トップに戻る

次 >>

第一話「オナキング誕生」

単ページ   最大化   

 俺の名はヤラハタ シゴキ。二十歳の童貞でチャームポイントは性欲だ。
 そんな俺が何の因果か、もう3日もオナ禁してるんだ。
 こんな拷問を受けるはめになったのは、俺がいつもの日課をしていた3日前のことだった。

【3日前】
シゴキ「あーあ、寸止めするつもりが出ちゃったよ。やり切れねえ思いは残るけど、今日13回目だしなぁ……ん?」

 何か匂うなと思った次の瞬間、光の中からオナラのようにモワっと人が現れた。
 ありがちなヒロインの登場シーンにもかかわらず、俺は驚きのあまり立ちすくんでしまった。なんと現れた人物が、どちらかというと男っぽく見えてしまったのである。
 まずお乳がない。オーケーオーケー、貧乳大歓迎さ。次に女の子にしては身長がでかい。170ぐらいかな? オーケー、今どき珍しかない。しかし頼みの綱の服装が、どう見ても男性用だったのである。現実は厳しい。

 男は動かない。お約束で怪我をしているようだ。
 日々の妄想を欠かさぬ俺は、突然怪我をした女の子が現れたならば、例え吸血鬼だろうがロボットだろうが、どんな主人公よりも早く手当てする自信があった。
 しかし今回現れたこれは男である。
 俺は見なかったことにしたかったが、自分の部屋の出来事なのでしかたなく話しかけることにした。いやいや。

シゴキ「な、何ですか!? つーか大丈夫ですか? 何で半裸の少女じゃないんですか?」
???「うぅ・・・・あ、あなた・・・救・・・・い」
シゴキ「え? なんて?(うわ、イケメンだ死ね)」

 それだけほざくと絵に描いたように気絶した。本当に首の力が抜けてカクンってなるんだね。ハハハ。
 俺は手当てをしたくなかったので救急車を呼んだ。
 病院で色々聞かれたが、家の前に倒れていた知らない人だと言い張り家に帰った。
 病院からの帰り道、どうせ家に帰ったらイケメンが何食わぬ顔でいて、敵が現れてピンチになって、俺が未知のパワーで追い返して、私達に手を貸して下さい! とか言われて巻き込まれるんだろうな~とか妄想してた。

 家に帰ると、やっぱりイケメンのモヤシが部屋にいて……どうやって追い出そうか考えていたら、勝手に自己紹介を始めやがった。
イケメン「私はタマナシ ジャックと言います。ジャックとお呼び下さい」
シゴキ「あ、俺ヤラハタ シゴキ。呼び方はシゴキでも何でも」
 つられて自己紹介をしてしまった。ま、まだ大丈夫だ。巻き込まれる前になんとかしないと。
ジャック「この度は巻き込んでしまい申し訳ありません、シゴキさん」
シゴキ「あ、もう巻き込まれたことになってるんだ……」
 話が進まないと困るので、もう乗ってあげることにした。チクショー。
シゴキ「何で怪我してたの? 悪の組織にでも追われてたの?」
ジャック「……ええ、そうです」
シゴキ「ふーん、どんな?」
ジャック「性欲で世界征服を企む秘密結社リーマン・シスターズに追われていたのです」
シゴキ「え? なに言ってんの? 性欲?」
ジャック「順を追って話しましょう。
実は世界中で勃つことの出来るチンチンの数は限られているのです。これは勃起エネルギー保存の法則と言って、自然の人口調節機能らしいです」
シゴキ「日本語でおk」
ジャック「例えば性欲を数値化して、1エロスがあれば勃起が可能になるとするでしょう。そして、その合計は1万エロス以上にはならないという法則が世界にはあったのです」
シゴキ「つーことは、同時に勃起可能な人間は最大1万人までってことか」
ジャック「数値は簡略化していますがそういうことです。
これの恐ろしいところは、一人の性欲が5エロスにも10エロスにもなるということです」
シゴキ「勃起するのに1エロスで十分なら、それ以上は無駄になるだけじゃね?」
ジャック「いいえ、極端な事を言いますと、1人のドヘンタイの性欲が1万エロスを独占してしまえば、世の男達は全員ED、つまり勃たなくなってしまうのです」
シゴキ「な、なんだってー!」
ジャック「そうなれば世界中で子供が作れなくなり、人類は死滅してしまいます。さすがに一人で独占は出来ないでしょうが・・・しかし性欲の強い者を集め、チンチンの独占を狙う秘密結社リーマン・シスターズが活動を開始したのです」
シゴキ「んで、ジャックはそれに対抗する正義の味方?」
ジャック「はい、物分りがいいですね。説明が早く済んで助かります。
そもそもリーマンのような組織が出てくるのはオマーン国際会議で想定済みでしたので、世界中で性戦士が作られました。特に日本は早急に手を打ったため、世界有数の性欲国家となりました。そして私は特殊部隊の隊長としてリーマンと戦ったのですが……」
シゴキ「負けちゃったと?」
ジャック「……はい、不意を突かれたのもありますが、私達の性欲では太刀打ち出来なかったのです。しかも敵は用心深く、日本のアマチュアトップランカーも既にやられてしまいました。
残された方法は、彼らに対抗しうる潜在能力を持った性戦士の卵を探すことでした」
シゴキ「じゃ、俺が巻き込まれた理由って・・・」
ジャック「はい、それがあなただったのです」
シゴキ「ちょっ、ちょっと待って。たしかに性欲には自信あるけど、日本一かって言われると・・・」
ジャック「失礼ですが、自慰は一日何回程?」
シゴキ「え……9回か10回ぐらいかな」
ジャック「やはりあなただ!!
たしかに今のあなたの性欲では彼らに敵いませんが、爆発的に性欲を高める方法があるじゃないですか」
シゴキ「……なに?」
ジャック「オナ禁です」

