに俺でもそこは区別している。
「俺のいない間に頭でも打った? 銀髪女は銀髪女だし、車椅子は車椅子だ。そんなこともわからなああー! 踏んでる! 車輪! すごい! バカ! おバカ!」
「誰が馬鹿よ死ね!」
 死ね! と同時にギャルン! と車輪が回転し、やっとつま先が解放される。血出てる。あーあ、血出てるよこれ。
 もはやこれはエンカウントだ。神が憎い。安心感とはもっとも程遠い女を車椅子に乗せた神が憎い。
「……これはこれは、ハインリーケさん。懲りずにまた反抗しているらしいですね。貴女も僕の世界を作るためには、ずっと相羽光史を操作してもらわなくてはならない大事な要素です。大人しくしてもらいましょうか」
 満足した銀髪女が足立に向き直る。対する足立は、なんか震えている。怒りを抑えているような感じだ。……童貞って言われたのが気に障ったのかな。しかし、男は生まれた時、みんな童貞だぞ。現に俺も童貞だ。
「足立、俺も童貞だ。あまり気にするなよ」
「ブッ」
 俺の言葉に足立が何か言い返そうとしたところで、前から、なに? 噴射音が聞こえた。
「おい」
 覗き込むと、銀髪女が鼻血を抑えていた。なんだコイツ……。
「なんだコイツ……」
「違うの」
 何が違うんだ。何も言ってないぞ。
「別にアンタの下半身事情を想像して鼻血が出たとか、そういうのじゃないって言ってんの! 大体、聞いてもないのに童貞だの何だの、バカじゃないの!?」
 ゴシゴシと服の袖で鼻血をふきながらまくしたてる銀髪女。言い出したのはお前だろ。
「さっきから、なんだい君達、状況が分かっていないのかな? 僕のことを馬鹿にして、え? ……このまま動けなくして装置につなごうかと思ったけど、もうやめたよ。君達二人は、念入りに、今後絶対にこんなことが起きないように、僕自ら両手足を切って、口を潰して、鼻を削いで、耳を切り落としてからつないであげよう。何もせず、何も言わなければ、そもそもこんな事にならなかったんだ。そう、最初からこうすべきだった。こうしていれば、相羽主任も死なずに済んだんだ!」
 なにやらやばい感じのことを叫ぶ足立。これはまずい。不穏な空気だ。普段なら俺が死んだりする流れ。だけど、やっぱり何も見えてこない。まずいまずい。まずいぞ。
 そうだ、銃、銀髪女は銃を持っている。よし、賭けよう。お世辞にも、いや、お世辞を言えるほど当たっているところを見たことがあるわけじゃないけど、今なんとか出来るのは銀髪女しかいない。
「おい銀髪女、はやくアイツ撃って! あの銃っぽいのに刺されると動けなくなるから! はやく!」
「言われなくても!」
 さすが銀髪女というべきか、構えてから撃つまでは、一瞬と言えるほどの時間だった。銃声から遅れて、足立が持つ銃っぽいやつも針がついた変なものが飛び出す。
 結果は一瞬で分かった。結論から言えば、足立はヅラだった。ああ、俺もビックリした。ビックリしすぎて、銀髪女の前に出る。
「ちょ、アンタが前に立ったら――」
 賭けに勝ったと一瞬思った。銀髪女もやる時はやる、ちょっと褒めようと思ったほどだ。しかし、頭が吹っ飛んだと思ったらヅラだったんだ。目の前には、ちょっと驚いた顔をしている足立。俺が前に出たから驚いているのか、ヅラが勝手に飛んで行ったことに驚いているのか、俺にはわからん。
 ただ、右胸あたりになんか当たったな、ということくらいしか俺にはわからなかった。……あれ? 意外と痛くない?
