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2節

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サザンオールスターズが部屋に鳴り響いている。
うるさくて起きた。
「ん・・んん・・?なんだ・・?」
目の前でサザンオールスターズのライブが繰り広げられていた。
ボーカルのほとばしる汗、咆哮、ファンキーなベースにキャッチーなグルーヴ、ポップなメロディー・・・
ちくしょう、なんだっていうんだ、俺の回想もまだ終わってないのに。
しかし俺は目を凝らす。よく見るとボーカルはくわたけいすけではなく彼女だ。
時計は六時半をさしている。そうか、起こしてくれたんだ。

眠い目のせいでぼやける視界の中、上体を起こしてベッド脇の赤いスイッチを押す。
彼女は消える。目覚ましなのだ。今の時代、技術の進化はとどまるところを知らず、このような目覚ましもある。
俺の目覚ましは、色々なパターンが設定されており、それがランダム(設定では固定や選んだものの中からランダムにも出来る)で
朝発動して俺を起こしてくれる。

だが、いくら技術が進化しようが、人と人との間は技術ではどうしようもないのだ。おかげで私には彼女がいない。
誰かが心垂れ流し装置でも作ってくれれば、彼女一人でも出来るだろうか?その前に人類の消滅が先だろうなと思う。
俺は朝食を作り始める。今の時代、機械で全自動でも出来るが朝起きるには朝食を作るのがいい。メシも自分で作ればウマい。
卵を二つ取り出し慣れた手つきでパカパカと割りフライパンに落とす。熱されたフライパンの上で爆ぜたり震えたり揺れたりしている。
皿にパカッと目玉焼き二つを載せ、クレイジーソルトを振り掛ける。と、同時に慣れた手つきで入れておいたトーストがチーンと
こんにちはした。おはようございます。

窓からの風景を眺めつつスーツに手早く着替える。
外の風景、と言ってもここは地中だから窓の映し出された外の風景というのが正しい。
これがただの真っ黒だったら、俺は気が狂っていただろうか。一度真っ白い部屋に入ってみたい。人間誰しも、ぶっ壊れてみたい
欲望みたいなものがあるはずなのだ。
サイフを胸ポケットに入れ、部屋を後にした。

時計は7時半。これなら充分間に合う。素粒子分解運動装置に入る。
一体どういう仕掛けでこんな便利なものが出来るのかが不思議だ。稼動して二分足らずで会社に着く。
原理がわからなくても、まぁ、いいさ。昔の人間だってなんだかわからないけど使ってたものが沢山あったしな。
それに、ハエが混ざってハエ男になったなんて話、聞いた時無いしな・・。

素粒子分解運動装置が稼動し、素粒子が会社に向かう時、一匹のハエが航路に入った。
5

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