 こうして俺のオナ禁生活は始まったわけだ。
 それからの三日間は地獄だった。
 常に監視されてるからオナニー出来ないし、トイレでやろうとしても何故かバレるし、愛しのオナホールコレクションまで捨てられちまった。お値段いくらしたと思ってんですか、ほんと。
 こんなに我慢するのは修学旅行以来だぜ。そんときは2日目の夜に旅館のトイレで抜いちゃったけどさ。

 あと、この三日間で色々聞いたんだけど……えー、なんだっけ。色々と電波設定が飛び出したんだけど、ほとんど忘れちゃった……
 覚えてるのは、実は睾丸からは未知のエネルギーが出てて、それが溜まれば溜まるほどなんか色々すごくなるんだとよ。
ジャック「未知のエネルギーじゃなくてオナニスキー粒子です!」
 ・・・だそうだ。とりあえず、敵を倒すまでは抜いちゃ駄目ってことさ。さっさと敵をぶっ潰して物語を終わらせないと禁断症状でどうにかなりそうだぜ。
 なんとか物語を早く終わらせる方法はないものか……

シゴキ「なあ、解説係。そういえば敵のリーマン・シスターズって、どんな奴らなの?」
ジャック「元々はただの証券会社だったのですが、倒産の危機に直面しまして一か八かの世界征服事業に手を出したのが始まりのようですね」
シゴキ「世界征服って事業なんだ……」
ジャック「何事もビジネスですよ。最初は下請けとして、テレビやマンガのエロシーンを規制して世界の性欲レベルを下げる裏工作をしていたようですが、それが大当たりして一大企業に成長したようですね」
シゴキ「PTAみたいな連中だな……四天王とかいるの?」
ジャック「はい、いますよ。彼等を倒さぬ限り、敵の総帥に出会うことすら出来ないでしょうね」
シゴキ「やっぱいるんだ・・・・敵の総帥はどんなの?」
ジャック「名前はオナキン・スカイウォーカー。恐ろしい、ライトセ〇バーの使い手です。それと、手を触れずに物を動かす能力も報告されています」
シゴキ「うん、名前でなんとなく分かったよ……でも、ちょっと待って・・・能力? 超能力みたいなの使えるの?」
ジャック「あれ? 言いませんでしたっけ? まだ詳しいことは分かっていませんがオナニスキー粒子が関係していて、その人が最も望む能力が与えられると言われています」
シゴキ「オナニスキー粒子すご過ぎね?」
ジャック「認識の違いですよ。この研究はまだ始まったばかりですからね。脳は血液を冷やす器官だと誤解されていた時代は、脳科学なんてまったく考えられてなかったでしょ?」
シゴキ「そんなもんか。そういやジャックは何が使えるの?」
ジャック「私の能力はテレポートと感知能力です。この能力で、潜在性欲の高そうなあなたを探し出したんですよ。お約束通り、あまり戦闘力はありませんが」
シゴキ「そういや登場シーンでも使ってたね、テレポート」
ジャック「こう言うと2種類の能力が使えるように聞こえるかもしれませんが、2つとも同じ延長線上にある能力なんです」
シゴキ「ふーん……あれ? 最も望む能力が身につくんだよね。テレポートと感知能力って……ストーカーか泥棒でもしてたの?」
ジャック「違いますよ。人聞きの悪い。
私はまず、常日頃から通学時間等の移動時間がMOTTAINAIと思っていましたのでテレポートを習得しました。
そして自転車に乗って気分良く歌っていたら、曲がり角や後ろからいきなり人が来たりして恥ずかしい思いをしたので、感知能力が身についたのです」
シゴキ「……地味な理由だな」
ジャック「人間そんなものですよ。本人にとっては結構深刻な問題なんですよ?」
シゴキ「待てよ・・・テレポートと感知能力か……敵の総帥オナキンの詳細なデータとかない?」
ジャック「え? はい、ありますよ。
え~っと、56歳で独身。趣味はアイドルの追っ掛けで、最近はジュニアアイドル(15歳以下の天使)に、ぞっこんのようですね。オナ禁歴は15年です」
シゴキ「15年!? そりゃ、まともに戦っても勝てんわな。
……よし、今夜お前のテレポートとやらでオナキンを暗殺しに行くぞ」
ジャック「しょ、正気ですか? それに四天王の説明をお忘れで?」
シゴキ「四天王もベッドの中まで護衛してるわけじゃないだろ。感知能力で調べて一人の時を狙うんだよ。それに大将首から狙うのは常識だぜ?」
ジャック「し、しかしそんなことをしては物語がすぐに終わってしまいますよ?」
シゴキ「よく分かってんじゃん。早く終わらせたいんだよ。んじゃ、今夜決行な」
ジャック(……人選、間違えたかしら)
2, 1

