「屈服の作法」
「隣の国と、戦争をなされるのですか?」
修道女は、若き公爵に質問した。
「まぁ、戦争といっても安易に武力を用いるつもりはないですがね。大軍を国境線まで動員して圧力をかけ、まずは降伏勧告をする。それでかの国が承諾をしなければ、要塞をまずは攻め落とし、その上で首都を包囲して再度降伏勧告をするまでです」
公爵は、淡々と質問に答えた。
「閣下は今現在、百里四方にもわたる広大な領土を自らご統治なされ、大国といわれるこの国におかれましても王をも凌ぐほどの権勢を誇っておられます。にもかかわらず、何ゆえ王様に何の許可もなく、勝手に隣国に戦争を仕掛け、領土を勝手に広げようとなさっておられるか、ということに私は疑問と興味を持っております」
修道女は怒るでもなく、静かに尋ねた。
「貴女は神にお仕えなされる身の割りに、俗世のことに興味の深いご様子だ。よろしい、お話いたしましょう」
公爵は、金銀糸で美しく刺繍された黒い外套を纏い、これまた豪奢に金銀宝石で飾り付けられた椅子に深く腰掛けなおした。そして右を向き、左を向き、無言で配下の者たちの意向を確認した後、ゆっくりと説明を始めた。
「先代のわが父の頃より、我々は度々周辺の小国に兵馬を進め、あるときは話し合いで降伏させ、またあるときは会戦を交えて屈服させてきました。しかし、その多くはその国を治める王や領主が、君主たる振る舞いを維持しようとした結果、国力にそぐわぬ無理を重ねたために国民に重税と賦役を課したために国家として破綻しているような国ばかりでした。父はそうした国に住む人たち、あるいはそういう隣国から逃げ出してきた人たちの要望に応えて、大軍を繰り出して屈服させて我々の領土として編入し、その上で新しい法律・新しい税制・新しい代官を定めて人々の暮らしを安んじるように努めておりました…」
公爵はそういうとため息を吐き、ちらりと天井に目をやった。
修道女はその様子を、静かに眺めていた。
「しかし、当たり前の話ですが、このような我々の振る舞いを本国は良くは思ってないようでして、このような形で隣国を併合するたびに、常に謀反の疑いをかけられるようになってしまいました。これまでは新しく領地とした地域からの税収の大半を本国に献上することで、我々に謀反の心がないことを明らかにしておりましたが、その父が死去し、私が後を継ぐようになると、本国からの圧力はさらに強くなり、献上金の増額を求めるようになってきました。このまま本国に従うにしても、あるいは本国の圧力を撥ね退けるにしても、このままではどうにもできません。そこで、隣の国の持つ良港と肥沃な土地、そして働き者の民衆の力が必要となっているのです」
修道女はため息をつき、天を仰いだ。
しかし、すぐに振る舞いを改め、身じろぎもせず公爵の目を見つめた。
「恐れながら、閣下に申し上げます」
「いかがなされましたか?」
公爵もまた、身じろぐことなく、まっすぐにその修道女を見た。
「正直に申し上げて、閣下は自分のお立場を守るために、多くの民衆を戦争に駆り出し、これまでの国に比べてはるかに良く治まっている隣国を攻めようとしていらっしゃると私には思えます。果たして、このような国に対して、今までのような方法が通用するのでしょうか…」
「無論、今回は今までとは違う国であることは良く分かります。しかし、今回の国は、今までとは遥かに豊かな国で、その一方、遥かに領民の数が少ない国です。そこに、大きな隙があると私は思っています」
「私には分かりません。閣下は、その国に対して、どんな隙があるとおっしゃられるのでしょうか?」
公爵は、にやりと笑って見せた。
「国土が肥沃で、人々に生活の不安がないにもかかわらず、人口が一向に増えない国というのは、人々によりよい生活を求めようという意欲が乏しく、産業が昔のままで停滞しており、その結果として人々が子孫を残そうとしない国に他なりません。その理由は、多くの場合は税金や賦役の負担が重いために人々に冨が蓄積されないこと、そして宗教や道徳によって人々の生活ががんじがらめに縛られ、国民が王や神の権威を疑おうともしないところにある。そのように私は思っています」
公爵の持論に対して、修道女は眉を顰めて反論した。
「これは閣下、異なことをおっしゃられます。国民が毎年安定して生活を行うためには、国民にあえて余分の冨を持たさず、領主が穀物や財貨を大切に管理した上で、不自由する時は分け与え、余るときは保管し、あるいは領主の権限で他国に売却して金銀に換えて保管することは領主の最大の務めです。また、国民が国王や神様を大切にすることによって、人々が余計な心配をせず安心して日々の仕事に取り組むことがで切るようになり、揉め事も起こらず国内を安定的に運営することができます。いずれも、国家を運営する上では大切なことだと私は思われます」
