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俺の名前は山田太陽。
今朝も6時に起き、都会からはかなり離れたところにある本社へと2時間の通勤時間をかけ出社する。
今はまだただの山田太陽。
役職も何もない。
完全実力制のうちの会社では手柄を残さなければ出世することはかなわない。
昇進にはいくつもの項目がありそれぞれにポイントが振り分けられている。
小学生からずっと地味な人生を歩んできた。
目立つことは何一つしてこなかった。
何事も無難にこなしてきた。
無難・・・うちの職場ほどこの言葉が無意味な場所はないだろう。
入社5年・・・同期はどんどん出世していく中
うだつも上がらずただノウノウと生きてきた。
そんな毎日に俺は嫌気が差していた。
変わりたい・・・。

その思いが俺を突き動かす。

朝のミーティングが始まる。
最高幹部の一人であり日本支部の作戦指揮官でもある上司が前へ立つ。
「次の議題である。昨日、神奈川で作戦行動を行っていたザ・スパイダーの死亡が確認された。」
一気に周りがザワメキはじめる。
「何故だ!?何故彼は死んだ!?組織の為に30年以上尽くしてきた彼が何故死ななければならなかった!?」
世界規模で活動を行う俺の勤めている組織。
とりわけ、ここ日本は最大級の激戦区であり死亡例は他国の10倍以上と飛びぬけている。
死はいわば日常のようなものである。
しかし、今回はわけが違う。亡くなったのは組織設立当初からの重鎮ザ・スパイダーである。
「誰か!ザ・スパイダーの仇を討ちたいというものは、われこそはと思うものは手を挙げろ!」
あたりがシーンと静まり返る。
誰も手を挙げるわけがない。
この場にいるものは前で話をしている最高幹部以外はただの平社員。
こういう案件は形式上立候補制をとっているが
最高幹部が選んだ現場部長クラスを主体とし
その現場部長が強制的に選んだ平社員10名前後でプロジェクトを進行させるのが慣例であった。

だが、今回は違った。
俺は分不相応にも手を挙げる。
最高幹部の視線がこちらを向く。
怖い。
あの爬虫類のような眼に睨まれ、挙げている手がブルブルと震えだした。
しかし、俺は手を下げなかった。

「貴様、名前は?」
「山田太陽です」
「平社員か?」
「まだ改造手術も受けていない人間であります」
「・・・できるか?」
「やります」
「・・・よろしい。貴様に現場責任者の任を与える。敵を討てた暁には貴様は私と同じ最高幹部に昇格だ。さらに、総帥自らの手で改造人間にしていただくよう口添えをしてやる」

俺はかしこまって即座にひるがえす。
周りに居るネクタイをつけた最下級の平社員が俺を畏敬のまなざしで見ている。
俺より一つ上の階級である真っ黒い強化スーツで身を包んだ戦闘員は「キキイー!」と雄たけびをあげている。

─ 対象戦隊:電撃戦隊ライジンガー
   実行隊員:山田太陽(世界征服組織日本支部ギガントショッカー社所属平社員) ─

今、ただの平社員と正義の味方との聖戦が開始された。
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