ざ………ざ………
冬の海は白く、人気がない。
ただ、波の音だけが冷たい空気を震わせている。
「…」
男は一人で座っていた。
波打ち際に近い、比較的平らな岩の上、ぼんやりとうなだれている。
「…」
服はびしょぬれ。
膝に手を置き、うつろな目で何かを考えているようだ。
(ここは…どこだろう…)
(僕は…)
ざ………ざ………
風が吹いている。
波は規則的に、だけど不規則に、潮水に泡を立てている。
「…大丈夫ですか?」
不意に声をかけられ、男は顔をあげた。
「あの…大丈夫ですか?」
少女が、そこに立っていた。