と、おもったら死にました
「あーどうしよどうしよ、テスト全然できなかったよ~」
お前がマトモにテスト出来た試しがないだろう、という突っ込みを飲み込む優しい僕の名は田中健。
「あ~ん、このままじゃまた冬休み補習だよ~、剣道できないよ~」
と無い頭抱えて落ち込んでるのはポニテおっぱい剣道バカ女小池栄子。
頭を揺らせば揺らす程おっぱいがぶるんぶるん揺れるので悩んでくれるのは大歓迎である。
こうして学校からの帰り道、何時ものバカおっぱい女の接待が始まれば、僕は彼女の愚痴を気付かれない程度に聞き流し、これまた気付かれない程度におっぱいを凝視する。
「はあ……てかさ、学校の勉強と部活って別物じゃん? なんでテスト出来なかったからって、部活しちゃいけなくなるワケ? シンガイよね! 基本的人権の……尊重の!」
「うんうん」
「次の大会では他校のライバル達ももっと強くなってさ、私だけ置いてけぼりって酷くない? 基本的人権の尊重のシンガイだよ!」
「うんうん」
「もうやだ、シンガイシンガイ! 私から剣道を取ったら、ナ~ンもトリエなくなっちゃうのに!」
「ソンナコトナイデスヨ」
勿論、おっぱいを見ての感想である。
「健……。 健は、そう言ってくれるの?」
「モチロンサ」
「ありがとう……健って優しいね」
「ソンナコトナイヨ、エイコノホウガヤラシ……ヤサシイヨ」
「健……」
相変わらずええおっぱいしとる、僕がそれのみに集中している間に、何やら栄子の様子がおかしくなってしまった。
頬をほんのり赤らめ、瞳を潤ませ、体をちょっぴりくねらせる初めて見る女らしい栄子の姿。
「気付かない所で頭でも打ったのだろうか?」そんな風にも思ったけれど、潤んだ瞳をそっと閉じて唇を尖らせてくる様に、僕は言葉なしにドキっとしてしまった。
「これはもしや……おっぱい揉めるフラグ!?」
今まで隙がなく、手を出そうとも即効ボコられてただろう栄子の乳を、今なら存分に揉める。
夢にまで見た千載一遇のチャンス、僕は胸の高鳴りを抑えながらじりじりと栄子の乳に手を差し伸べる。
一応業務上、キスしてからの方がいいだろうか? いやいっそ、家に連れ込んでセクロスついでに乳を堪能すべきだろうか?
幾万の葛藤が僕の頭を過ぎる、ああでもないこうでもないと、考えの収拾がつかない。
「健……いいんだよ……」
踏ん切りのつかない僕を引っぱりつけるように、栄子が催促の言葉を放ってくる。
よおし……解った、とりあえずキスだキス、その後不自然じゃないように乳を揉みしだいてやる、そいでいい感じの雰囲気のまま家に連れ込んで、生乳を嫌と言う程堪能してやる!
僕の心は決まった、最早僕を止められるものは何物も存在しない、行くぞ!
作戦、実行!!!!!!!!!
『キキー!ガッシ!ボカ!』
――栄子の乳を揉みしだこうとしたその瞬間、僕の背骨に今まで受けた事のないような衝撃が、走った。
何故か道路にうつ伏せている僕、顔を上げれば、その目の前で血まみれになって倒れている栄子。
「ああ~、人を跳ねちまっただ! 道のド真ん中でナニしてるだよ~!!」
遠くからおっちゃんの声が聞こえてくる。
そういう事か……と今の状況を把握しつつも、目の前の栄子の惨状だけは、信じきれない。
おっぱいの下に何やらグロいものが見えている、何時もだったら見れたら嬉しい白いパンツも、今は黄色と赤が混じって汚らしい。
「どうせ夢だろ?」そう自分に言い聞かせる為頬をつねろうと思えば、頬のぬめった感触とつねる力もない指が、これが無情な現実である事を告げた。
「あああ110番……じゃなくて119番……いや、まずジャロだっけ? はわわわ……」
パニくるおっちゃんを余所に、徐々に冷たくなってく僕の体。
冬の外気がこんなに暖かく感じられるのは初めてだ。
たぶん、後数秒後にはおっちゃんの声も認知出来なくなるんだろう、そして栄子の姿も、金輪際目にする事が出来なくなるのだろう。
ああ……せめて最期に……栄子のおっぱいをほんの少しでも……触りた……かった……。
『トラックに跳ねられた。ボクは死んだ。スイーツ(笑)』