( ^ω^)が自由な時間を手に入れたようです
「おっおっおっ」
この物語の主人公、高校2年生の内藤ホライゾンはその日、寝坊をした。
今日は絶対に遅刻をしてはいけない日である。
幼い頃から時間を守るという意識が極端に抜けていた彼は今月になって既に九回の遅刻を果たしており、今日もまた遅刻をすると非常に厳しいペナルティを喰らうことになっていたのだ。
ゆえに彼は起床後、朝食も食べず学校までの道のりを全力疾走する羽目になった。
「おっおっ……おっ……」
元々体力のある方では無い彼だが、低血圧とエネルギー不足のこともあり、体力は既に限界に達している。
自分が今何処を走っているのか、それすら分からない程度に意識も遠のいていった。
「おっ……おっ……」
それでも彼の足は止まること無く動き続けた。
自分の未熟さの為に大切な物を失ってしまう、それは彼にとって何よりも許せることではなかったからだ。
「おっ……」
そんな極限状態の中で彼は強く願った。
ボクに足りないもの……それは情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ……そして何よりも……
「速さが……速さが足りない!!」
その瞬間、世界が停止した。
正確には彼の周りにある動いているもの全てが静止画のように止まったまま動かなくなったのだ。
人も車も鳥も、風に舞う木の葉の一枚でさえも、彼を除いて動きを持つ物体は存在しない。
「……!?」
『力が……欲しいか……?』
不意に何処からか声が聞こえた。
辺りを見回すがそれらしい人物は見当たらない。
「な、何だお……!?」
『やぁ(´・ω・`)ようこそ、バーボンハウスへ。
この世界はまだ、しばらく停止したままだから、まず落ち着いて休んで欲しい』
「はぁ……そうかお……」
そう言うと彼は戸惑いがちに地べたに腰を下ろす。
吐き気を押さえ、荒い呼吸を繰り返し、文字通りしばらく休憩した。
するとまた、何処かから声が聞こえた。
『(´・ω・`)もういいかな?』
「構わないお。一体アンタは誰なんだお?」
『(´・ω・`)うん、僕は「神様」なんだ。済まない。
仏の顔もって言うしね、謝って許してもらおうとも思っていない』
「いやいや、別に謝るようなことはしてないお。それよりも、休ませてくれて感謝するお」
『(´・ω・`)そうだね、君ならそう言うと思ったよ。
僕は初めて君を見たとき、言葉では言い表せない「ときめき」みたいなものを感じたんだ」
「ん?神様はアッチ系かお?」
『(´・ω・`;)そういう意味じゃないんだ。
君のようにリベラリティ溢れる人間は時間なんかに縛られちゃいけない。
もっと好きに生きるべきだ。そう思って、この世界を一旦停止させたんだ』
「さすが神様だお、世界を停止させるなんて事を平然とやってのけるッ」
『(´・ω・`)君にもできるようにしたから、後は好きに使うといい。じゃあね』
「おっ……おっ?」
そして世界は動き出した。
しかし再び停止した。
「ホントだお……試しに止マレ!って念じてみたら本当に止まったお……」
そうして彼は立ち上がり、停止した世界でただ一人歩き出すのだった。
始業ベルが鳴るまで残り約5分。