修道女の迫力ある意見に、今度は公爵の側近たちが眉を顰めた。
だが公爵は、笑顔を絶やすことはなかった。
「まぁ、そこは貴女のおっしゃられる通りだと思います。しかし、それはあくまで国の中を治めるための小細工に過ぎません」
「では他に、何がいるとおっしゃられるのですか?」
「他に必要なのではなく、自分の国を治めるために、国民に余分の冨を持たせずに取り上げ、その上にその冨をただ蓄積するだけで投資しないような国では、いざ外敵に襲われれば、いともたやすく敗れ去ってしまうということです。おそらく隣の国は、兵力も我が方の十分の一以下、武装も軍事に対する知識も貧弱で、とてもわが国と戦えるだけの戦力は有していないでしょう。その最大の原因は、国民に富の蓄積を許さなかったことです。凶作の時は国が助けてくれる、どんな難しいことも王様が何とかしてくれる。真面目に一生懸命職務に全うするとはいえ、自ら己の生活を豊かにしようと努力することなく、ぬるま湯に浸りきって平和ボケをした国民の国など、この数十年にわたって修羅場をくぐってきたわが国と、我が強兵の敵ではないということです」
「作用!」
「まことその通りでございます殿下!」
左右に控える側近たちは、口々に公爵の言葉に同意を示した。
「殿下…」
修道女は、頭を深々と下げた。
「実は私も、元より小さな国ではございますが、一国を治める領主の娘でございます。ゆえあって修道院に預けられておりましたが、このたび父の容態が思わしくなく、それゆえに父の見舞いにと国に戻る最中でございました。そんな折に、この地を治めるご領主様が若く立派な方であると風の噂にお伺いしておりましたゆえ、恐れ多いことを承知の上で、後学のためにと思い、謁見を申し込んだ次第でございます。本当に私のようなみすぼらしい姿の修道女風情にお会いいただけるものかと思っておりましたが、今こうして謁見を許され、恐れ多くも閣下のご高説を賜ることができ、大変に感謝をしております」
「お気になされることはない。私は、貴女が当然お持ちでいらっしゃるご疑問に対してありのままに解答したまでのことです。どのような事情があるにせよ、領主が領民に賦役を課し、あるいは他国に対して迷惑をかけるようなことがあるときは、領主にはその理由を説明する義務があると思っております」
公爵は、笑顔で修道女に語りかけた。
「いずれにしても、もし港を使われるならお早めに立たれたほうが良い。我々は今年の麦の刈り取りを待って、その後兵馬を編成して大軍を以ってかの国の国境線まで兵を進めるつもりです。戦争が始まってしまえば道は閉鎖され、港からも船は出なくなります。故郷にたどり着くどころか、かの国の領内で立ち往生してしまうことにもなりかねないですからね」
「…閣下、お心遣いありがとうございます」
修道女は、もう一度深くお辞儀をした。
「なに、人様に迷惑をかけるのですから、これぐらいは当然のことです。我が方の10ある軍団のうち、7つの軍団を動かすわけですから、場合によっては、我々だけでは兵士たちを完全には制御できなくなる恐れもあります。もしかの国が抵抗をするようであれば、場合によっては兵士たちが略奪などを始めてしまう恐れも出てしまいます。そうならないように戦争の早期終結のために最善の努力はしますが、こればかりは完全に抑えられるとは限りませんので…」
「略奪…ですか?」
修道女の顔が、曇った。
「ええ、昔から「人の心を攻めるは上策、城を攻めるは下策」という言葉がありますが、これは単に城塞を攻撃した時の兵馬の損失の問題だけでなく、わざわざ農閑期に徴兵した兵士たちに、命がけで働く場所を与えてしまった場合、兵士たちにその見返りを与えなければならなくなる点についても、危惧しているわけです。無論速やかに領主が報酬を与えられれば良いのですが、ただでさえ戦場で気が立っている状態では、ドサクサに紛れて略奪などをする兵士たちが出ることも恐れなければならないわけです。そこまで考えれば、なるべくならば兵士たちは威嚇のためだけに使い、実際には武力行使はしないほうが、お互いにとって良い結果になるというわけです」
修道女は、ふむふむとうなづき、そして質問を続けた。
「これは、下世話なことかもしれませんが…閣下の言うところの「軍団」とは、一体どれほどの兵力を指していらっしゃるのでしょうか?」
「そうですな…」
公爵は、ちらりと側近たちに目線をやった。そして、特に異論が無さそうなのを確認してから、答えはじめた。
