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サブカル気取りのキチガイ野郎

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ボクは陽気なトリガーハッピー
おもちゃの銃を振り回す
空き地のすみに獲物を追い込み
狙いを定めて引き金引くのさ
パンパンパン パンパンパン
獲物は飛んで逃げていく
ネコがにゃあにゃあ泣いている
ママには絶対内緒さ

ボクは内気なトリガーハッピー
釘うち銃を振り回す
路地の角に獲物を追い込み
狙いを定めて引き金引くのさ
ダンダンダン ダンダンダン
獲物を突き刺す無数の釘
ネコの数がまた減った
ママには絶対内緒さ

ボクは悲しいトリガーハッピー
パパの猟銃振り回す
部屋の奥まで獲物を追い込み
狙いを定めて引き金引くのさ
ガンガンガン ガンガンガン
獲物の身体が弾け飛ぶ
大きな穴を掘らなきゃね
ママには絶対内緒さ

ボクは正義のトリガーハッピー
ピカピカの銃を振り回す
玄関先へと獲物を追い込み
狙いを定めて引き金引くのさ
タタタタタ タタタタタ
これで一体何匹目?
近所にネコはもういない
ママには絶対内緒さ

ボクは狂ったトリガーハッピー
とうとうママに見つかった
ヤツらはボクを睨みつけ
あの日の空き地へ追い込んだ
パパパパパ パパパパパ
ボクの身体に穴が開く
途端に辺りが暗くなり
ママ達ボクを取り囲む

ボクはケビン17さい
おもちゃはぜんぶすてられた
しろいおへやでひとりきり
ママのかえりをひたすらまつ
チクチクチク チクチクチク
きょうもおくすりいっぱいだ
かべからネコがあふれでる
なんだかとてもしあわせだ

ママは二度と帰らない
パパは穴に埋まってる
あたりはボクとネコだけさ
右手で作った自作の銃
こめかみ目掛けて引き金引くよ
「パンパンパン パンパンパン」
何度撃っても死なないね
痛みも何も感じない
ネコにクスリと笑われた

今日も一日がまた終わる
ボクの世界が暗くなる
ネコは死んで生き返る













「お前、それでいいのか?」








どこからか声が聞こえた。
おかしい。この場所に外の音が聞こえてくるはずが無い。同様にこちらの音も扉の向こうには一切届かないはずだ。ならば、と思い私は軽い気持ちで首にぶら下がる重たい頭を右へと向けてみた。無論私以外の人物、いや、生物や物体は何も見当たらない。見当たるはずが無いにも関わらず声は確実に私の耳へと伝わり聴覚を刺激し続けるのである。

「そっちじゃない。左だ。左。頭をこっちに向けろ」

訳も分からず声の通り身体を動かすと同時に私は声の主の存在を視認する。

「・・・・・・な、どうや――」
「『どうやってここ忍び込んだんだ』だろ? 皆まで言わなくていい。お前のことは俺が一番理解しているからな」

この男。
頭ははげ散らかし口周りには髭を伸び散らかしているが、それでいて下品要素を一切免除したかのような凛々しい顔。目、鼻、口などのパーツが完全に整っていると言っても過言ではない。何より一番目に付くのがその体系だ。熟れ過ぎた果物を潰して伸ばしたような豊満な肉体【バディ】。その身体を自身の肉体【バディ】のサイズより遥かに小さいスウェットに無理矢理収めるているのだ。目測だが身長は190センチを軽々突破しているのだろうか。柔らかな肉の塊+長身。一見自分と同じホモサピエンスの類ではないのかと、寧ろ時間沸きのボスクリーチャーなのではないかと疑問を持ってしまう。だが私は知っている。この人は自身の肉体【バディ】の様な柔らかな発想の持ち主であり、自身の肉体【バディ】の様に全てをあたたかく包み込んでくれる寛大な精神の持ち主なのだ。今も私の目の前で丸太と見違う位にパンパンに膨れた両手を左右に伸ばしつつも、腰をゆっくりとぐるぐる回している。私はその動きの意味を後に理解したのだが、(どうしたケビン、悩み事でもあるのか。・・・・・・ん、何、俺は大丈夫かって? そうだな。俺の悩みと言ったら目の前で大切なブラザーが悩んでるってことだな。俺のことは良いんだ。ホラ、俺の動きを見てみな。こんなにも余裕があるんだぜ? だからサ。・・・・・・な? ほら、ほら――)正直何時見て気味が悪いと思うし、親友としては今後その『余裕の腰振り』を止めて頂きたいというのが私の本音だったりする。私はこの男をよく知っている。幼い頃から親同士の交流でいつも遊んでいた彼だ。誰とでも気さくに接し、自分は二の次がモットーの心優しき男。
彼の名は――


「よっ、吉久保さん!?」


「ケビン。今まで辛かっただろう。・・・・・・その辛さも、もうお終いにしようや。な?」

そう言いながら吉久保さんは私のすぐ隣へ腰を下ろす。少し窮屈そうに足を揃えたかと思うとすぐにそれを止め、結局両足はぐぐ、と伸ばされる。その一連の流れを目で追う私を気にしてか彼は照れくさそうに笑った。