 ちらりと後ろの銀髪女を見る。なんか複雑な顔をしていた。怒っているのは間違いない。
 と、右胸に抵抗を感じたので見てみると、なにやら紐っぽいものが伸びていた。
「なんだこあんぎゃああああああああああああ!」
 ああああああああああ! すげええええええええええ! いてえええええええええええええええ!
 きゅっと縮こまるようにしゃがみ込んでしまう。いや、いてええええええええええええ!
 けど、絶対、あああああああああああ!
「漏らしたくないいいいいいいいいいいいいいいい!!」

第十一話「世界創造の時が来たのだ」

「ハッ!」
 俺は漏らして……ない、のか? というかここ、どこ? あれ? 銀髪女さん?
 周りを見る。うむ、周りが無い。真っ黒だ。もはや漏らしたかどうかもわからない。さらに言うと、起き上がろうとして気付いた。体の感触もない。……え、死んだ? まさかのショック死かよ。これ楠すら想定していないバッドエンドだろ。俺死んだらなんか色々終わるだろ。……死んだの? え、マジ?
 ……一時期死ぬとか思ってたこともあったけど、なんだろ、結構後悔してないか俺。涼子さんは死んだままで、山田は悪くなったまま死んで、部長は知らずに死んでて、開道寺の妹もいつの間にか死んで……銀髪女は、あれ、銀髪女は、どうなるんだ?
 今になって、死ぬ直前に足立が言っていた言葉を思い出す。手足を切る。鼻を削ぐ。耳を切り落とす。……想像しただけで泣きそうになる。それが嫌だから、俺は銀髪女の前に出て、でも、ああ、俺が死んじゃったら、結局ダメじゃないか。
 俺死んだらダメじゃん。
「――――」
 声を出したつもりだった。けど、何も聞こえない。自分の声さえも。
 考えれば考えるほど悲しくなる。俺は間違えたんだ。銀髪女はまだ死んでないのに、俺が先に死んでしまった。……もしかしたらって、実は思った。私ちゃんが言うような都合のいいことなんて起きなくて、死んじゃったものは仕方なくて、なんて。でも、だったら、なおさら銀髪女だけは助けるべきだったんだ。だけど、それすら出来ずに俺は死んだ。
 嫌だと思った。
『だから私は嫌だったんだ、この国に来るのは』
 誰だこのオッサン!?
 ビビる。急に現れたぞこのオッサン。……あれ?
 “周りを見る”と、ホントに一瞬で、さっきまでの真っ黒から街中へと変わっていた。いつの間にか音も聞こえる。車が通る音とか、風に揺れる葉っぱの音とか、雪を踏みしめる音とか、めっちゃ近い銀髪オッサンの吐息とか。気持ち悪いわい!
 離れる。いつの間にかついでに、俺の体もある。思わずそこらじゅう触る。最終的に息子を触ったところで安心した。未使用のまま死んだとは、すまぬ。すまぬ。
『嫌だと言いつつも、あんなに寿司を食べていたのは誰ですか、もう。……ねえ、ハイン?』
『うん! お父さん、こぶじめっていうのいっぱい食べてた!』
 なんて安心していると、後ろのほうからまたしても声。振り向くと、黒髪の女性と銀髪の幼女が手を繋ぎながら笑っていた。おいおい、笑っている場合か? どうやら家族っぽいが、そんな団らんに裸白衣男が現れたんだぞ?
