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1.「生まれ変わりは」

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 まるで飛行機の発着を待っているようだった。いや、だいたいはそういった感じだ。空間を
かなり広くとった部屋に、等間隔で座椅子が並べられ、そしてそこに僕は腰掛け、いやに渋い
コーヒーに似せたなにかを飲んでいる。
 「ようだった」と言う通り、ここが、空港ではないのは、飛行場という概念が存在しないか
らであり、同様に飛行機も存在しない。かといって刑務所や拘置所でもなく、ただ「待たされる」
身であった。今言えることはただ、それだけである。
 横に広く設計されているため、ひとつひとつの椅子の間隔もかなり広くとってある。目が
悪いので、あらましは分からないが、百はくだらないだろう。人もまばら、椅子もあまたある。
しかし、物好きなことに、スーツを着込んだ、だいたい30ぐらいの男が座していた。気持ち
ほど、だらしなさそうに煙草を口に咥え、新聞紙を大きく開いてまじまじと、さきほどから
読んでいた。
 「古典的だな」と僕は思った。すると、それが聞こえたのか、それとも僕の行動が挙動だった
のか、男は新聞を軽く畳み、煙草を手に持ち替え、僕の方へ気付いた。
「なにか」
 男が訝しげに問いただす。
「いえ」
「そうですか。ところで、君は、転生? それとも機械?」
「転生とは、受付の人に言われましたけど…」
「”転生は倫理に反する。金持ちの独善だ”なんて世間で言われて、先の国会で廃止になる
ようですよ」
 男はなにが面白いのか、僕の方を向いて、笑いながら話しかけてくる。なにを言っているのか
僕にはさっぱりだった。
 ただ、この男は頭がいいんじゃない、衒学的なんだ。と僕は思うと、またもいやな直感で、
僕を勘ぐる。
「いきなりすいませんね。私、元報道関係なので。胸に、こう」
 手持ち無沙汰な左手を、親指と人差し指をピンと立て、他の指を伏せる。ようは銃の形だ。
そして、子どもがそうするように、彼もそれに倣って『パーン』と幼げに言葉を吐いた。
「君は?」
「僕は…」
 自殺した、なんて口が裂けても言えないだろう。そう考えている隙に、男はやはりというか
先の一手を見据えて話す。
「言いたくないのなら別にいいですよ。あっ」
 男は途端に立ち上がった。
 僕も、耳鳴りのような感触に、体を立たせる。同時に、宙でアナウンスが聞こえた。多分、
僕にしか聞こえないアナウンスなのだろう。
『4番の西村慶太さん、テイクオフです』

「あなたもですか。奇遇ですね。それじゃあ、また会いましょうか」

 はじめて、蛍光灯の気持ちになった。スイッツのオン、オフで簡単に死にも生にもなれる、
そんな温かみのない、無機質な存在に。
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