セーブストーン ~あの瞬間に戻りたい
勇(いさみ)の場合 end
一連の映像はやがて、淳司の部屋で終わった。
すでにほとんど意識のない淳司は、セーブストーンを額に当ててアプリコットを呼び、想いとセーブストーンを託したのだった。
すべて見終わると俺は、セーブストーンを額から外した。
そして、言った。
「ロードすればよかったのに。
こんな状況だったらロードされたって文句いわねーぞ俺は」
「イサミさん?」
俺には“それ”がわかっている。
だから続けた。
「淳司。
いるんだろそこに。
それで自分の口で話せばいいじゃねーか。
自分がどう感じたのか。
もしコレ見て納得いかなかったら、セーブストーン割られたって文句いいませんってか?
冗談じゃねーぞ。
お前、何だと思ってんだよ。
自分を何だと思ってるんだよ!」
俺の後ろで気配が揺らいだ。
そう、俺の真後ろ、そこにヤツは浮かんでいる。
別に心霊現象なんか信じてもないし否定してもないが、とにかくそれは確かなことだった。
だから、言った。
「ロードするからな。
とにかく生きろ。
一緒に探そう。
納得できるありかた。
お前とおんなじ想いはいま持ってないけど。
それでも大事なんだ。
お前だって大事なやつなんだ。
いなくなってほしくなんかないんだからな!!!」
そのとき、唐突に俺は思い当たった。
俺は、かつてヤツにこの言葉を言っている。
いつのことだか、どういう状況でなのか、はっきりしないけれど。
俺たちは、何度もこんなことを繰り返している。
何度も、何度も。
“納得できるありかた”に、たどり着くことができずに。
――それでも。
いや、それだから。
俺はもう一度、挑戦することにした。
たとえば、ここで同じ想いは持てなくても。
それが例えば、未来の悲しみや過ちにつながるかも知れないとしても。
今の俺は知っている。
未来は変えられる、と。
俺たちどっちもが、“納得できるありかた”。
きっと、見つけることができる、と。
俺は淳司のセーブストーンを握り、銀色の部分に親指を置いた。
セーブストーン ~あの瞬間に戻りたい
終幕