『それにそんなに寒いのなら、ほら、こちらへいらして?』
 しかし、そんなエマージェンシーな状況でも構わず黒髪女は銀髪男を手招きする。銀髪男はふてくされたような顔をしながらも黒髪女に近づいていく。
『ほら、こうしたら暖かいわ』
『むう……』
 銀髪男の手を、すかさず黒髪女が掴むと、そのまま着込んだコートのポケットにそのまま入れる。
 ……なんだこれは。なんで俺は死んだのにこんな心温まりそうな光景を見なきゃいかんのだ。微笑ましいじゃねえかおい。
『大体ですよ、あなたの国の方がもっと寒いのに、この程度で寒いなんて』
『私の国の寒さとは質が違うんだ。それに、どの店にもウォッカがない。これがいかん』
『お店であれほど日本酒を飲んだのに、まだそんなことを言うの?』
 銀髪幼女と銀髪男に挟まれながら、黒髪女が頬を膨らませる。それを見た銀髪男は、ぐっと詰まるような仕草を見せると、慌てて口を開く。
『前から言っていただろう、“楠”の墓なら家の近くに移してもらおうと。長旅までして、ただでさえカエデ、君は体が弱いんだ。私の気持ちも分かって欲しい、心配なんだよ』
『マーティー、日本のお墓っていうのはね、先祖代々から受け継ぐものなの。確かに最近は移す人も多いって聞くけど、わたしは嫌よ。……それにね、わたしの母国に帰るのが嫌だなんて、そんなこと言わないで?』
『むう……』
 どうやら銀髪男は黒髪女に弱いらしい。惚れた弱みってやつかHAHAHA……そうじゃない。いや、今この男、楠とか言っていたな。それにマーティーだと? 
『父さん、母さん! はやく!』
 遠くから幼い感じの声が聞こえた。目を向けると、前の方で手を振っている銀髪男児。
『クリス、あまりはしゃいでいると転ぶぞ』
 優し気に注意する銀髪男。
 さすがに鈍感な俺でもわかる。これは過去だ。そうに違いない。過去、そう、それも問題だけど、他にも問題はある。まず、俺は他の人に見えていない。見えていたら今頃俺はもっと寒い檻の中だろう。加えて、見えているものも問題だ。
 俺でもわかる。これは、銀髪女とその家族だ。
『お母さん、あたし寒い』
『あらあら、誰に似たのやら。あなた、そろそろホテルに帰りません?』
『そうだな。君の体にも障る』
 そう言って、銀髪男……マティアス・ガーラックはカエデと呼ばれた女性と歩き始める。
 俺は、空を見上げた。何よりも、一番問題なのは。
『お母さん、お空、赤い』
 ここが、北海道であり、旭川であり。“あの日”だったことだ。
 “あの時”もそうだったように、この時も、状況はそう変わらなかった。空が赤いと思ったら、まるで物凄い爆弾が爆発したように、音と衝撃が街を襲った。胸が苦しい。何度見ても、こんな光景はあっちゃいけないと思う。
 そうだ、前もこんな光景を見せられた。いかれたオッサンに触られて、旧いSF映画みたいな極彩色空間に飛ばされて、それからだ。周りを見渡す。けど、オッサンはどこにもいない。そんな傍ら、誰かが叫んだ。
『お兄ちゃん!』
 見れば、先に進んでいた男の子が倒れており。その頭上、そこそこ高さのある建物が崩れようとしていた。それを見て叫んだ銀髪幼女……いや、銀髪女が立ち上がり、今にも駆け寄りそうなところで、それよりも早く走り出した人がいた。
 その人は銀髪男児まで駆け寄ると、どこにそんな力があったのか、銀髪女がいるほうへ銀髪男児を投げ飛ばす。直後に、その人は崩れてきた建物に飲み込まれた。
 一瞬の出来事だったように見えた。けど、確かに見えた。最後に見えた彼女は、確かに安堵し、笑ったんだ。
『ぐう、カエデ……クリス、ハイン、カエデは?』
 頭を押さえ立ち上がりながらマーティーが聞く。銀髪女は、黙って崩れた建物を指差した。
『そんな、ああ、嘘だろ、カエデ、そんな……』
 ふらふらと建物に近寄るマーティー。俺は知っている、この日の建物ってやつは人を簡単に殺してしまうことを。俺の父さんと母さん、二人も殺した。同じだ。何も変わらない。
 “見覚えのある”血溜まりが見えた。建物の隙間から流れてきている。もしかしたらずっと止まらないんじゃないかと思うくらい。
 やっぱり人が死ぬところを見るのは嫌だと思った。
『どうだ、アレの解析は』
 薄暗く狭い部屋の中に、二人の男が居た。俺もいる。……うん?
