僕が感じのいいレストランで食事をしていると
後ろの方から怒鳴り声が聞こえる。
何事だろうと思い、ふり返って見ると
いかつい男が上品な女性を罵倒している。
「この店には犬をいれるのか?」
そう言って男は近くにいたウェイターを睨みつける。
哀れなウェイターは
「何の事なのかさっぱりわかりません」
と消え入りそうな声で答える。
二人の男達が騒ぎあってるのを横目に僕は女性に近づく。
彼女はよほど怖かったのか、震えながら床にうずくまっている。
僕が優しく
「大丈夫ですか?」
と手をさしのべると彼女は
「ワン!」
と鳴いて僕の手のひらに柔らかい肉球をのせる。