そう遠くない未来。
人にとってロボットという存在は欠かせないものとなっていた。
髪の毛以上に小さい精度が求められる産業分野はもちろんのこと、
医療機関での介護サポートや警備、事務仕事の補助に代用秘書、
果ては子供のお守りや家庭の雑務までもが機械任せとなった。
それまでの、単純で単調な作業から開放された人々は各々の趣味に情熱を注ぎ、
社会は文化的な発展を遂げつつあった。
一方で、作業に従事するロボットが故障するなどして、
暴走に陥る事態も多く発生していた。
暴走したロボットに人為生産生命3ヶ条を遵守する事はできない。
ゆえに、人間を前にしても破壊を留まることなどできないのだ。
人命が脅かされるような事件の解決に、まずは警察が投入された。
しかし、警察の限られた装備で対処できるのはごく僅かな事例のみだった。
それ以外はロボットのエネルギー供給が途切れるのを待つか、
自衛隊の出動を待つほかなかった。
政府は、警察組織による鎮圧が限界に達していると判断し、
対処をロボットの開発メーカー自体に任せることを決定した。
よほど深刻な事故が発生しない限りは、各々の対応に任せるとしたのだ。
暴走事故への対応が収益に直接影響するようになったことで、
各企業はこの問題に対して本腰を入れざるを得なくなった。
彼らは暴走トラブル対処専門の部署を新たに立ち上げ、
一般人に一切危害を加えないという条件付きで武装化を推し進めた。
そして、有事の際はその武力を行使し、半ば強引な形で事態を収拾させた。
やがて、資金調達で融通の利く大手メーカーが中小企業から委託され、
代わりに他社のトラブルを解決するようになっていった。
中でも、霧雨重工、USロボティクス、カシマの3社は専門の子会社を設立し、
このトラブル対処事業を新たなビジネスチャンスと位置付けていた。
そして、それぞれがシェア争奪戦を展開し、
日々暴走ロボットとの戦闘に明け暮れていたのだった。
この物語は、そんな世界の一端を描いたものである。