明と慧が通う大学の保健医を務めるマーガレット・ケンウッドは、明たちが保健室を後にした数時間後に、ようやく冷静さを取り戻していた。
そして、一通りの事務仕事を終えたマーガレットは自分の職場である保健室のデスクで喫茶店「サンタナ」特製の自家焙煎珈琲を優雅に楽しんでいた。
片手には、香ばしい珈琲豆の香りがする珈琲が注がれたマグカップ。もう片手には、野尻明の健康診断の結果が記された書類。
マーガレットはその書類に記載されている、あるワードを見つめながらほくそ笑んでいた。
その書類にはこのような言葉が記されていた。
‘遅発型発達緑内障による中途失明’
「I finally discovered Helen~♪(ヘレンちゃんみ~つけた♪)」
マーガレットは上機嫌で座ったままオフィスチェアを回転させると子どものようにはしゃいだ声を出した。
そして、自分の脳内を駆け巡る感激の波を堪能していたのだった。