 一人の白衣を着た男は黙々とパソコンのディスプレイに向かってキーボードを叩き、もう片方、グレーのスーツに身を包んだ男はその様子を見ながら、何度か白衣の男に問いかけている。しかし、白衣の男は答えない。
 やれやれ、と。スーツの男は溜め息を漏らしながら、意識して息を大きく吸うと、それを一気に声として吐き出した。
『足立広大! 解析は進んでいるのかね!』
『……聞こえてますよ、マティウス会長』
 そう言いながら、白衣の男は頭を乱暴に掻きつつ、椅子を回転させてスーツの男に向き直った。
『聞こえているというのに返事をしないということは、なるほど、無視された、とでも言っておこうか』
『……違うんです、違うんです。今ちょうど、その解析が佳境に入ったところなんですよ。いやはやしかし、凄いですね、コレ。科学者である僕が言うのもアレですけど、コレはSFに見えてファンタジーだ』
『その報告を聞かされていない私としては、何がどう凄いのか分からないのだがね』
 スーツの男……マーティーはイライラとした口調で応える。だが、足立はそれを意に介さず、まるで子供のように目を輝かせながら話を続ける。
 たぶん、これも過去だ。だって、足立にちゃんと髪がある。
『この隕石からはですね、ある特別な粒子が出ているんですよ。僕は勝手にメテオ粒子って言ってますけど、その粒子が凄い。半永久的にこの隕石の中で生成され続けている、という事実だけでも驚くべきことなのに、その粒子の性質がさらに凄いんです』
『粒子、粒子か。“やはり”この隕石は何らかの影響を周りに与えていると考えていいんだな?』
 マーティーは深く息を吐き出すと、近くの足立が使っている物と同じ椅子に腰掛ける。
 足立はどう話すべきか考え終わったんだろう、再度口を開く。
『この粒子は、簡単に言ってしまうと、現実を侵食する、言ってみればウィルスのような物なんですよ。あらゆる物理法則、生物的構造、無機質、全てにおいてこの粒子は、その存在を認めさせようとする。全く驚きですよ。この隕石は僕達の言う現実とは全く別の場所から来たと言っても過言じゃあないんです。……使い様によってはこの世界の根底を揺るがすようなものに成り得ますよ』
『それは、人に対しても、なのか?』
『正直、まだ分かりません。……ただ、一つだけ言えることは、僕は今すぐにでもこの粒子を使って人体に対する実験をしたい、ってことですね』
 きらりと足立のメガネが光る。……おかしいだろ、メガネは光らないだろ。どういう原理だ。というかコイツやっぱり前からクレイジーだったんだな。いかれてやがる。
『そのつもりだ。そもそも、なぜ全てを投げうってこの隕石を手に入れたと思っているんだ。……まずは、クリスの“病気”とどのような関連があるのか調べるんだ。その為に人が必要なのであれば、言え』
 そう言ってマーティーは立ち上がると、部屋から出て行った。
 その姿を見送ると、足立は盛大に息を吐いた。やはり上司と部下ってやつなんだろう、こんな奴でも疲れるらしい。なんて思っていると、足立はおもむらにヅラをキーボードのそばに置いた。
「お前もうヅラだったのかよ!」
『だ、誰だッ!?』
 あれ、声、聞こえちゃった? マジ?
