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旅行記

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 旅行記


 第一章


 旅人とは言葉ではない。進み拡げることで、付随的に言葉が産まれるモノである。旅人が
世界を拡げる役目を負う。それは旅人にのみ許されたものである。旅人は留まることを許さ
れない。旅人は常に歩き続ける呪いがかけられている。

 旅人はヒトの研究に役立つために世界を拡げるモノである。旅人とは材料、元素であって
結果、成果ではない。

 旅人は世界を拡げた。地を拡げ、海を伸ばし、空を高くした。それでも、なお、旅人は歩
み続けるモノである。地を深くし、世界に奥行きをもたせ、道を延ばす。

 旅人は何も持たないモノである。旅人はそれゆえに孤独である。


 第二章


 旅人はまず、はじまりから西へ進んだと言われている。旅人の歩いた場所が道となり、地
が生成されていった。海が産まれ、森が産まれ、神も予想していなかった法則、真理が創造
されていった。旅人は西の端に到着すると、もときた道を帰った。自らが歩いた世界を眺め
ながら旅人は世界の素晴らしさに気づいた。
 旅人ははじまりに戻ると、今度は東に向かった。旅人の歩いた場所が街道となり、山が産
まれ、湖が産まれ、神にとって好ましいものと好ましくないものが創造されていった。旅人
は東の端に到着すると、もときた道を帰った。自らが歩いた世界を眺めながら旅人は世界の
複雑さに嘆息をもらした。
 旅人ははじまりに戻ると、今度は北へ向かった。旅人のすすんだ波紋が海路を産み、渦を
産み、波を産んだ。旅人は北の端に到着すると、もときた道を帰った。自らが歩いた世界を
眺めながら旅人は世界の寒さと暖かさを知った。
 旅人ははじまりに戻ると、今度は南へ向かった。旅人は旅を楽しむようになっていた。後
ろを振り返れば、世界が拡がっていた。見たことのないもの、知りたいものが多くあった。
南への旅は、これまでとは違っていた。旅人は自問自答するようになっていた。
 南への旅を終えた旅人ははじまりに戻り、神へ祈った。
「旅は楽しく素晴らしい。しかし、1人は孤独です。供がいれば、と思います」
 神は旅人の言葉に驚いた。神は旅人に感情を与えていなかったからだ。旅人は旅すること
によって感情を作り出していた。予期していなかったことに神は喜び、旅人の願いを聞き入
れた。

“わかった。お前を鍵と鍵穴にわけよう。2人ならば孤独ではなかろう。ただし、使命を果
たす必要はある。2人、必ず反対方向に出発しなさい。さすれば世界を拡げる仕事も楽にな
るであろう。そしてはじまりに戻ってきて9日の間、2人でいることを許そう。そのあいだ、
自らの見てきたものを語り合うがいい”

 旅人は2つに分けられた。鍵と鍵穴である。2人はともに旅をすることは許されていなか
ったが、孤独ではなかった。


 第三章


 4賢者たちは旅人の道を歩くものである。すなわち、イヴァンとアリアのヒト、スヴェン、
セイルとカトレアのヒト、フン、ドゥカとネメスのヒト、バベルとティアである。
 4賢者は旅人の道を通り多くの事柄を知った。そして、その先々ではじまりに戻る旅人に
出会うことになった。

 4賢者は旅人の良き話し相手になった。4賢者は旅人にヒトの世界を伝え、旅人は4賢者
に世界の拡がりを伝えた。

 そうやって世界は拡がり、4賢者を通して、ヒトは知恵をつけていった。









 続く




 旅行記


 第四章


 現存せず


 第五章


 現存せず


 第六章


 現存せず












9, 8

  


 旅行記


 第七章


 現存せず


 第八章


 旅人は互いを想うようになり、供に歩けないことを嘆いた。旅人は神に訴えた。
「神よ、どうして我々は供に歩けないのでしょうか?」

 神は答えた。

“お前たちは鍵と鍵穴である。ヒトと同じ道を歩むであろう”

「わたしたちは道を誤らないでしょう」

“お前たちは目的を忘れるだろう”

「わたしたちは目的を忘れることはないでしょう」

“お前たちはどうしてそんな考えを持つようになったのだ?”

「わたしたちは4言のヒトに出会いました。ヒトの考えに触れ、わたしたちは、わたしたち
の考えを持つようになりました」

“ヒトはお前たちに良い影響を与えない”

「神よ、彼らは良きヒトです。彼らはわたしたちを憐れんでくれました。彼らは約束を守る
でしょう」

 神は旅人の願いを聞き入れなかった。神はもはや、ヒトを信じてはいなかったからである。


 第九章


 現存せず


 第十章


 鍵を持つ旅人は、洪水の前日、旅立つ前に4賢者の1言、スヴェンに出会った。スヴェン
は今にも「運命」を終えようとしていた。旅人は血を流すスヴェンに言った。
「あなたは良き言葉である。新しい世界に生きるでしょう」
 スヴェンは息も絶え絶えに答えた。
「我々4賢者は旅人との約束を守るために新しい世界に生きるでしょう」

 旅人は旅立った。スヴェンはその場で息絶え、亡骸を洪水がさらった。

 旅人は洪水の影響を受けない唯一のモノである。旅人は新しい世界においても、旅人であ
ることを課せられたモノである。







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