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一話 その1

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 久しぶりだね絹子ちゃん。僕だよ、菊蔵だよ。この前病院でも会ったよね?覚えてる?ああやっぱり覚えてないか。
それもそうだよね。だって僕が絹子ちゃんが重体で集中治療室に運ばれていくのを見ただけだもんね。そりゃ覚えてないよね。
その話は置いとこう。僕がなぜ今回こうして手紙を自分から書いてるかっていうとね、絹子ちゃんともう二度と会えないような気がしたからなんだよ。
だから、デートをしよう。絹子ちゃんと僕との最後の思い出に遊園地でデートをしにいこうよ。遊園地が嫌なら、別に絹子ちゃんの家だってかまわない。
とにかくさ、2人で思い出作りしようよ!デートしようよ!

ここで君なら「絹子ちゃんともう二度と会えないような気がしたからデートしよう」という道理に疑問を持つと思うよね。うん、わかるよ。
僕だって絹子ちゃんともっと一緒にいたいし、お別れをするようなことも言いたくないんだよ。でもね、うーん、なんというかさ、絹子ちゃんに
もう本当に本当に出会えないような気がしたんだ。それにこれは絹子ちゃんに会うための口実なんかじゃないんだ。これは僕でもよくわからないけど、
事実なんだ。ともかく絹子ちゃんは、なんだかよくわからないけど、未知なる不可抗力だとかそういうことのせいで、僕と絹子ちゃんはこの機会を
逃すともう二度と会えなくなってしまうんだ。こんなことを言うと余計に嘘っぽく聞こえるかもしれないけど、
絹子ちゃんとお別れするのは、本当に辛い。
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