 急に立ち上がり周りを見る足立。すかさずヅラは着用済みだ。そうか、姿は見えないのか。
 じゃあ、他になんか出来るのかなと思っていたところで、またも唐突に周りの景色が変わった。
『そこのお前、そのまま手を挙げるんだ!』
 こんどはどこだと周りを見る。見覚えはないな。なんせ、壁中に血が飛び散っている場所だ。気絶する自信がある。
 ただ、何かを叫んでいる男の声、あと見た目はなんとなく見覚えがあった。ちょっと若い気がするけど、確か、あれだ、楠木ビルで初めて触手を見た時に近くにいたガチムチサングラス隊長おじさんだ。
 そんな隊長が廊下の曲がり角に向かって走っていった。で、すぐ戻ってきた。物凄い勢いで飛びながら。そのまま後ろの方の壁に物凄い勢いでブチ当たると、動かなくなった。おいおい一発芸かなんかかよ。
『あ、あ』
 飛んでく隊長を思わず目で追ってしまったところで、俺は後ろにもう一人いたことに気付く。
 そこには、泣いている銀髪女が座り込んでいた。ついさっき旭川で見た時よりも成長しているように見える。幼女というよりも少女といったところか。なにやら入院服のようなものを着ているけど、なんていうか俺と同じ感じだ。なにが同じって、こう、見えそうで見えない感がすごい。俺の今の恰好は間違いなく犯罪臭しかしないけど、今の銀髪女からはまた別の犯罪臭がする。鼻血出そう。
『ハイン?』
 どうにかして見えない立ち位置を探そうとしていたところで、またしても背後から声が聞こえた。振り返ると、これまた見覚えのある銀髪。銀髪男児、ではないか。少年と青年の間くらいに成長しているように見える。ただ、その。
『お兄ちゃん……それ……』
『どうしたの、ハイン、お兄ちゃん、どこか、おかしいかな?』
 たしかにお兄ちゃんは成長しているのだけど、成長しちゃいけないところも成長していると言いますか、ええ、ある一部分、左腕が非常に見覚えのある触手になっていた。これみよがしにクパァと口を開いた触手は、ゆっくりと銀髪女のほうに向く。ああ、そう、これこれ。やっぱり触手はこうでないとね。もはや懐かしい。
『やだぁ……やだよ、お兄ちゃん……やだよぉ……』
 だけど、それはダメだ。
 あの触手の動きには見覚えがあり過ぎた。触手避け職人の俺にはわかる。
「銀髪女! 早く逃げろ!」
『そこに、だれか、いるの?』
 ここでも俺の声は聞こえてるのか?
 じゃあ、と銀髪女を見ると、相変わらず泣いたまま座り込んでいて逃げようともしてない。なんだこの可愛らしい生き物は。銀髪女かどうか怪しくなってきたぞ。
 お兄ちゃんを見る。あれ? おかしいな、俺には触手がこっちを向いているように見える。もちろん触手は、こっちに向かって突っ込んできた。思わず、反射的に避ける。よくよく考えると避ける必要はなかった。これも触手避け職人ゆえ、この域まで達してしまったか。
 なんて余裕ぶっこいていると、後ろで触手が壁に突っ込む音が聞こえてきた。思わず振り返ると、そこまでいくかという具合に触手がめり込んでいる。もちろん壁は粉々だ。まだ小さいのに、あの威力。末恐ろしい触手よ。などと思いながら壁の破片を肩から払う。
『あなたは、だれ』
 そう、銀髪お兄ちゃんは“俺を見ながら”聞いてくる。……見えるのか? というか、待て、俺はさっきなにをした? “壁の破片を肩から払う”?
