プロローグ
月曜日の放課後、校舎の外庭に、黒のノートが落ちている。
この学校の生徒である知的な顔立ちの生徒は、それを拾い上げようとするが、彼の背後を歩いている、林野朝(はやしのあさ)の視線に気付き、拾うのはやめることにした。
林野朝は、彼がノートを拾わなかったのを不思議に思った。
彼のノートではなかったのか。
朝は、彼に声を掛けたが、無視を決め込んでいるのか、そのまま行ってしまった。
黒ノートの表紙には、なにやら英語が書いてある。
「なにこれ、『であすのて』?」
彼女は英語が読めなかった。
ちょうど姉のノートが切れていたところだ。
朝はこのノートを、姉である林野昼(はやしのひる)にあげる事にした。
まとめて読む
朝の章
姉は私より早く家に到着していた。
私は姉にノートをあげた。
勤勉な姉に使ってもらった方がノートも喜ぶであろう。
姉は「いいセンスしてるわこのノート」と言っていた。
私はそれの意味を訊きたかったが、馬鹿にされそうだったので、やめることにした。
姉はさっそく自室で勉強を始めるようだ。
私はノートの意味が気になり、辞書で調べることにした。
訳すと『死のノート』といったところか。姉が気分を悪くしなくて良かった。
頭を悩ませることがなくなった。
これで私のニキビは少し良くなることだろう。
私はその晩、熟睡した。
姉は私より早く家に到着していた。
私は姉にノートをあげた。
勤勉な姉に使ってもらった方がノートも喜ぶであろう。
姉は「いいセンスしてるわこのノート」と言っていた。
私はそれの意味を訊きたかったが、馬鹿にされそうだったので、やめることにした。
姉はさっそく自室で勉強を始めるようだ。
私はノートの意味が気になり、辞書で調べることにした。
訳すと『死のノート』といったところか。姉が気分を悪くしなくて良かった。
頭を悩ませることがなくなった。
これで私のニキビは少し良くなることだろう。
私はその晩、熟睡した。
僕の章
火曜日のAM8時頃、僕は通学路を歩いている、左目の下に白ニキビがぽつりとある少女の後を尾行していた。惜しいな、他の部分は完璧だというのに。
僕と同学年の、文庫本を読みながら歩いている彼女は名をなんといったか。
そう考えていると、彼女に声を掛けた女子がいた。
そうだ、彼女の名は林野朝だ。僕は彼女が拾ったノートを欲しくなっていた。
放課後、僕は図書室の椅子に座って、今朝と同じ本を読んでいた(静かなここが1番いいのだろう)林野朝に声を掛けた。
本が好きな人はこの学校に殆ど存在しないのか、僕と彼女しかいない。
受付の人がいなくても、バーコードリーダを使えば貸出、返却可能である。
彼女は僕を少し見た後、本へと視線を戻す。
「君は何時も姉と一緒に登校しているようだけれど、今日は何故一緒に登校しなかったんだい?」
「良く知っているわね」上目遣いで僕を見つめている。
「いや、これはカマかけでね、僕は君を何時も見ているわけじゃないんだ。ただ、たまに姉妹仲良く登校しているところを通学路で見かけるだけでね」
彼女の額が汗ばんできた。
「君、昨日の放課後にノートを拾っただろ?」
彼女は口を一文字に結んだまま首肯した。
「僕の所に死神が来たんだ。そのノートに名前を書かれた奴は死ぬって」
ノートに触れた者は死神が見えるようだね、と付け加えた。
彼女が動揺しているように僕には見える。
「君は、姉の林野昼を、ノートで殺したね?」
すぐに朝は反論する。
「違うわ。私は殺していない。私は……ノートを姉に渡しただけよ。ちょうどノートを切らしていたから……」
「知らずにお姉さんは自分で自分を殺したのかい?」
「ええ、そうよ。ノートの表紙が黒かったから、修正液で名前を書いていたわ」
そういうと、彼女は机に『死のノート』を置き、席を立った。
「不思議なものね。あの時は寝惚け眼だったから、死神を始めてみたときは、自分の夢だと思っていたけれど」
彼女は貸出、返却受付所へ行き、持っていた文庫本に、バーコードリーダを本に押し付けている。
「姉の死体を見たときに目が覚めたわ。人があんなに冷たくなるなんて、思いもしなかった」
彼女は歩きながらそう言い、図書室を後にした。
彼女は、自分の過失で殺めてしまって平気でいられる程、強くない――そう思い僕は、ノートを開いてみる。
そこには、林野朝と書いてあった。
火曜日のAM8時頃、僕は通学路を歩いている、左目の下に白ニキビがぽつりとある少女の後を尾行していた。惜しいな、他の部分は完璧だというのに。
僕と同学年の、文庫本を読みながら歩いている彼女は名をなんといったか。
そう考えていると、彼女に声を掛けた女子がいた。
そうだ、彼女の名は林野朝だ。僕は彼女が拾ったノートを欲しくなっていた。
放課後、僕は図書室の椅子に座って、今朝と同じ本を読んでいた(静かなここが1番いいのだろう)林野朝に声を掛けた。
本が好きな人はこの学校に殆ど存在しないのか、僕と彼女しかいない。
受付の人がいなくても、バーコードリーダを使えば貸出、返却可能である。
彼女は僕を少し見た後、本へと視線を戻す。
「君は何時も姉と一緒に登校しているようだけれど、今日は何故一緒に登校しなかったんだい?」
「良く知っているわね」上目遣いで僕を見つめている。
「いや、これはカマかけでね、僕は君を何時も見ているわけじゃないんだ。ただ、たまに姉妹仲良く登校しているところを通学路で見かけるだけでね」
彼女の額が汗ばんできた。
「君、昨日の放課後にノートを拾っただろ?」
彼女は口を一文字に結んだまま首肯した。
「僕の所に死神が来たんだ。そのノートに名前を書かれた奴は死ぬって」
ノートに触れた者は死神が見えるようだね、と付け加えた。
彼女が動揺しているように僕には見える。
「君は、姉の林野昼を、ノートで殺したね?」
すぐに朝は反論する。
「違うわ。私は殺していない。私は……ノートを姉に渡しただけよ。ちょうどノートを切らしていたから……」
「知らずにお姉さんは自分で自分を殺したのかい?」
「ええ、そうよ。ノートの表紙が黒かったから、修正液で名前を書いていたわ」
そういうと、彼女は机に『死のノート』を置き、席を立った。
「不思議なものね。あの時は寝惚け眼だったから、死神を始めてみたときは、自分の夢だと思っていたけれど」
彼女は貸出、返却受付所へ行き、持っていた文庫本に、バーコードリーダを本に押し付けている。
「姉の死体を見たときに目が覚めたわ。人があんなに冷たくなるなんて、思いもしなかった」
彼女は歩きながらそう言い、図書室を後にした。
彼女は、自分の過失で殺めてしまって平気でいられる程、強くない――そう思い僕は、ノートを開いてみる。
そこには、林野朝と書いてあった。