あの頃のわたしは自分の中では普通のことだとおもう。でも、他の人たちからすれば波乱万丈な人生にみえるらしい。
お金がなくていつも貧乏だった。好きなものは買えないし、バースデーケーキだって見るだけのものだった。そんなわたしは小学校、中学校の不平不満を爆発させたように文字通り典型的な反抗期を迎えた。
ゾロゾロとわたしを先頭にみんな着いてくる。
「………」
「ひぃ!」
わたしが睨むだけでリーマンが逃げていく。いい気味だ。金持ってるだけで偉いなんて間違ってるんだよ。バーカ。
「………」
一人だけ。みんなが避けている真ん中の道に立ち塞がっていた一人の少年がいた。その少年はどこか空虚な空を見つめてわたしは眼中になかった。それが気に入らなかった。わたしがいるだけで注目の的になるというのに少年は注目するどころか視界にすら入ってなかったのだ。
「おい」
鋭い声で少年に話す。
それで初めて気づいた。
「ん。何?」
「なんであんたはわたしを見てないんだ?」
それはとても簡潔に答えた。
「それは……キミよりこの空が面白かったから、かな?」
「………」
やはり気に入らない。
「? どうしたの? 近寄ったりしてさ?」
「こうしたかった」
バチン!
小気味いい音が町中に広がる。自分の手がビリビリする。
「どう?」
少年はフラフラよろける。わたしはにやける。ざまあみろ、と心の中でほくそ笑んだ。どうせあんたも貧乏人を見下してんだろ? 金を持ってないだけで、好きなものを買えないってだけで同情してるんだろ? それが目障りだ。だが、彼がとった行動は思いもよらないことだった。
「大丈夫?」
「はぁ?」
平気そうな顔してわたしの手を触る。
「なにやってんだあんた? 意味わかんね~し自分の心配でもしたら?」
バチン!
もう一撃、喰らわせてやった。こんな事すれば余裕も無くなるだろう。早く泣いて謝れよ。ごめんなさいって、勘弁してくださいって、泣きじゃくって顔がくしゃくしゃになるまで謝れよ。それでもやめねえけどな。
「ほら、なにやってんだよ。もう一撃喰らわすぞ?」
「できるなら、やってみなよ」
反抗の目を逸らさない。
バチン!
むかついた。
「てめえ……! さっさとあやまりゃいいんだよ! 気に喰わねえんだよそのツラァァ!」
わたしは知らない間に少年のペースに乗せられていたのかも知れない。それとも自然にそうなっていたのかもしれない。がっしりとわたしのぶった手を掴む。
「辛いのは、キミだけじゃないんだ……キミは間違ってる」
「!! う、うるさい!」
掴んでいた手を振り払う。
「ルーさん?」
後ろの幹部に声を掛けられる。
「あいつ、気にいらねえからやっといてくれ」
「わかりました。おい」
他の奴らが少年を囲う。
「ちょっとこい」
強制的に裏路地に連れて行かされる。これでいいんだ。これで、次ぎあったときには目を逸らすだろう。わたしに注目するだろう。
『辛いのは、キミだけじゃないんだ……キミは間違ってる』
それでも次の言葉が出たときには、少しは見直してやってもいい、かな。
「ルーさん? なにニヤけてんすか?」
「う、うるさい! 先行くぞ!」
ぞろぞろと歩くわたし達はまるで闇で行進する百鬼夜行。