 久々に血の気が引いた。見えているだけじゃないっぽい。それはつまり、俺は今、小さいとはいえ触手の目の前でアホ面さらしながら立っているということだ。
「おいおいそれはやべえぞ」
『しらない、ひと、たべ』
「いま食べるって言おうとしただろ! わかるんだからな!」
 こうなりゃヤケだ。俺は触手お兄ちゃんに背を向けると、さっきと全く変わらず泣いている銀髪女のそばまで近寄る。
「おい銀髪女、最初に言っておく。頼むから怒るなよ」
「……え?」
 俺は銀髪女を抱えた。さすがにまだ小さいからだろう、軽々と持ち上がる。というかマジで触れたぞ。マジかよ。過去だろ。いいのか? いや、よくないだろう。何がよくないって、俺の鼻血が止まらない。そこらじゅうから色々触っちゃダメな感触が返ってくる。
 ちらりと触手お兄ちゃんを見る。なんか怒ってた。
『ハインを、かえせ』
「おまえ食べるだろ。絶対わたさん」
 言うが早く、俺は走り始めた。とにかく走る。見れば見るほど来たことない場所なもんで、どこに走ったらいいかわからないけど、とにかく走る。そんな最中、急に頭を殴られる。
『は、はなして! だれ、はやく離してよ!』
「わか、わかわか、わかったから叩くな!」
 どうやら銀髪女が我を取り戻したらしく、俺の頭を叩いてきた。結構痛い。少女でも銀髪女だったらしい。屈するようで非常に癪だが、そろそろ俺も貧血になりそうだったので、周りを確認してから降ろしてやる。
『だれなんですか? ……変態ですか?』
「おい。そんな目で俺を見るな。泣くぞ」
 実際の銀髪女にも向けられたことのないような冷たい視線が見えそうな所に刺さる刺さる。確かに薄皮一枚みたいな服だし? 鼻血出してるし? 気分は学生でも俺二十歳超えてるし? まあ一言で表すのなら変態は正解をあげてもいいだろう。花丸だ。
『泣きたいのは、こっち……なんで、お兄ちゃん……』
 なんて、また泣き始める銀髪女。やめてくれ、泣かれるとなんか俺も悲しい。
「泣くなって。俺が絶対助けるぞ」
『え?』
 ふと、見上げてくる銀髪女。
「銀髪女はまだ死んでない。さらに言うとお兄ちゃんもまだ死んでない。じゃあ、あとは助かるだけだ」
『ぎんぱつおんなって……あたしのこと?』
 これ以上銀髪女が泣いているのは、嫌だと思った。
「そうだ、銀髪女よ、逞しい幼女になるんだ。そしてあわよくばもっと優しい感じに成長してくれ。そしたらたぶん、いつか、俺が助ける」
 あれ?
 なんかすごくいいことを言っていた。言っていたはずなんだけれども、言ってる途中でまたも唐突に景色が変わる。マジかよ、あの銀髪女にとっては逞しい幼女になるんだくらいで終わったんじゃないのか。変態だ。おい、俺の可愛いバージョンの銀髪女はどこにいったんだ! クソォ!
 ムカついたから周りを見る。……地元の公園だった。面白くもなんともないな。
 さらに周りを見る。……なんか吐いてる山田がいた。なんで吐いてんだお前。というか目の前で死んだくせに今更目の前で吐いてんじゃねえぞ。面白くもなんともない。
 もういっちょ周りを見る。……“街灯”を片手で持ってる部長がいた。あまりにもおかしい光景なんだけど、今まで結構いかれた光景を見てきたこと、さらに言うと部長ならやってしまうか、という諦めにも似たことを思う。ちょっと面白い。
 さらに上を見た。……片手無くなってるイケメンが浮かんでいた。というか懐かしいなコイツ。存在が笑える。
 結論。これはまた過去だ。さらに言うと、山田を除いて、部長とイケメンは動きを止めて俺を見ている。そう、今度は最初から見えているらしい。
『……久々に見たと思ったら、相羽、逞しい幼女って、なに? いつのまにそんなものに傾倒したわけ? それにその恰好……変態?』
『相羽光史、なんで、ここにいるんだ……!?』
 声も聞こえているらしい。なんかもうここに用はないかな、って気分になってきたぞ。
