歩道橋
歩道橋から車道を見下ろすのが好きだ。
窓から地上を見下ろすのとは違った浮遊感に襲われる。
車が真っ直ぐ向かって来て、足元を通過して行く。
日常では体験できない奇妙な感覚に囚われる。
「もし、この手擦りが壊れたら」
そう考えると、恐怖と同時に別の世界へ行けるような好奇心が体を高揚させる。
こんなにすぐ近くに『いつも』とは違う日常が存在する、境界線は無機質な手擦りだけなのに。
「もし、この手擦りが壊れたら」
楽しくは無いだろう、隔てられ、守られながら日常を見る事ができるから異質に触れてみたいのだ。
「もし、この手擦りが壊れたら」
私は向こう側へ行くのだろうか。
「もし、この手擦りが壊れたら」
そこから見えるものは、いつもの日常なのだろうか。
奇妙な浮遊感、高まる鼓動、逃げたいけど動きたくない足、それらはそこにあるのだろうか。
「もし、この手擦りが壊れたら」
そんな感覚に惑わされながら、車道を見下して歩道橋を渡って行く、向こう側へ。