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第一話

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ぼっーと過ごしているうちに県立高校へと無難に進学した俺が一番最初に後悔したのはこの学校がやや高いところにあり起伏が激しいというところだった。
上がっては下がって上がっては下がって。
そんな感じで坂道が続いている訳でしかも校門への坂が一番きつい。
急なしかも長い上り坂なのである。
毎日毎日学校へ行くたびにこの坂を登らなければいけないのかとおもうと少々辛い。
周りの顔を見ると不安と期待を胸に抱いているというのか、まぁこれからが楽しみだとでもいうように歩いている。
まったくもって不思議だね。なんで俺はこんなに疲れているのに周りの人間は全く疲れを見せていないのか。
考えるだけでも疲れるので俺は考えるのをやめた。
そんなこんなで体育館で無駄に長い入学式が行われている訳なのだが。
ここの学校は女子がセーラー服という学校でまったくもってけしからん。
しかしだ、何故か男子はブレザーという訳なのだ。
まぁ正直どうでもいいのだがどこでもやはり校長の話というものは眠くなるものであって俺は早くもうとうととしていた。
気が付くと校長の話も終り流されるがままに自分も一年に二組の教室へと向った。
クラスメイトたちは中学校のメンバーと大差なく仲の良い連中も多かったため友達には困りそうにない。
担任の大沢という教師の話を適当に受け流して朝のホームルームも終りなんの変哲も無く時間は進んでく。
下校時間に各部活動から新入生徒たちへの熱烈な勧誘が始まった。
俺は正直スポーツとかそういうのが好きな方ではなくもっと、こう静かにしているのが好きな訳で、結局全部断った。
さて帰ろうかと廊下を歩いていると一つの教室が目に入った。
何故気になったのかは今になっても分からない。
見るとそこは文芸部と小さく小奇麗に書かれた字で書いてあった。
またもや何をおもったのか俺はその教室へあろう事か踏み入れてしまったのだ。
何故入ろうとおもったのかは今でも謎である。
なんだかわるい事のように感じてそっーとドアを開ける。
入って最初に驚いたのは本の数である。
壁一面が本棚で棚の全てに本があるのだ。
そして長テーブルとパイプ椅子。
パイプ椅子に腰掛けて本を黙々と読んでいる美人がいた。
短めのまっすぐな黒い髪にこの上なく整った目鼻立ち。優しげな少々垂れ目の目に長いまつげ。
思わず息を呑むかのような女性だった。
「……おや?」
ぼっーと突っ立っていた俺に少し経ってから気づいた彼女は目をぱちくりさせて俺を凝視した。
約二秒間俺を見つめた後彼女は静かに口を開いた。
おっとりとした優しい雰囲気の声だった。
「新入生かな。入部希望者だったとしたら名前だけ教えてくれ給え」
元々入部する気は全く無かったのだが俺は彼女を一目見たときにもう虜になっていたらしく俄然入部する気満々だった。
今思えば鼻の下が伸びていたかもしれない。
「えっと……名前は宮本英治です」
少し緊張したためか声が上ずってしまったがまぁ、大丈夫だろう。
「エイジくんだね。おめでとう君は今日から晴れて文芸部員だ」
にっこりと微笑んでそう言う彼女はまるで天使の微笑というべきか、とても神々しく見えた。
「僕の名前は城島美夏。よろしく」
机の上に部長と書かれたが置いてある所を見ると彼女はどうやら部長らしいのだが他の部員が誰も見当たらない。
「あの、他の部員の方はいったいどこにいるんです?」
「ん? ああ、部員は僕以外に誰もいないよ。いや、正確には君と私以外というべきかな」
誰もいない……だと?

「な、何でですか?」
俺はなんとも間抜けな声で城島先輩に質問した。
我ながら本当に情けない声だった。
「ふむ、何故だろうね。今時はやはり本を読むという人が少ないんじゃないのかい?」
疑問系を疑問形で帰されても。
先輩はそれだけ応えるとまた本へと目をやった。
俺はとりあえずこんな事を話しても仕方ないとおもったので適当に本を取って読むことにした。
しかし、先輩は何を呼んでいるのだろうか。
英語たかフランス語だかで書いてある本を読んでいるのだが、全くわからない。
きっと俺には理解できないのだろうが聞いてみる事にした。
「先輩は何読んでるんですか?」
先輩は本を読むのをやめ俺に向き直った。
「フランス文学なんだけれど、今良い所なんだ。朗読してみようか? 勿論日本語でね」
正直日本語出じゃないと分からないので助かった。
さて、一体何を呼んでいるのだろう。期待を胸に俺は耳を傾けた。
「それじゃあ読むよ」
先輩は本を開き朗読を始めた。
「マリアはエリックのその逞しい肉棒に恍惚の表情を浮かべた」
は?
えっ? 今なんていった?
「マリアは無我夢中で叫んだ。来てエリック。私もう我慢できないのエリックは獣のようにマリアに覆い被さり……」
俺は先輩が一体何を朗読しているのか理解した。したくなかったが、してしまった。
「ストップ! ストップ先輩!」
先輩は中断されて少し不機嫌になったようだがもうどうでもいい。
なんだ!? 何をよんでるんだ!? 頼むから俺の勘違いで終わらせてくれ。
「先輩、その本って一体……」
「ん、これかい? 官能小説だね。それがどうかしたのかい?」
さも当然という風に応える先輩。
俺はこのときようやく自分が入るべき部活を間違えたのを悟った。
2, 1

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