『あ、うす、部長。俺に気にせず続けてください。帰ります俺』
 なんて背を向ける。目の前に煉瓦でしょうか、なんかめちゃくちゃ落ちてきた。
『帰すわけないだろう! お前は、ビルで今も繋がれているはずだろうが!』
「ええ……じゃあ、別人ということで。ほら、ちょっと大人びてる感じしない? まだ鏡見てないけど」
『バカにして、間違いなく、お前は相羽光史だ!』
 また癇癪かコイツは。ショタなのかイケメンなのかよくわからんが、敵に違いない。思い出したけどコイツ、なんか浮かしたりするやつだったか。部長は怪力。俺ピンチ。そういえば、今の俺は道に落ちている石でさえ避けることも難しい状況だった。落ちてくる石とか避けようがねえぞ。
「震えてきた」
『そんな恰好してるからでしょうに』
「おや、部長じゃないですか。一つだけ言わせてもらうと、好きでこの格好してるわけじゃないですからね。本当です」
『じゃあ幼女は好きなわけか』
「わけかじゃないですね。全然好きじゃないです」
 実際は全然好きじゃないわけじゃない。腹を割ると、銀髪女を見ていたら結構愛でたくなるような気持ちがあった。ことは否定できない。別に幼女だからってわけじゃないんだ。……あれ? そしたら銀髪女だから、ってことになるぞ? それはまずいんじゃないのか……。
『なんなんだ、お前ら、人の腕を無くしておいて、なんなんだよ! もういい、相羽光史だろうが変態だろうが、ここで長谷川未央ともども死んでしまえ!』
「待て、これだけは言わせろ」
 俺は上を向き、イケメンを片手で制止する。
「俺は変態じゃない」
『だから、バカに、するんじゃねええ!』
 今度は止まりそうにない。止められそうにない。
『もう、バカ! 早く逃げて、ここはなんとかするから!』
 二人してバカ呼ばわりかよ。部長が俺の前に出る。
 思ったけど、たぶん、この過去ではもう、すでに俺は隕石に繋がれているんだろう。つまり、部長はここで死ぬ可能性が高い。それはダメだろう。最悪、俺の知らない人が全然知らない場所で知らずに死ぬのはいい。だけど、俺の知ってる人が目の前で死ぬのはダメだ。それはダメだ。
 イケメンがうなりながら石やらレンガやらを空中に浮かべる。あー、その量やばい。無理。けど嫌だ。部長が死ぬところは見たくない。
 だからだろうか、“俺が死ぬ光景が見えた”。一つどころの騒ぎじゃない、何百人という俺が死んでいく。文字となって、音となって、色となって、動きとなって、それらの俺は、確かに、俺に見せた。
「きたきたきた! これこれ、やっぱこれがないと安心できないね!」
 言って、俺は前にいる部長を引っ張ると、上から降ってくるものを全て避けた。久々の全能感だ。ここのところ、この能力も意外と大したことないんじゃないかと思ってたけど、やっぱり有ると無いじゃ大違いだな。
 もちろんそんな光景を見ていた部長とイケメンはドン引きである。
「はーははは! 見たか! 俺だってやる時はやるんだ!」
『やはりコイツは相羽光史、なのか。けど、だったらビルにいるあの相羽光史は……』
 なにやらブツブツ言いながら、イケメンはどっか飛んで行った。どこでもいいか。
 と、無事かどうか部長とついでに山田を確認しようとして振り返り、そこは何もなく、真っ黒だった。
 急速に熱が冷めていく。まるで今まで見えていたものが夢だったと、お前は死んでいるんだぞと、そういわれているような気がしたからだ。……夢だったんだろうか。新手の走馬燈? そりゃあないぜ。期待しただろ。過去すら変えられるなら、希望があるだろ。今までよりもずっと、希望がある。もっと、もっと望んじゃうじゃないか。
「……おや、そこにいるのは相羽君ではないですか? これはこれは、奇遇ですね」
 ……残念ながらオッサンだけは望んでないんだよなあ。