  

【深夜2時】
シゴキ「ターゲットに動きは?」
ジャック「ないですね。寝室で寝ているようです・・・が、扉の外に護衛が2人います。どうします?」
シゴキ「うー、この際しょうがないかな。行こう。こっそり近付いて、この包丁でイッヒッヒッヒ・・」
ジャック「ん! 待ってください。動いてます。寝室を出て・・・・部屋に入りました。いくつもの個室がありますが・・・・近くに・・・人はいません!」
シゴキ「好機! じゃあ頼む」
ジャック「イエス!」
 そう言うと、ジャックからオナラのようなモノが噴き出し二人を包み込んだ。きめえ。
ジャック「あと2秒で着きます」
 俺は始めてのテレポートに焦ってしまい、バランスを崩して倒れてしまった。床が冷たい。

シゴキ「……ここは?」
ジャック「男子トイレじゃないですか!?」
 急いで周りを見渡すと、便座に座って目を丸くしてるオッサンと目があった。テレポートした瞬間に突き刺すのがベストだったのに失敗じゃんか。それとドア開けっ放しでウンコすんな。
シゴキ「えーと、あんたが総帥さんかな?」
 そう言い終えるよりも早く、二本のライトセ〇バーが空を切り、二人の喉元に突き付けられた。
オナキン「うぬら何者じゃ」
 さっきまでとは別人のような鋭い眼光が二人を貫く。
 オナキンの下半身がスッポンポンであることを除けば、かなりカッコイイシーンである。
 うっひょー、マズった。暗殺は失敗したので、第二の作戦に移行する。

シゴキ「さ、さすがラスボスってとこか? だが戦いに来たんじゃない。国の代表として交渉しに来たんだ」
オナキン「・・・じゃろうな。うぬらごときでは我に触れることすら出来ぬわ」
 カッコつけてないでパンツ穿けよ。
シゴキ「だ、だろ? だから、まずはその著作権的にも危ない物をしまっ・・」
 ブォン! お馴染みの音がトイレに響く。
オナキン「早く用件を言わぬば切って捨てるぞ」
 過齢臭がキツイ。
シゴキ「オーケーオーケー、単刀直入に言おう。組織を解散させれば、好きなアイドルを1人くれてやる」
オナキン「なぁにいぃぃ!」
ジャック「な、何を言ってるんです!?」
シゴキ「好きな人間を好きにさせてやるって言ったのさ。これは国と事務所の許可も下りてる。札束よりもこっちの方がいいだろ?」
オナキン「ぬぅ・・・わ、我は仮にもリーマン・シスターズの長。肉欲に負け、社員達を路頭に迷わすわけにはいかぬ!」
シゴキ「おや? お気に召さないかい?」
オナキン「と、当然じゃ。ゆう〇りん1人の為に会社を犠牲にするなど断じて・・」
シゴキ「じゃあ3人だ」
オナキン「うぅぅ!!」
シゴキ「触ろうが嗅ごうが踏まれようが、あんたの自由さ。なんなら結婚してもいい」
オナキン「うぬぅぅ。わ、分かった。条件を・・・飲もう」
シゴキ「さすが! 話が分かる!」
オナキン「……二言はあるまいな」
シゴキ「そりゃもう。そんで、早速なんだが誰がいいんだい?」
おなきん「え? じゃあね、えとね、ゆうこ〇んとね、クッキングア〇ドルの福〇遥たんとね、それから」
シゴキ「あ~、18歳未満は色々まずいんだけど・・・」
おなきん「あっ、そうだよね、そうだよね。んじゃね~」
シゴキ「まあ、そんなに急がなくても一週間後にまた来るから、それまでじっくり考えな。生涯の伴侶をよ」
おなきん「え。うん、わかった」
シゴキ「んじゃ、一週間後」
おなきん「ばいば~い」

