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第八話「ドンジャラ良江の探索/伊藤さんの腰つき」

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前回のあらすじ画・飯倉さわら先生
19, 18

  



 敗者復活戦対局室内で衆目監視の中、下半身をさらけ出すという辱めを受けている伊藤であるが、本来このような措置が取られることはない。
 対局者の途中退場や棄権といったハプニングは勝負熱を奪うこととして忌み嫌われ、大会運営の腕が疑われることにもなる。そのため、病人や怪我人、その他諸々のトラブルに対しては、ドンジャラ良江の指揮のもと、適切な対応が取られていた。常駐している医師団の手により、地区予選からの疲労と怪我で消耗の激しい「食いタンのみのタモツ」には痛み止めの注射と点滴が与えられ、また、普段から血を吐きすぎている「喀血の中(かっけつのちゅん)」には大量の輸血が施されていた。

「人数合わせの伊藤」の場合においても、着替えが必要だと言われれば即座に用意し、トイレにも行ってもらい、スムーズに対局に入ってもらうことが理想である。ルールに抵触するようなこともない。
 それでは何故伊藤には着替えが与えられず、下半身裸で麻雀を打つ事態に陥っているのか。
 それはドンジャラ良江の嫉妬のためである。
 幼い頃から異性に相手にされず育った彼女にとって、若くて美しく、男たちにちやほやされるような女は全て憎むべき対象であった。世界中継されているからといって遠慮する必要などない、いやむしろ、中継されるからこそ辱めなければならない存在であった。

「カメラには伊藤の尻を追いかけさせなさい。その先の展開はあなたたちに任せます」と良江は撮影班に命令を下してから、自身の結婚相手の探索活動に戻る。良江のいる総合監視室では、参加者全員を追いかける監視カメラの映像がモニタに映し出されている。その中の一つでは、「喀血の中」が輸血されたばかりなのにまた血を吐き出して苦笑していた。


 * * * * *


「あの、このまま座ると、椅子が汚れてしまうんですけど……」
 結局「人数合わせの伊藤」は上半身に薄手のシャツを着直したが、下半身は丸裸という姿のまま、無情にも始められた対局に臨んでいた。ろくに小便も拭けないままだったので、そのまま高級な革張り椅子に座ることを彼女はためらっていた。
「ではこの椅子はお下げしておきましょう」
 そう言うと警備の黒服の一人が椅子を取り下げた。
「立ったままでは他の方の牌が見える可能性もありますので、姿勢を低くしていただけますか?」
 伊藤は卓の前にしゃがみこんだ。その手は股間を覆っているが、臀部はどうしても隠しきることは出来ない。
「ああ、それはいけませんね。卓の下で自由に牌のやりとりが出来てしまいます。卓に手をついて、腰は後ろに引いてください」
 言われた通りにしながら伊藤は気付いてしまう。いわゆる「立ちバック」という体位に似たその体勢では、彼女の陰部は後ろ正面に丸見えになってしまうのだ。慌てて手で隠すが、卓に手をつかずにその姿勢を続けていると、伊藤の細い足首でははすぐに耐えられなくなってしまった。それに麻雀を打つためには両手で股間を隠し続けることは不可能である。
 彼女の下半身を、遠隔操作によりテレビカメラは執拗に撮影し続けている。あくまで対局を撮るためであるのだが、牌を撮るためにはどうしても彼女の尻も映さざるを得なくなってしまう、という建前を振りかざして。
 伊藤は羞恥心により、ジョニーとバベ男は伊藤の痴態によって刺激され、どうしようもなく猛り立つ男根の雄叫びにより、正常心を保つことは出来なくなっていた。しかしそれでも、麻雀に人生を捧げてきた彼らの手は自然と牌をツモり、捨て牌を選び出している。

 姿勢を保つことに疲れた伊藤が尻を落とすと、カメラはそれを舐めるように下方から映し出す。慌てて伊藤は尻を高く上げるものの、それも同じくカメラが追う。汗と小便とそれ以外の液体で濡れ始めた彼女の陰部と肛門を伊藤専用のカメラは一秒も逃すことなく録画し続けている。
 小刻みに震える体から絞り出した涙声で伊藤は黒服に頼み込む。
「このままでは、立っていられません……。どうか、支えるだけでも、お願い、お願いします……。そして出来れば、あそこを、隠していただけませんか……」
 承知しました、と黒服の一人が伊藤に駆け寄り、楽に姿勢を保てるように手を添える。左手で乳房を下から支え、右手では陰部を包み隠すように密着させた。
「ありがとうございま……えふぇンン、ポン!」
 思わぬ指先の感触に嬌声をあげた伊藤だが、すぐにポンで誤魔化して事なきを得た。

 しかし彼女はまだ快楽の園への一歩を踏み出したばかりだった。緊張感と足の疲れが限界に達していた彼女の体は、脳からの指令を無視して勝手に動いていた。さっきまでカメラを避けるためにしていた、腰の上下運動を繰り返していた。黒服の律儀な手は定められた一点を動こうとはしない。その結果、彼女の陰部と黒服の指は何度も何度も何度も何度も接触し続けた。
「ン……んん、んぁ、あああああ、ンポ、ん、ンポ、欲しい……、あ、いや、ポンです……」
 懸命に声を押し殺す彼女だが、時折耐えられなくなって言葉を漏らす。その度に鳴き続け、自然と彼女の手牌はトイトイの形に近づいていく。

 そうして鳴いた牌を除いた彼女の手牌はたった一牌になっていた。
「裸単騎だね」とジョニーが言う。
「ほんとだ、裸だ!」バッベボン・B・バベ男が鼻息荒く叫ぶ。
「え、裸になるんですか?」
 疲労と快楽とテンパイの興奮が混ざり合って判断力を失っていた伊藤は、いそいそと上半身に残った衣服を脱ぎ始めた。
「裸だ」ジョニーが裸を肯定する。
「裸だ! 裸だ!」バベ男は自身もスーツを脱ぎ捨て裸を倍加させる。
「裸でございます」黒服が裸を再構築する。
「ロン! 東、トイトイ、ドラ2でマンマン、じゃなくて満貫です!」
 バベ男がボビビビュンし終えたペニスを露出させると同時に捨てた牌で、伊藤は満貫手をアガった。倒された牌は、彼女の控えめな乳房の上で自己主張する乳輪に似たイーピンであった。

 ちなみに「流しのガンマン・ジョー・ジョニー・ジョー」はその早撃ちの腕前を生かして既に十六連射を終えていた。


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