「奇遇もクソも、オッサンが現れるときは大抵俺は用なくてもオッサンが俺に用ある時じゃねえかよ」
「それはそうなのですが、思わぬところで用事が済みましてな」
 というかなんだ、オッサンがいるってことは、なんだ、俺死んでないじゃん。いつもの謎空間かよここ。焦り過ぎて泣くとこだったわあほちんこたれ。
「なんだ、相羽光史。まるで泣きそうな顔をしているじゃないか」
 そんなことを言いながら現れたのは、いつかみた私ちゃんだった。そう。そういえばだよ。
「まるで泣きそうとかなあ! あのね、大事な時に能力使えなくしといてそりゃあないでしょ! 俺もたまには怒るよ! でるとこでるよ!」
「そうか。既に影響が出ているということか」
 てへっ、うっかり。そんな感じで返してくるかと思いきや、どうやら想定の範囲内だったようだ。それは困るぞ。
「相羽光史、結論から言う。君はもう、自由に“選択”を行うことは出来ない」
「私ちゃんいつの間に冗談とか言えるようになったんだよ。でもね、冗談は言っていい時と悪い時があるんだよ? 俺君に教わらなかったかな? うん?」
「おい、もうなにもしなくなるぞ」
「……え、マジ? 冗談じゃなくて?」
 というか私ちゃん、え、怒ってんの? あんなワタシ・セカイ・エラブ・ロボみたいな喋り方してたのに? え? 成長はやくない? これがパパの気持ちってやつなのか。
「君の望む世界を創るための最善を行った結果、どうやら私の処理能力を超えてしまったらしい。結果、君が見れる少し先の平行世界は、秒数にして三秒先。それも、見れるかどうかは保証できない」
「今までカップラーメン余裕で作れるくらい先まで見えてたのに、三秒? シビアすぎて何も言えねえ……粉落としかよ……」
 しかも見れるかどうかわからないと来た。やべえ。
「やべえ」
「まだある。君がやろうとしていることは、街だとか、地球だとか、そんな範囲に収まることではない。世界創造の時が来たのだ。それを成すには、メテオ一つでは不十分。もう一つ必要だ」
「もう一つか。それはわかりやすい」
 そう、いわゆるツインドライブってやつだ。アーセナル・コアやってたしなんとなくわかるぞ。一つより二つだよな!
「で、そのもう一個はどこにあるんだ?」
「わからない」
「じゃあしょうがないね。オッサン、もう一個はどこにあるんだ?」
「わからないですね」
「わからないで済むわけねえだろボケ! お前のとこの古巣だろバカ!」
「しゅん……」
 ふてくされた顔で口ひげを触るオッサン。前々から思っていたけどすげえむかつく。でも要所で助けてもらってるからこれ以上強く出ることもできん。
「ちなみに、私が“出来る”と思えたのも、この獄吏道元の協力があったからだ。彼の能力も、もはや当初の、空間と空間を繋ぐ力しか残っていないだろう」
 要所どころじゃなかった。
「俺はオッサンはすげえやつだって前から思ってた。すげえよオッサンは」
「ふふふ、いいんですよ相羽君。言われなくともわかっていることです、紳士ですので」
「一発殴らせろ」
「いいんですか? ワタクシが殴らなくても。出来ますよ? “ショック療法”」
「殴れ」
 待っていましたと言わんばかりにオッサンは右拳を握りしめると、そのまま肘を引き、足を開く。続いて、筋肉を引き絞るようにゆっくりと息を吐く。おかしい、以前よりも威力を出すスタイルになっている気がする。前の威力で出来るんだろう? それ以上求めるのはおかしいんじゃないのか?
「相羽光史」
 待ち構えている中、不意に私ちゃんが俺を呼ぶ。
「覚えていてほしい、私の名――」
 私ちゃんには本当に申し訳ないと思ってる。けど、許してほしい。
 聞き終わる前に俺は殴られ、ここでの意識を失った。



次回:第十二話『詰んでるわ』
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