「我が方では、兵10人を持って一つの小隊とし、小隊を5つ束ねて一つの中隊とし、中隊を5つ束ねて一つの大隊とし、このような大隊を5つ束ねて副将が管理し、
この副将2人と4人の軍師を束ねて一人の将軍が指揮する軍団となります。軍団一つで2500人強。今回動員する兵力は歩兵1万8千人、騎兵2千、戦車100両、輜重物資を運ぶ人足5千人でおよそ2万5千人程度という程度でしょうね」
「一つの軍団で2500人、これだけの兵を指揮できる将軍が10人も居て、これを補佐できる参謀が40人もいるとなると、閣下は相当に多くの有能な人材を抱えていらっしゃるということなのですね」
修道女は、特に驚きを見せることもなく、静かに感想を述べた。
「貴女の仰るとおりです。恐れながら私には、智勇に優れ当家への忠誠深き部下がまず100人を以って下りません。彼らに常に働き場所と報酬を与え、互いに切磋琢磨させて仕事をさせるからこそ、我々は常に強者としての地位を保つことができるのです」
「その通り!」
「閣下のおっしゃられるとおりでございます!」
左右の群臣たちも口々に、公爵の言葉に同意した。
「わざわざこのようなご質問にまでお答えを賜り、本当にありがとうございました。本当はもっと閣下のご高説を賜りたいのですが、そろそろ私はお暇をせねばなりません。本日は私ごときのためにお時間を割いていただき、本当にありがとうございました」
「構いませんよ。私も貴女のおかげで、久しぶりに楽しいお時間を過ごすことができました。感謝いたします」
公爵の言葉に対して修道女が改めて謝辞を述べると、公爵は路銀として銀貨の詰まった袋を薦めた。一度は固辞したが、金額を半分にすることで同意し、修道女はその銀貨を受けとった。
それから間もなく、秋を迎えた。
麦の収穫が終わると、公爵は直ちに徴兵を行い、大軍を隣国の国境線に進めた。
国境線にはすでに要塞が築かれ、旗指物がはためき、臨戦態勢がとられていた。
「そなたたちの司令官に話がある」
公爵が馬上より要塞に向かって叫ぶと、間もなく鎧兜に身を包んだ一人の青年が現れた。
「私はこの国の王子である。本軍の指揮は私が取っている。公爵殿、何かおっしゃりたいことがあるのなら、私が王に代わって話をお伺いする」
「ならば話は早い。それがしは貴殿らに対し、我が国への降伏を求める。大人しく降伏すればそなたたち全員の命を保障するが、もしも降伏しないのならば容赦はしない。あらゆる手段を使って貴殿らの城を攻め落とし、力づくで我が方の領土として併合するつもりだ」
公爵は大軍を背後に従えて堂々たる態度で降伏勧告を行ったが、王子もまた全く動じる様子を見せず、堂々と応えた。
「申し訳ないが我々は独立の誇りを持ちこそすれ、他人の下に降るようなつもりは毛頭ない。降伏には応じるつもりはないし、最後の一兵まで戦う覚悟は皆できておるぞ」
「そうか…」
王子の威風堂々とした態度に、公爵は依然として余裕の態度を見せていた。 しかし、その背中には、冷や汗がひと筋ふた筋と伝っていた。
「…まぁ、そう勇ましいことを言ってみたいところだが…」
王子は、そういうとすっと手を上に挙げる。要塞の城門が開いた。
「おおっ」
「なんだあれは?」
その姿を見て、公爵の側近たちからどよめきが起こった。
大軍の目の前には、ただ一騎。
「あなたは、あのときの…」
芦毛の馬にまたがるは、ドレスに身を包んだ女性だった。
鎧兜も、剣も身に着けず、まるで丸腰。
しかし、公爵には分かっていた。
姿形は違えども、あの時の修道女が、そこに居た。
「閣下をだますようなことをして、申し訳ございませんでした。しかし、閣下が我々の国に兵を進めるということを以前から聞いていて、その実を知るために、わざと修道女の姿をしてお伺いいたしました。その節はご無礼をいたしまして、申し訳ございませんでした」
「はっはっ…私も一瞬驚きましたが、ここであなたの真のお姿を拝見して、事情は良く理解できました。しかし、このような美しいお姿で私の前にお出ましいただいたということは、何か私に重要なお話があってのことと拝察いたしましたが?」
公爵がにやりと笑うと、王女はにこりと微笑んだ。
「はい。申し訳ございませんが、私たちは閣下の軍門に降ることは潔しといたしません。もし、閣下が力づくでわが国を侵すというのなら、我々の将兵、国民皆残らず、最後の一人になるまで閣下にお手向かいいたします。しかし、もし閣下さえお認めになられるのでしたら、私の身をその証として閣下に捧げますので、貴国とわが国との間に姻戚関係を結び、互いの独立を保ちながら互いの領土を行き来できるよう、対等に手を結ぶ、ということでご容赦をいただけませんでしょうか?」
「ほう…」