「見た所、随分参ってるみたいだな。この部屋テレビの一つも無ぇ。こんなつまらない場所に居てどうだ? 楽しいか?」

「・・・・・・」

楽しいはずが無かった。外との繋がりを一切取り除いたこの場所が愉快なはずが無い。時間感覚さえあやふやになり自分が狂人にへと成り果てる瞬間が今来るかと思うとすかさず私の専属?の医者達が全身を拘束し右腕や首筋に注射を打ち去っていく。得体の知れない薬品だが、打たれると気が少し楽になる。その現状が逆に腹立たしくて堪らなかった。お前は俺達のモルモットだ。どうだ、抵抗してみろよ。また薬を打ってサッパリするか? と常時上からの立場を強調されているようで面白くないのだ。

「・・・・・・色々、あったみたいだな」

吉久保さんの視線が私の右腕にあった。ここには今朝に打ったばかりの真新しい注射の跡がある。私が無意識の間に見ていたのを察したのだろうか。吉久保さんはいよいよ真剣な眼差しで私の顔と注射の痕跡を交互に見て、二、三度うーんと唸った。

「これからどうするんだ、ケビン」
「どうするったって、ボクはここにいることしか出来ない」

首を横に振りながら違う違うと私を制す。

「そういうことを聞いてるんじゃないんだ。ケビン、お前はどうしたいんだ?」
「ど、どうしたいって・・・・・・そんな・・・・・・」
「現状を考えるな。お前は今何がしたいんだ? 何が望みだ? ホラ、なんかあんだろ」
「・・・・・・」
「旨いモノ喰いたい、とかもアリだぜ。 ああ、覚えてるか? 前に言ったあのホットドック屋の。ありゃ旨かったよなぁ、今度もう一度行きてぇな」
「・・・・・・」

思わず私は口ごもってしまう。したいことは沢山あるさ。二人で食べたホットドック。私だってもう一度あの店に行って同じ注文をしたい。いつか二人でナップザック片手にヒッチハイクの旅に出かけようと計画したこともあったっけ。君が練習とか言い出して、街中でヒッチハイクしだした時は恥ずかしくて堪らなかったよ。近くの海で泳ぐ約束もした。予定の二日前から海が荒れてしまいあえなく断念してしまったんだ。いつかどちらかにガールフレンドができたら真っ先に知らせるって約束もしたっけ。

「・・・・・・でも」

嗚咽を漏らしながら私は続ける。

「ボクにはもう、も、もう、無理なんだ。出来な、いんだ・・・・・・」

私は耐え切れず泣いた。あの頃の思い出も蘇り悲しみを加速させる。視界が歪み涙の雫が頬を伝う。顎まで来た時それは今までの記憶のように下へ、下へ落ちて消えてしまう。自分の顔は今酷く歪んでいるだろう。泣きながらも少し冷静な自分もいた。このままずっとここに居るしかない。泣いて状況が変わるはずが無い。そう頭で理解するのだが、それを認めたくなくて、やるせなくて、仕方なくて。

「うあっ、あああぁあああぁあ、ああああっ」
「ケビン・・・・・・」

不意にあたたかい掌が私の冷たい頬に触れる。その刹那――

「甘ったれるなぁあああああああああああああああッ!!」
「ぶぼごおおおぉおぉぉぉおおおおおぅうう!!??」

視界が右にぶれると同時に強烈な痛みが頬から頭、そして全身に駆け巡る。

「痛い! 超痛い! 痛いよ吉久保さん」
「その痛みがお前を、お前自身を強くするのだよケビン」
「な、なんだって!? あ! なんだ・・・・・・?」
「その疑問。俺の言葉が答えだ」
「両手、いや両足。・・・・・・違う、全身だ! 全身に何か、力があああああああ!?」
「た、耐えるのだケビン。その辛さを通り越しての己の強さよお」
「吉久保さん! うあああ! 吉久保さあああああん!!!」
「ケビンンンンンンンンン!!! 右腕に意識を集中させるんだ!」
「右腕だって!? はあああ! こ、こう? これでいいの、吉久保さん!?」
「上出来だ兄弟! ならばやる事は一つ! その右腕で」
「み、右腕で――」
「この忌々しい白い壁を――」

『吹き飛ばせえええええええええええええええええええええ!!』

ドカーンガシャーン

「吉久保さん、見えたよ」
「『光』が、『光』が見えるぞ兄弟!」
「吉久保さん走ろう! さあ、手を――」
「行け」

「え?」

「俺のことはいい! ケビン!! 先に行けええええい!!!!!」
「そ、そんなっ!? どうしてだよ、吉久保さん。一緒にホットドックを食べに――ハッ!!! もしかして!!!」
「そうだ、ケビン。俺の力を全てお前に注ぎ込んだんだ。俺の身体にボロが出てきても・・・・・・がハッ!!」
「吉久保さん! 吉久保さん! そんな、嫌だよ死なないで。一緒に、海行こうよ!」
「どうやら俺には、もう出来ないみたいだな。ほら追っ手がやってきたぞ! 俺のことはいいから先に――」


「うあぁあああああああああああああああああ!!!」
「ぶぼおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

「痛ゥ! ケビン、何を――はっ!?」
「そうさ、ボクの力を吉久保さんに注いだのさ! もちろん全部なんて馬鹿な真似なしてないよ」
「なるほど、しかし、お前よくそんなことが出来たな」
「吉久保さんのこと『助けたい』って思ったら体が勝手にね。第一吉久保さんを置いて一人でなんて考えられないよ」
「ケビンお前・・・・・・お前ってヤツはとんでもない大馬鹿野郎だな!!」
「吉久保さんこそ!!」
「ほら、んじゃさっさとおいとまするぜ!!」
「了解!! 吉久保さん!!!」
「なんだケビン!!」
「愛してる!!!」
「俺もだ!!!!!」




『HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA』






終劇

14

まどのそと 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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