昨日ちょっとしたことで家が粉々になった。その原因は未だによく分からない。ただ一つ言えるのはガスが漏れてたけど俺は気にせずスルメを焼いていたってことぐらいだ。警察は早く何とかしろよな。
「よおタケダ。お前昨日家が粉々になったんだってな。心からウケる。見にいってもいいか」
「ああん? 体操が出来るぐらいで調子乗ってるとどうなるか分かるだろ? 分からないのか」
「どうなるんだよ。言ってみろ」
「それは明日考え――――お、おいヒロミチ。あれは何だ」
幼い頃からの幼馴染であるヒロミチの設定を読者に紹介する前に俺は見てはいけないものを見てしまった。空に浮かぶ大きな円盤。銀色に輝くそれは間違いなく円盤だ。何かの円盤だ!
「ちっ。もう追いついてきやがった」
ヒロミチはやや大袈裟に舌打ちをして制服を脱いだ。ブレザーの下に何も着ていないその前衛的なファッションセンスは見る者を圧倒する。前衛的過ぎたのか男子が三人嘔吐した。
黄金のように輝く筋肉質の身体。何故かローションの塗られたねっとりとした照り輝く胸板。背中には相合い傘の入れ墨があった。ヒロシとカナコと書いてあるが気にしてはいけない。
「ヒロミチ、お前もしかして宇宙人とかそういう地球外生命体ってやつだったのか!」
心臓がどくんどくんと煩い程に鳴っている。俺は目の前で繰り広げられる現実離れした光景とヒロミチの綺麗なサーモンピンク色をした乳首がどうも気になって仕方なかった。
「タケダ…………悪いがお前に教えることは出来ねえんだ。俺の正体も、組織のこともな……」
「なるほどお前は組織に所属してるんだな! マジすげえ!」
「どうしてそのことを――?」
「エスパーだからさ」
「エスパーか……それなら仕方ない。じゃあ俺が本当はヒロミチ星人フェノリアンであることもゴマキムカシノホウガカワイカッタ研究機関のこともバレバレなんだな」
「ああ、今知ったぜ!」
「今まで騙してて悪かった。だが俺はお前のことが嫌いで騙してたんじゃない。組織の決まりで言えなかっただけなんだ」
「分かる。俺にもその気持ちはよく分かる。なあヒロミチ、あいつがどんなやつかは分かるがお前の口から説明して欲しい」
「分かった。説明してやる。あの円盤はムテキノアーチャンという惑星パヒュームからの資格だ。パッと見は微妙だがすっぴんは可愛いと評判でそこそこ強い」
「そこそこ強いんだな。一体どれぐらいの強さなんだ。エスパーにも分かりやすく教えてくれ!」
「ビール瓶が四本ってところさ」
「…………強いな」
「ああ。だが心配するな。タケダ、必ずお前は守ってみせる。ヒロミチ星人の血にかけてな」
背中から大きな翼を生やしヒロミチは円盤に向かって飛び立った。その背中にはどこか哀愁が漂っている。ヒロミチ……死ぬなよ。俺は目を瞑り、拳を組んだ。今日の夕飯を思い描きながら……。
【続く!】