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新生記 下

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 新世記 下


 第一章


 世界は2度目の終わりを迎えようとしていた。神が危惧したように、世界は荒廃し、ヒト
は〈大きな音の神〉を崇拝するようになった。言葉たちは自らが神の言葉であることを忘れ
、〈大きな音の神〉によって創られたと考えていた。神は忘れられていった。

ヒトはすでに〈大きな音の神〉によって、当初の目的を忘れさせられていた。神は嘆いた。
しかし、神は手から離れていった言葉たちへ伝える術を持たなかった。神は改めて世界を浄
化することに決めた。予兆を察した〈大きな音の神〉は舟の建造を始めた。2度目の箱舟で
ある。
 〈大きな音の神〉は神を打倒する手段を探していた。2度目の世界でもそれを見つけるこ
とはかなわなかった。〈大きな音の神〉は神のもとにたどり着く術を求めていた。2度目の
世界でもそれは叶えられなかった。〈大きな音の神〉はそれをかなえる方法の欠片だけは見
つけていた。

 〈大きな音の神〉は次の世界へ向けて、箱舟を造った。


 第二章


 旅人は2度目の世界を拡げていた。洪水の予兆を察したとき、旅人は地の奥底と空高くに
それぞれいた。鍵が地底で鍵穴は空である。2人は、はじまりへ戻ると、神へと祈りを捧げ
た。
「世界はこれ以上拡がらないというところまできました。洪水を起こす神よ、我々はこれよ
りどこへ赴けばよいのか?」

 神は答えた。

“世界はまだ拡がる可能性を持っている”

「して神よ。それはどこか?」

“空の先である”

「神よそこへどうやっていけばよい?我々の足では到底届かないのではないか?」

“次の世界になれば風も変わるであろう”

 旅人は神の言葉を信じ、はじまりの場所で次の世界を待った。


 第三章


 〈大きな音の神〉は箱舟になった言葉たちに種を植えた。それはすべての言葉が繋がり、
〈大きな音の神〉による呪いである。新たな気持ちで世界を迎えることを阻み、意思を集中
させるための呪いである。この呪いにより、言葉たちの「運命」はさらに短くなった。
 〈大きな音の神〉は誇って言う。
「繰り返しは我に味方することになるであろう」
 〈大きな音の神〉は箱舟の奥に鎮座し、ことの成り行きを見守った。

 この世界でも創造されたイエスたちは箱舟になることはできずに、箱舟の外で洪水を待っ
た。イエスたちは次の世界に生きることが叶わぬモノである。
 洪水の前後、イエスたちは箱舟の上空を飛ぶ一匹の大きなフクロウを見たという。フクロ
ウは観察することに呪われたものである。遥か契約の日より、フクロウはヒトの成り行きを
観ている。








 続き





 第四章


 〈大きな音の神〉は世界が洪水にのまれていく様を、箱舟の奥で眺めていた。〈大きな音
の神〉2度目も失敗したことを悲観してはいなかった。繰り返されるたびに自らの成功に近
づいていくことがわかっているからだ。

「このたびは大願をかなえる欠片を得た。次は我はそれを求めるであろう」

 〈大きな音の神〉は闇の中へ消えていった。洪水は箱舟を飲み込み、地を30日間かけて
浄化した。


 第五章


 現存せず


 第六章


 現存せず




13, 12

  



 第七章


 世界は3度目を迎えた。〈大きな音の神〉は2度目の世界とは違い、表に出ることはしな
かった。片隅で、事の成り行きを見守っていた。ヒトは植え付けられた種の力によって、発
見と発明、進歩を繰り返していた。
 〈大きな音の神〉は3度目の世界に、イエスを1人送り込み、〈大きな音の神〉によく似
た神を崇拝させるように導いた。3度目の世界が持つ神の概念とはこの時につくられたもの
である。

 世界は1度目、2度目の世界とは比べ物にならない速度で、進化していった。〈大きな音
の神〉はそれを満足げに眺めた。

「早ければ、今回の世界で神を打倒することが叶う」

 〈大きな音の神〉は世界が熟すのを待っている。


 第八章


 1度目、2度目の世界にはないモノが1つだけあった。それは〈悪意〉である。〈悪意〉
は〈大きな声の神〉、〈大きな音の神〉双方が関知していないものである。ヒトの営みの中
で創られたモノである。それは〈原初の悪意〉と呼ばれる、たった1言の鍵を持つものから
伝染していった。箱舟を介してである。それは予想外のものであり、〈大きな声の神〉は困
惑し、〈大きな音の神〉は歓喜した。後者にとってそれは好都合なものであったからである。

「〈悪意〉は繰り返しを早めるための潤滑油である」

 〈大きな音の神〉はそう言った。

 〈原初の悪意〉と呼ばれるヒトが〈悪意〉の宿主である。〈悪意〉とは伝染するものであ
るが、宿主が持つ〈悪意〉がすべての発端であるから、それが消えれば、すべての〈悪意〉
もまた、消えると言われている。


 第九章


 旅人は3度目の世界に姿を現さなかった。理由は不明である。ただし、旅人がいない世界
は存続することができないと言われているので、姿を隠しているだけとも言われている。
 〈大きな声の神〉ですら、旅人がどこにいるか知らなかった。

“どこにいってしまったのか、我が子らよ”

 神は旅人の姿が見えないことを不安に思い、嘆いた。それでもなお、旅人は地に姿を現さ
なかった。

 3度目の世界は順調に年を重ねていき、今あるような世界が創られた。現在の世界は3度
目である。


 第十章


 現存せず










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