 テレポートで家に帰り着くと、ジャックが超エキサイティングし始めた。
ジャック「どういうつもりですか! 意味の分からない約束までして! しかも女性をまるで物のように! 国と事務所の許可なんか下りるわけないでしょう!」
シゴキ「まあ、落ち着け。そう怒るな。ちゃんと意味はあるよ。
あのオッサンは15年もオナ禁してるんだろ? ってことは普段は妄想しないようにしてるんだろうよ。だから妄想するきっかけを与えてやったのさ。
しかもただの妄想じゃない。好きなアイドルと、にゃんにゃん出来るっていう極上の妄想だ。それも国と事務所の保証書付きで、具体的な名前まで考えさせている。
やがて妄想は濃厚なものとなり、もはや理性で抗うのは不可能・・・一週間も持つはずがない。すぐに抜いちゃってアウトさ」
ジャック「な、なるほど」
シゴキ「あとは一斉攻撃するなり、スパイを送り込んで内部抗争を煽るなり好きにすればいいさ。んじゃ、もうオナニーしていい?」
ジャック「だ、駄目です。まだ四天王も残ってますし、懸念事項がないわけではありませんし……」
シゴキ「懸念事項?」
ジャック「ええ、大丈夫だとは思うのですが・・」

シゴキ&ジャック「!!!??」
 突然、まるで風呂場にオナホール置き忘れたことを、翌朝気付いちゃった時のような寒気が全身を襲った。
シゴキ「……なあ、今のは?」
ジャック「はい、おそらくオナキンのフォースです。どうやら最悪のパターンだったようですね」
シゴキ「最悪のパターンってなんだよ!?」
ジャック「オナキンはEDになっていたんですよ」
シゴキ「え?」
ジャック「EDですよ。男性器が機能しなくなること」
シゴキ「いや、それは知ってるけど・・・56歳で……可哀相に。やっぱり適度に抜いた方がいいのかな? でも枯れたんなら性欲収まりそうなもんだけど・・・」
ジャック「はい、普通はEDになれば力を失うはずです」
シゴキ「でも俺にも感知出来るぐらい、パワーがみなぎってるぜ?」
ジャック「文献で読んだことがあります。一度も性交渉をしたことがない者が、オナ禁の果てにEDになると大いなる災いを招く、と。どうやら彼はそういうお店にも行った事がない、真性童貞だったようですね。
もはや一生童貞です。そしてその無念に呼応するが如き、力のうねり。この状態が明日には終わるのか、死ぬまで続くのかは私にも分かりません」
シゴキ「じゃあ・・」
ジャック「あっ、電話です。失礼」
 話の途中に……
 電話を取ったジャックはひどく慌てている様子である。この流れじゃ、一夜にして司令本部が壊滅しました~とかかな? もう壊滅したんだっけ?
 でもそういうのは怪我をしたサブヒロインが教えに来てくれなきゃ。んで、どうした? 何があったんだ? とか言って駆け寄って・・
ジャック「シゴキさん! 今すぐYout○beで動画を見て下さい。URLはパソコンにメールで送りました」
シゴキ「へいへい」
 常時スタンバイ状態の俺のパソコンが瞬時に起動し、お目当てのページを開いた。
 動画が始まる。映像が始まる前にちゃっかりCMを入れている辺りは、さすがである。
シゴキ「おっ、オナキンが出て来た」
ジャック「シッ!」

オナキン「全世界の童貞諸君。我は童貞のオナキン・スカイウォーカーである。早速、本題に入るとしよう。
我々は無人島を買い、それを童貞島と名付けた。そして我こそはと思う童貞は、是非入島していただきたい。
この島では国民も官僚も警察もサイバーポリスも、みな童貞である。もはや痴漢冤罪を恐れる必要も、クリスマスを恐れる必要もない。バレバレなのに非童貞のフリをする必要すらないのである。
真の精神的平穏がここに実現するのだ。
集えよ、童貞! 今ここに大童貞帝国の建国を宣言する!!!」

 この放送は世界中の童貞の関心を呼び、童貞島は一夜にして百万人都市へと変貌を遂げたのであった。

 んな、アホな。
3

シゴッキー 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

次 >>

トップに戻る