王女の提案に、公爵は顔をほころばせた。
「貴女はすなわち、私の妻になるから互いに友好国として協力しよう、とおっしゃられるのですな」
「大国の公爵である閣下に対して、小国の王女がご無礼を申し上げているのは百も承知です。しかしながら、我々にも意地はあります。国王は国あっての国王です。たとえ娘を見捨てようとも、国を捨てることは王にはできない、ということでございます」
「国なくして王ではない、か…」
公爵はクスっと、笑いを浮かべた。
そして、静かに答えた。
「貴女の心意気は良く分かりました。しかしながら、いかに小国とはいえ、一国の王女が、王孫とはいえ国王でもなく、地方領主にすぎない私ごときの妻になるというのは、それで本当によろしいのか?」
「はい。私は守るべきと家と国民のためには、体面など気にはいたしません。それに…」
「それに?」
「私の見るところ、閣下は地方領主で終わられる器とは思えません。私は、閣下がいずれ大国の王になられるのではないか、とも思っております」
王女の毅然とした態度ときっぱりとした言葉に、公爵は笑いをかみ殺しながら微笑んだ。
「おぉ!」
「なんと勇ましい!!」
左右の群臣もまた、王女の言葉に対して口々に歓喜の声を上げた。
「貴女の申し出、承知した。このようなめでたい話は、兵馬を従えて進めるにはあまりにも無粋。今日のところはいったん兵を引き、後日互いに使いの者を立てて子細について話し合いましょう」
そう言って公爵が右手を上げると、地平を埋め尽くすほどの大軍が、一斉にくるりと反転した。
「それでは、またお会いしましょう。次にお伺いする時は、宝石をちりばめた婚礼衣装一式を貴女のためにお持ちいたしましょう」
「閣下、謹んでお待ち申し上げます…」
こうして、二万を超える大軍は、ただの一戦も交えることなく、隣国の領土から綺麗に立ち去っていったのである。
「ところで王子…」
「何だ、爺?」
「姫さまは、「我々の将兵、国民皆残らず、最後の一人になるまで」と、おっしゃっておられましたが…そんな話は、一応大臣であるこの私もついぞお伺いしたことがございませぬ。一体いつの間に、そんなことが決まっておりましたか?」
「あぁ、そのことか…」
王子は大臣に対して、目配せをした。
「…どうせ、姉上が今さっき決めたことであろう」
「何ですと!」
王子のその言葉に対し、大臣は飛び上がらんばかりに驚いた。
「まぁ聞け爺。姉上は敵地に乗り込んで、公爵殿が実際には一戦もするつもりはなく、ただ脅しのために大軍を動かしていることを突き止めておられた。初めから公爵に兵を用いるつもりはなかった。とはいってもわが国の兵力はどうかき集めても二千程度。もし公爵が本気になればこの程度の小勢ひとたまりもない。そこを承知の上で、姉上は自分の身と引き換えに、わが国の独立だけは守ってくれたのだ。向うが欲しいのはわが国の持つ港湾と穀物。わが国が欲しいのはこの国の独立と向うの進んだ技術。同じこの国を売るにしても。安く売り叩かれぬように、精一杯に背伸びをして見せていたのだ。そこが分からぬようでは、爺も、耄碌したといわれても仕方はないと思うぞ」
「な、なんと…」
王子の言葉に、大臣は目を白黒させた。
「私とて良く分かっている。父王はすでにこの世になく、実際には国民は父上の失政による重税で苦しんでおった。しかし、収穫高の5割もの税金をかけながら、実際には農業の方法は昔のままで、土地が遥かに豊かなのに他国と同じ程度しか穀物が取れず、国家は財政難にあえいでおった。私が後継者となることに群臣誰一人文句は言わなんだが、それは長男である私が後継者であれば、とりあえず自分の身は安泰という消極的な発想でしかなかった。公爵殿の言うとおり、わが国は、皆が目先の平和のことしか考えないから、成長の機会を失い、豊かな国土と天然の良港を持ちながら、貧乏な生活に甘んじていたのだ」
大臣は、返す言葉がなかった。
「今、見ただろう。我々はたった二千の兵士に青銅の槍と牛皮の鎧も満足に与えられなかったのに、向こうは二万の将兵が一兵卒に至るまで鉄の鎧と槍で武装していた。我々が、自分たちの殻に閉じこもって貧乏ながらも平和な生活を謳歌していた間に、他国は血で血を洗う戦乱と苦しみと努力によって、我々より遥かに進んだ国を築いていたのだ。我々は、外の世界に、あまりに無頓着すぎたのだ…」
王子の話を、大臣はうなだれながら、聞いていた。
「しかしながら…」
王子は静かに兜を脱いで、滴り落ちる汗を拭った。
「いくら我が国のためとはいえ、姉上を他人のものにしてしまうのは、いかにも惜しいな。もし、これが私の姉上でなければ、俺が姉上を妻として、大国の王になっておったかもしれないのにな…」
