1月29日
Rは2日前に飛行機に乗った。
機内で飲んだジュースはあまりおいしくはなかったな、それよりも酷かったのはあの機体が上昇したり下降したりするときにかかるGだ。あれは内臓にくる。もう二度と飛行機に乗りたいとは思わなかった。
それでもやっぱり仕事で出張とかで乗らないといけないのだろうな。そう考えると胃が痛んでくる。
そういえば意外と手荷物検査が緩かったな。液体の者も持ち込めたぞ。そいえばガラスは持ち込めたよな?もしそれを機内で割って尖らせれば凶器になるんじゃないのか?
もし・・・・・・たとえば・・・・・・それで・・・・・・
「ハイジャックだ!今俺は刃物を持っている!全員動くな!」
いきなり前に座っていた男が騒ぎ出した。それでもRは動じずに本を読み続ける。周りの人はおびえきっているというのに
「てめぇ!おれが何を持っているのかわからねぇのか!殺すぞ!」
男は声を荒げて喚き散らし、刃物をチラつかせてくるがRはページをめくる
「っ・・・・・・そうだ!てめぇは見せしめにする!一人殺しておけばこっちが本気ってことがわかるからな!死ねや!」
だが男の刃物はRには刺さらずに宙を舞った。Rが蹴り飛ばしたのだ。
「ってめ!どうして足が顔より上まで上げることができる!?」
「本を読むのには窮屈だったからな・・・」
「あぁ!?」
「シートベルト・・・締めなかった」
Rがシートベルトを締めていなかったのが功をなした。
それを聞きキレる男。
「なんでシートベルト締めねぇんだよ!CAが困るだろうがっ!!」
男は素手で殴ろうとするが、それもRによっていなされる
「俺は誰にも縛られることを許さぬ男だからだ。覚えておけ!」
言葉を言い終わるとRは男の顔面にこぶしを突き立てて気絶させた。
「スゲー!」「カッコイイ!」「ヒーローだ!」「救世主!」「正義の味方!」
Rをたたえるモブキャラたちはみな喜びの顔に満ちていた。だがRの顔に喜びはない
「お前ら、本を読んでいるんだから静かにしろよ・・・」
小声で聞こえないようにつぶやいた。
数時間後、家で静かに読書と食事にありつき、Rの顔にも喜びが見えた・・・
・・・・・・やはりないな。ハイジャックなどを倒せるはずがない。なんせ本を読んでいるような貧弱な男なのだからな。
私の考えはどうも都合のいいほうへと向かってしまう。それが人間というやつか?
ならばせめて目の前の課題が終わらないことだけは都合よく考えるのをやめよう。明日のために・・・
1月27日
Rはハイジャックを倒してヒーローとなった。でも現実ではそんなことは起こっていない。
しかし、Rにとっての世界はRだけなのである。Rの見えないところで何が起こっていても関係ない。同様に、Rがそうだと思えばRにとっての現実ではそうなのだ。
だからRはハイジャックを倒したことにした。そのほうが自分がカッコイイから