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プロローグ

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目を瞑ると、海の磯の匂い
そして、懐かしい記憶がそこにあるような気がした。

「おい、フサ?なにをしてるんだ?」

呼ばれて目を開けると、そこには見慣れた顔が呆れ顔で突っ立っていた。

この丸い目に、口がゴルァな男はギコ
(こんな顔をしている(゜Д゜) )
古くからの知り合いだが、こと船の上では俺の上司に当たる。

俺と顔は良く似ていて、違いと言えば毛が生えてるかいないか、
と言った所だろうか。

「なに考えてるんだよ。」

ギコは帽子を被り直すと、俺と同じように船の手すりに手をかけた。

「いや、なんでも。もう軍に入って5年は立つと思ってナ。」

俺はまた水平線の向こうに目をやる。

「そんなことか、てっきりAAの事かと思ったぜ。」

確かに、今まさに船で向かってるのはAAの場所だ。
AAの事を考えなかった、と言えばうそになる。

「だが、本当に、本当に『空を飛ぶ理論』…ブーンはいるのか?」

俺がそう聞くと、ギコは少し面倒くさそうに

「さぁな、だが軍のお偉いさんが決めたんだ、少しでもなんかあるだろ。」
少し間をおいてからギコは続けた。
「お前が空を飛びたいのは知ってるが、あせってもしょうがないさ。」
「ああ。分かってる。」

ギコはやれやれとつぶやいた。

しばらくして、水兵の一人がこちらにやってきた。
「フサ少佐、ギコ大佐!」
敬礼をして、更に続ける
「目的地まで今しばらくかかります、そろそろお休みになられたらと!」

「ああ。わかった。お前たちも無理はするな、どうせあると決まってるわけじゃないしな。」
ギコがそういうと、水兵は元気よく返事をして戻っていった。

「まったく、AAの所為でこっちは技術と時間が大幅に遅れちまうぜ。」

ギコがそうぼやくと、部屋に戻っていった。

そう、我々の世界は、
生きる絶対理論(Alive Absolute Theory)
俗称『AA』によって、科学の発展を著しく制限されている。

彼らが生きている限り、彼らの持つ理論は我々が使えない。
どういう事かというと、

電気を発生させるという事を、カミナリをみて我々が発見したとする。

電気の発生のさせ方は、磁力を使ったり、化学反応させたりと、方法は幾つかあるが
その電気の理論を持っているAAを破壊しない限り
我々は人工的に電気を発生させることが出来ない。

このAAの存在は古代文明までさかのぼるらしいが、詳しい事は分かっていない。
ちなみに、この電気のAAは黄色いネズミの形をしていたらしい。
他にも多種多様なAAがいたが、我々の技術の発展と共に発見され破壊されている。
あと数種類を残して。

そして、我々が探しているのは
『空を飛ぶことの出来る理論』通称「ブーン」というわけだ。

軍がブーンを探しているのは戦争の為だが、俺には個人的に叶えたい夢がある。
そのためには、ブーンを破壊せねば。

俺はまた目を閉じて、船の揺らぎに身を任せた。
磯の匂いと、懐かしい記憶に抱かれて。
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