叶わぬことと知りつつ、一言、ぽそりと呟いた。
屈服の作法(作:通りすがりのT)
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「屈服の作法」採点・寸評
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1.文章力
70点
2.発想力
80点
3. 推薦度
80点
4.寸評
出来の良さが光ります。
キャラクターそれぞれの思考に納得がいき、また、的確な描写が戦場の風景を頭に思い起こさせてくれる、いい文章です。この公爵は確かにいいトコまで行くだろうな、と思えました。そして、修道女に扮して情報収集した王女の器量の大きさにも惹かれました。続きが読みたいくらいです。
ただ、やはり台詞が多いのがネックになっています。ほとんどのことを台詞で説明してしまっている印象が拭えません。少し工夫をして、その説明している事柄をキャラクターの「目」に見せるようにすれば、自然と地の文の量が増えてくるのではないでしょうか。この物語の場合、序盤、室内での会話が続きますが、途中で部屋の外にキャラを出してみる等してみれば良かったかもしれませんね。
せっかく小説の体裁をとっているのですから、地の文でももう少し遊んでみて欲しいです。そうすれば緩急がついて読みやすくなります。チェンジアップの後のストレートが効果的なように。
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1.文章力
60点
2.発想力
40点
3. 推薦度
50点
4.寸評
ご丁寧に各所解説してくれた解説作品でしたが、場面を想像している読者としては「喋りすぎ・漏らしすぎではないか」「作品的にそこは突っ込まなくてはいいのではないか」と思った部分が多々ある作品でした。
作者様の基本レベルは高いと感じております。それ故、プロの場では落とされる、アマチュアとしては平均レベルの今作はもの足りなさを感じました。今後に期待します。
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1.文章力 70点
2.発想力 80点
3.推薦度 80点
4.寸評
いやー、面白いです。個人的にこのような作品は大好きなのですが、よくもここまでディテールに拘れたものです。ただ、恐らく普通に読む分には前置き、つまり、隣国の経済状況やらの描写が長く、読み疲れてしまいそうではあります。少し削ったり、会話文でなく、地の文ですっきり説明とかすると読みやすくなるかもしれないですね。
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1.文章力 65点
2.発想力 75点
3.推薦度 80点
4.寸評
文章に関しては申し分ないといえるだろう。
少々段落、セリフ共に長めのものが多いのだが、文章力が高いおかげでそれほど疲れを感じることなく読めた。
ただし、規約にある(あくまで目安ではあるのだが)規定の文章量を、それの約二倍にも膨れ上がらせたのはどうだろうか。
これはもうショートショートではなく、短編小説の域である。削れる部分が無かったとは思えなかったので、構成が企画に適していないという意味で文章力の点数を引かせてもらった。他の部分が申し分ないだけに、もったいないと感じてしまう。
内容は戦記もののワンシーンを切り取ったようなもので、登場人物二人の談議が中心に進んでいく。そのセリフのほとんどが状況説明や戦略の説明を主にしたものであるのだが、にも関わらず公爵と修道女のキャラはしっかり立っていると感じさせられた。
話の締め方にも、そこまでの流れにも破綻を感じさせず、ワンシーンを切り取ったと言ったが、これ一つで短編として読ませるには十分と思える完成度はあった。
今回は企画との不整合を感じたのでこの点数になったが、構成がよりよければもっと上の点数が付いただろう。作者の別の話を、ぜひとも読んでみたいと思わせられる内容だった。
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1.文章力 70
2.発想力 50
3. 推薦度 60
4.寸評
人間ドラマが描けている。雰囲気が面白い。
正直、途中までは退屈の二文字だったのだが、読み終わってみると素敵な余韻に浸れた。
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各平均点
1.文章力 67点
2.発想力 65点
3. 推薦度 70点
合計平均点 202点